神宮外苑地区再開発と新国立競技場 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 私は、2015年4月1日に入院し、左股関節を人工関節に置換する手術を受けたが、実は、入院する数時間前に都庁で行った仕事が、「神宮外苑地区のまちづくりに係る基本覚書の締結」の調印式であった。神宮外苑地区における国立競技場の建て替え計画の具体化を契機に、2013年6月に、東京都は、同地区一帯の再整備を進めるために「東京都市計画神宮外苑地区・地区計画」(以下、「地区計画」という)を決定した。その目的は、国立競技場建て替えの後、神宮外苑区内の緑豊かな風格ある都市景観を保全しながら、スポーツクラスターとして魅力ある複合市街地を実現することである。

 そこで、関係者が協力してまち作りを進めていくことにしたが、地区内の関係権利者と東京都が、目的実現のために具体的協議を進めることを記した基本覚書を締結したのであった。関係権利者は、明治神宮、JSC、TEPIA(高度技術社会推進協会)、伊藤忠商事(株)、日本オラクル(株)、三井不動産(株)である。この調印式に際して、この地区の再開発の整備方針を示した。具体的には、2020年までに秩父宮ラグビー場を解体し、大会中は駐車場などに利用し、大会後の2022年末までに明治神宮が新球場を建設する。その後、現在の神宮球場を取り壊し、JSCがラグビー場を作る。こうして、2020年後も、この地区がスポーツのメッカとして都心の賑わいを創出する拠点として位置付ける方針を決定したのである。2020大会終了後、直ちに再開発計画を進めるが、その第一歩がこの調印式によって踏まれたと言える。

 ところが、入院中に、この都のスポーツのメッカの中心となるべき新国立競技場建設計画が問題山積の状況にあることが分かり、皮肉なことに、退院後の最初の仕事が、この問題の解決のために関係者と協議することとなったのである。神宮外苑地区の希望に満ちた再開発計画は、新国立競技場建設が前提であるが、その大前提に黄信号が灯るようでは、2020年後の都市計画にも暗い影を投げかける。だからこそ、真剣にこの問題に取り組んだのである。2020年は通過点に過ぎず、いかにプラスのレガシーを残すかが重要である。新国立競技場が、大会後に集客もままならず、赤字を垂れ流すようでは、負の遺産となってしまうからである。

 建設費のうち、都が500億円を都が負担せよという話が巷間に流布したが、誰がどういう経緯でそれを決めたかは全く不明であった。都と国の契約書の一枚もなく、また都議会の決議もなかった。新国立競技場建設も、密室の議論ではなく、透明性と公平性を確保した上で、広く国民で議論し、合意を得ることを最初から実行すべきだった。そこで、私は当時の下村文科大臣に対して都の支出の根拠と責任の所在の明確化を求めたのであった。

 壮大なる無責任体制は、安倍総理大臣による新国立競技場建設計画の白紙撤回という結末となってしまった。