障害者アートプログラムとアール・ブリュット(5) | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 私がパリに留学した40年前は、若い留学生の大半は、画家や音楽家などの芸術家の卵たちであった。私のような社会科学を勉強する者は少なかった。当然友人たちの多くが美術学校やコンセルバトワール(国立音楽院)に通っていた。その影響で、門前の小僧よろしく、音楽や美術に触れる機会が多かったのである。

 ルーブルをはじめ、多くの美術館があることも周知の事実であるが、これまた入場料が安い。40年前には、土曜日は入場料が無料であった。それは、週日に働いているパリ市民のために、週末の土曜日のみ、美術館を無料で開放し、芸術に触れてもらいたいという配慮からである。週日や日曜日は、外国からの観光客や富裕なフランス人が有料で入場すればよいという考え方である。

 美術館でもコンサートでも、日本は、フランスに比べて入場料が高すぎる。もっと安価で、都民が容易に芸術にアクセスできる手を考えなければならない。パリでは、コンサートの開始が夜8時頃、終了時間が11時頃というのが多い。パリは東京に比べて小さい街なので、地下鉄などを使えば、市内の移動にはさほど時間はかからない。コンサートの後に、夜食を食べに行くフランス人も多い。東京の場合、広大な地域なので、たとえば、自宅が八王子以遠にあると、コンサートの終わる時間が遅いと帰宅できなくなってしまう。だから、開演時間を6時半とか7時とかにして、帰宅の足を確保しているのである。

 上野には、美術館、博物館、コンサートホールなど、芸術施設が集中し、文化の集積がある。東京文化会館も2014年12月にリニューアルオープンした。東京から日本文化の魅力を世界に広めていくためにも、周辺の商業施設や交通機関などとも一体にして整備し、上野を一大文化拠点とすることにした。JR上野駅の公園口周辺の再整備を計画したが、具体的には、公園口改札を北側に移設するほか、公園入り口広場の整備や園路のロータリー化、駅前区道の相互交通化などである。このプランは、私が辞任した直後の2016年7月に公表されたが、2020年7月には完成する予定である。

 再開発については、上野の文化施設の代表たちと将来プランについて相談したとき、上野の森が夜は暗くて怖いという問題が提起された。夜に文化施設が開いていても、これでは集客ができない。しかし、自然保護派は、夜明るいと、野鳥の安眠が妨げられると反対する。そこで、上野の森をライトアップする地域とそうでない地域に分けるゾーニングの発想を取り入れることにした。

 2016年7月には国立西洋美術館が、「ル・コルビュジエの建築作品」の一つとしてユネスコの世界遺産に登録された。私が進めてきた上野再整備計画が、政治的思惑で歪められることなく、今後とも継続されることを期待してやまない。

 因みに、私は石原都知事が始めたTWS(トーキョーワンダーサイト)事業を見直し、再構築する方針にしたが、その関連でTWS渋谷をアール・ブリュットの拠点として整備することにした。幸いなことに、私の辞任後もこの計画は予定通り進められている。