国際政治学講義㊴:(4)20世紀の意味 ③ナショナリズム・・❶ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 20世紀は社会主義の世紀であったが、同時にナショナリズムの世紀でもあった。

 世界が国民国家の枠を超えて協力していく体制を構築できれば、戦争を回避することも可能になる。第一次世界大戦後の国際連盟、第二次大戦後の国際連合はそのような試みの一つであるが、前者は目的を達成することはできなかった。後者についても、重要な役割は果たしているものの、大国間の戦争回避という点では、核兵器による恐怖の均衡のおかげだと考えたほうがよい。

 もし、世界が一つの国家になれば、国境も戦争もなくなるはずである。社会主義は、もともと国境を越えて広がっていく国際性を内在しているとされた。マルクスやエンゲルスが「万国の労働者よ、団結せよ」と叫び、労働者が「インターナショナル」を歌うとき、国境を越えた労働者の連帯が想定されていた。

 この労働歌は、1871年のパリコミューンの直後に作られ、その後、ロシア革命後の1918年にソ連邦の国歌として採用され、1944年にスターリンが新しい国歌を制定するまで国歌として歌われた。

 そのスターリンが、1924年に「一国社会主義」論を唱えたため、社会主義の普遍性、国際性に疑問符が付けられるようになった。実は、国境を越えて広がったのは社会主義ではなく資本主義であった。その点を強調したのは、後述する「世界システム論」を唱える学者たちで、その代表がイマニュエル・ウォラーステインである。

 近代ナショナリズムは19世紀に開花したので、一般的には19世紀をナショナリズムの世紀と呼ぶ。1870年前後にドイツやイタリアが統一国家となり、日本も明治維新によって近代国家の仲間入りをした。

 国民国家が植民地獲得を競う帝国主義の幕開けである。日本は、1894年に起こった日清戦争で、清国に勝利する。20世紀に入っても、ナショナリズムに基づく戦争は続く。

 日本は、1904年には日露戦争に勝ち、1914年には第一次世界大戦に参戦し勝者の陣営に属する。その後、1930年代には日中戦争の泥沼に引きずり込まれていき、1941年12月8日に真珠湾攻撃を敢行し、アメリカとの間で太平洋戦争に突入する。

 そして、1945年8月15日には無条件降伏し、戦争が終わる。明治維新以降の対外戦争は、すべてナショナリズムの戦いであり、日本という国民国家が他の国民国家と争った戦争であった。