私の読書ノート(21):ヒトラー研究・・ヒトラーのデザイン | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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松田行正『RED ヒトラーのデザイン』(2017年、左右社)

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  20世紀に、しかも民主的な選挙を通じてヒトラーのような独裁者が誕生したのはなぜか。そして、21世紀になって、欧州諸国で移民排斥をうたうポピュリストたちが権力に就いている。ヒトラーのユダヤ人排斥と二重写しになる事態が進行しているのである。

 本書は、デザインの観点からヒトラー政権の謎に迫る力作である。ヒトラーや第三帝国については、大量の資料、とりわけ写真や映像が残っており、これらがなぜドイツ人がこのデマゴーグに魅せられていったのかを説明してくれる。

 ヒトラーの演説がいかに人々の心を掴んだかは、実際に映像と音声で、その姿、その声、大げさなジェスチャー、熱狂する大衆の反応などを見聞きするとよくわかる。

 本書の著者は、ヒトラー自身が優れたデザイナーであり、たとえば党旗の「ハーケンクロイツ(カギ十字)」が大成功であることを説明する。赤のバックに白い円、そしてその中に卍、しかも45度回転させることによって躍動感を出す。卍を使った様々なデザインは世界中にあるが、政治シンボルとしての秀逸性では、これが最高だという。

 まさにヒトラーは、クリエイティヴ・ディレクターだと著者は断言する。そして、選挙ポスター、行進や敬礼、制服、軍用機、映画などを取り上げ、それらを分析しながら、デザインの活用もヒトラーの権力掌握を助けたことを力説している。

 多数の写真、資料などが掲載されており、それを眺めていると、著者の言わんとすることがよく分かる。

 ヒトラーや現代の独裁に興味のある方々には、デザインの観点からの面白い研究として一読をすすめる。