国際政治学講義㊱:(4)20世紀の意味 ②社会主義の世紀・・⑳ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 米朝首脳会談が開かれるが、北朝鮮は開かれた国に変貌することができるのだろうか。中国は1978年に改革開放の政策を採用し、繁栄への道をひた走っている。1989年のベルリンの壁崩壊以来、ソ連・東欧諸国は社会主義体制と決別し、民主化を進めていった。

 北朝鮮は頑なに社会主義専制体制を維持しているが、2016年のGDPは約178億ドル、1人当たりGDPは665ドルである。北朝鮮関連の統計は正確ではないし、調査機関によって数字が異なるが、最貧国であることは間違いない。韓国は、それぞれ1兆4110億ドル、2万7534ドルであり、いかに南北格差が大きいかがよく分かる。

 金日成の夢は、国民に「肉入りのスープと白米と瓦葺きの家」を供給することであったが、まだその夢は実現していない。食糧不足に直面する国民は、北朝鮮が「地上の楽園」とはほど遠いことを認識しているはずである。

 金正恩の体重は100キロを超えていると言われ、飽食が原因なのか、肥満であることは一目して明瞭である。しかし、彼ほど太った国民は皆無に近い。これが、独裁国家の実情を象徴的に表している。

 食料不足は、天災ではなく人災である。中央からの指令で実行する社会主義計画経済では、期待された効果が上がらず、「神の見えざる手」、つまり市場経済メカニズムによって需要と供給のバランスを図るシステムにはかなわない。

 食料のみならず、エネルギーも同様に不足している。国連による経済制裁で重油の輸入が思うようにいかず、北朝鮮は深刻なエネルギー不足に直面している。この経済制裁の効果も、金正恩に米朝首脳会談を決意させた重要な要因であると言われている。

 燃料を求めて森の木を伐採する。その結果、森林の保水力が弱まり、大洪水の原因となる。それが、田畑を荒らし、農業生産高を下げることになる。つまり、計画経済というシステムが非効率な経済を生んでいるのである。

 1994年10月、北朝鮮は、アメリカのクリントン大統領との枠組み合意で核兵器開発を凍結し、非核化することを約束した。その見返りとして、日米韓で朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)を発足させ、原発(軽水炉)2基の供与、その完成までの間、年間50万トンの重油の供与を決めたのである。

 しかし、北朝鮮は約束に反して、秘かに核開発を継続し、1998年8月31日にはテポドン1号を発射した。

 今回の米朝首脳会談が、その轍を踏まないことを祈るのみである。