障害者アートプログラムとアール・ブリュット(1) | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 「障害者アートプログラム」は、「TURN〜ひとがはじめからもっている力の回帰〜」という呼称で活動を始めた。2012オリンピック・パラリンピック・ロンドン大会の「文化オリンピアード」の一環として、障害のあるアーティストの支援する活動が「Unlimited」という名称で展開されたが、TURNは、それを参考にしたものである。「東京文化ビジョン」の35ページには、「障害を力として捉える。欠けているのではなく、能力として。この力は、誰しもが生来もっている生命の力。『TURN』は、全てのものはつながり関係しあっているという日本古来からの価値観をベースにした『共生』へのメッセージです。」と記されている。

 2016年3月には、東京都美術館で「TURNフェス」を開催し、また夏には、「東京キャラバン」とともに、リオデジャネイロで「TURN」も「Culture & Tokyo in Rio」の一部として、様々な活動を行った。ブラジルから帰国後も10月には国立新美術館で、「TURN in BRAZIL」を開催している。

 文化の熟成には時間がかかるものである。このような新しい試みが、政治的思惑で中断されないことを祈るのみである。

 障害者のアートといえば、アール・ブリュット(Art Brut)のことが頭に浮かぶ。この言葉はフランス語で、直訳すれば「生の芸術」であるが、正規の美術教育を受けていない人が自発的に生み出した絵画や造形であり、既成の流派やモードにとらわれないものである。フランスの画家、ジャン・デユビュッフェ(1901〜1985)が、1945年に提唱したカテゴリーである。彼の伝記から、少し引用してみよう。

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 1945年の暮れデュビュッフェは、・・・二回目のスイス旅行を試みた。・・・このスイスでの見聞をとおしてデュビュッフェが思い知ったのは、社会的な適応から切り離されながら、独学で自分の楽しみのために独創的なものを生み出す能力の持ち主が大勢いることだった。彼らはそれだけでも立派な芸術家ではないか。もちろん美術の伝統にも流行にも属していないが、その自発的で本能的な作品にはどぎまぎするような発想、純真なまでに綿密な表現、奥深い生のエネルギーが潜在しているとも思った。デュビュッフェがそのような人びとの芸術を「アール・ブリュット(なまの芸術)」と名づけるのは、ポーランとル・コルビュジエに同行した最初の旅行中だったと考えられる。(末永照和『評伝 ジャン・デュビュッフェ』青土社、2012年、111〜112p)