新宿区ホームレス生活保護裁判を支える会blog -2ページ目

2008年9月10日第1回期日 意見陳述 (弁護士戸舘圭之)

平成20年(行ウ)第415号 生活保護開始申請却下取消等請求事件



原告 Y



被告 新宿区



                   意見陳述要旨







2008年(平成20年)9月10日



東京地方裁判所民事第2部 御中



                              原告訴訟代理人 弁護士 戸舘 圭之







本件の審理に先立ち原告訴訟代理人弁護士戸舘から、裁判所に対し、意見を申し上げます。



本件は、ホームレスであった原告Yさんに対して生活保護を行うことを認めなかった新宿区福祉事務所の違憲性、違法性を問う裁判です。



 日本国憲法25条1項は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と、すべての人々に対して、いわゆる生存権を保障しています。



 これを受けた生活保護法第1条は「この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」と生活保護法の目的を高らかにうたっています。



 そして、生活保護法第2条は、無差別平等の原則を規定しています。この無差別平等原則により、生活困窮状態にあるすべての人々が、差別されることなく、健康で文化的な最低限度の生活を営むことが可能となっているのです。



 



 原告のYさんは、今年の5月ころから、新宿近辺で路上生活を余儀なくされていました。横山さんは、なんとか生活を立て直した上で、働く場所を見つけて自立したいと考えていました。しかし、住所もなく日々生きていくことに精一杯の路上生活者が就職先を見つけることは簡単なことではありません。



 新宿区福祉事務所は、原告のYさんに対して、権利であるはずの生活保護の受給を認めませんでした。「稼働能力を活用していない。」というのがその理由です。



 しかしながら、ホームレス状態を余儀なくされている人々は、稼働能力を活用する前提を欠いています。そもそも、野宿状態で生活している人を、きょうすぐに雇ってくれる会社がどこにあるのでしょうか?ホームレスが稼働能力を活用する場はそもそも存在しないのです。



 稼働能力活用要件を無制限に適用することで多くのホームレスの方への生活保護の適用が拒まれているという実態があります。



 本件の審理にあたり原告代理人らは、稼働能力の活用についての正しい解釈を提示した上で、稼働能力活用要件がホームレスへの生活保護の適用を否定する理由にはなり得ないことを明らかにしていきます。







 結局のところ、Yさんは、緊急一時保護センターなどの施設への入所を拒否したことから生活保護の申請を却下されてしまったのです。



しかし、生活保護法上、居宅での保護が大原則です(法30条1項)。ホームレスには、居宅保護の原則は適用されないのでしょうか?



 ましてや緊急一時保護センターは生活保護法上の施設ではありませんし、このような施設の利用が生活保護に優先することもあり得ません。







「ホームレスであっても、人間らしい生活をする権利はある。」のです。



 



 どんな人であっても、雨や風をしのぐことができ、プライバシーの守られた住居で人間らしい生活をする権利があります。



 働いて、きちんとした生活を送るためにも、安定した住居に住むということは不可欠の前提なのです。



 新宿区の考え方は、ホームレスに対しては他の人より劣った取扱いをしてもかまわないという「劣等処遇」を容認するものであり、到底許されるものではありません。







新宿区の運用は、東京都内にある他の多くの福祉事務所の運用とも異なっています。



 現に、Z区福祉事務所は、8月23日、緊急性が認められるということから、申請したその日に、原告のYさんに対して生活保護開始決定を行いました。Yさんは現在Z区内のアパートで自立に向けた生活を歩み始めています。



 板橋区にできたことが、どうして新宿区ではできないのでしょうか。



 現在、Z区に限らず多くの福祉事務所において、法の原則にしたがって、ホームレスの方への生活保護を実施しています。新宿区だけが特殊だといっても言い過ぎではありません。







 人間、誰もが、何かの拍子で職を失ったり、働けなくなって生活困窮状態に陥り、野宿生活を余儀なくされることはあります。われわれ弁護士、裁判官も、例外ではありません。そのようなときに、最後のセーフティーネットとして機能するのが生活保護なのです。



