都庁こぼれ話(15):格差是正の先頭に立つ(2) | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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  雇用の問題は、単に企業の生産性という観点からのみならず、社会全体のコストという観点が不可欠となる。しかし、利潤を最大化するのが企業なのであり、社会全体のプラスマイナスを考えることは政治の仕事なのである。最近では、過労死が問題になり、安倍政権も働き方改革を重要政策として推進しようとしている。

 私は、厚生労働大臣として、非正規労働者の正規化、ワークライフバランス、長時間労働の是正などの働き方改革に全力をあげた。法学部の学生のときには、労働法など熱心に学んだわけではかったが、労働問題を担当する大臣になってからは、労働関連法令などを勉強し直して諸問題の処理に当たったのである。当時は派遣労働者問題が大きな社会問題となっており、国会での審議を通じて、問題があれば企業のサイズにかかわらず厳正な処置をしたものである。

 大臣のときのこの姿勢は一貫して維持しており、都知事になってからも、労働に関する問題は、国に先駆けて取り組むようにした。非正規労働者の正規化が、まさにそれである。大臣時代から維持してきた厚労省のネットワークも役に立った。具体的には国の東京労働局と都の産業労働局が緊密に協力する形で、この問題への対応を考えたのである。因みに、今日、東京労働局は、違法な長時間労働で問題のある企業に厳しく対応しており、その存在感を増している。

 2014年12月には、私は、将来の10年間をカバーする政策体系である『東京都長期ビジョン』を発表したが、政策指針17「若者や女性、高齢者など全ての人が活躍できる社会の実現」の中で「正規雇用化の促進」をうたい、不本意にも非正規雇用となり求職活動を行っている人々(2012年に167,100人)を2020年までに半減(83,000人に)させる目標を立てた。また、都自らの対策で2017年度までの3年間に1万5千人を正規雇用化することにした。

 具体的には、国と連携した助成金制度を創設し、社内の非正規労働者を正社員転換した企業や非正規の若者を採用した企業に対する支援を実施したが、着実に成果が上がってきている。その背景には、「恒産なければ恒心なし」という私の哲学がある。このような支援制度を実施した自治体は、それまでなかったのであり、まさに「東京から日本を変える」ことを実行に移した一例である。

 家族が楽しく暮らして、家の中が明るくなるにはどうすればよいか。それには、何が起こると、家族が悲しみ、家中が暗くなるかを考えればよい。病気と失業である。とくに一家の大黒柱がそうなると、家中が沈痛な雰囲気になってしまう。政治の仕事は、そうならいように政策を総動員することにある。

 また、人間の命は、皆平等である。貧しいから病院に行けず、病に倒れるということがあってはならない。さらに、親が貧しいから学校に行けないということがあってはならない。健康と教育については、富めるか否かで差別があってはならない。これが私の基本的政治哲学である。先述したように格差が拡大し、子どもの貧困率(2012年度)が16.3%(過去最悪で、OECD34カ国中25位)、つまり6人に1人の子どもが貧困だという状態は、何としても変えていかなければならない。