 貧困は自己責任ではありません。



 貧困状態にある人を救済するのは国家の責務です。



 原告代理人らは、今後、新宿区の運用の違法性を明らかにしていくための主張、立証を行っていく予定です。



 ホームレス状態を余儀なくされている全国の多くの人々及び支援の人々が、本件裁判を注目しています。



 裁判所におかれましては、「ホームレス」に対する偏見をもつことなく、憲法と法律にしたがった真摯な姿勢で審理に臨まれるよう代理人を代表してお願い申し上げます。



以上




2008年9月10日第1回期日 意見陳述 (原告 Y)

原告  Y
被告  新宿区
                    意見陳述


平成20年9月10日
東京地方裁判所民事 部 御中


                        意見陳述者 原 告  Y    


原告の意見陳述要旨は次のとおりである。


 私は、6月2日から新宿福祉事務所へ3度生活保護の申請を行い、3度却下されました。その理由は、稼働能力を活用しないこと、自立支援施策を利用しなかったこととされています。
 私は以前自立支援施策の自立支援センター葛飾寮に入所していたことがあります。このとき、仕事を途中で辞めてしまったことが問われているようです。
 過去に仕事を辞めたこと、これは事実です。私にも誰にも最早変えることができません。この事実は、私がかつて、そして、今も働く意思がないと解釈されるものなのでしょうか。そして、この事実は、如何に評価するにしても、いつまでも私を拘束し続けるのでしょうか。

 新宿では、都庁近くの駅への地下通路の入り口近くの路上が、私の居場所でした。私が新宿で路上生活をしていたのは5月ですが、晴れていても夜になると上着を着ても凍えるような寒さです。少しうとうととしても、寒さのあまりに何度も目が覚めてしまいます。路上に身を横たえることができるのは、深夜1時過ぎです。それまでは、非常に多くの方が帰宅のために、この通路を行き交うので、横になることが出来ないのです。
 また、それ以前の上野での路上生活の経験で既に分かっていましたが、やはり、私たちのような者に対して暴言を吐いて絡んだりする人もいて、おそろしい思いをすることもあります。しかし、それでも、雨を防ぐことができる場所は限られています。ですから、せめて雨から、身を守るためには、そこにいるしかありませんでした。
 このような状態から、頑張れば何とかできるはずといわれても、具体的に、どこで、頑張ればいいのでしょうか。

自立支援センターで頑張れば何とかなるといわれても、原則2ヶ月、最長でも4ヶ月の期間に生活保護を受けず、独力で仕事を見つけ、転宅する費用も捻出する、しかも、連日10時間を超える勤務へ10人を超える人間と同じ部屋で過ごしながら、通い続けることに、私の身体は対応できませんでした。社会保険もない会社での勤務で、病気になっても病院にかかることもできませんでした。

 福祉事務所の職員からは、路上生活は自ら進んで招いた結果だ、と何度も言われました。この制度を利用し、運良く自立するという「結果」を出せない者には、生活保護を適用しないという制裁があるのでしょうか。

私は、これまで職を転々としてきました。勤務先は、必要な時だけ私を使い、必要がなくなると、自由に取り替えられる存在とみなして、私が働き、生活の糧を得る機会を、躊躇無く奪ってきました。

 生活保護は、最低生活は国が国民に対して保障するという制度なのだと聞いています。ホームレスでない方は、職を失った場合、再度頑張って自分の力で生きていく、その「前提」(安定した住居、食事)を生活保護により維持することができます。一方ホームレスは、最低生活以下の場所にいながら、頑張っていくその前提を、自立支援センターで、自分で作ることが求められることになっています。なぜ、ホームレスという住居すら失った立場に陥った者は、ホームレスであるというその一点だけで、このように異なる扱いをされなくてはならないのでしょう。たまたま、生活保護を申請した時点において住居を失っていたというその一面だけで、私自身の全てが判断されなくてはならないのでしょうか。

 自分自身先ほどホームレスという言葉を使いましたが、一言でホームレスといっても、いろいろな方がいます。それぞれに異なる事情や思いがあります。私も、そして、私以外のホームレスの方もおそらく全て、以前はみなさんと同じように、仕事をして幸せに生活することを願い生活していました。そして、私自身のその思いは、これまでも、今も全く変わりはないのです。
 生活保護だけで生活を営みたいとは思っていません。これは、6月2日の段階、それ以前の段階からずっと思っていることです。ただ、路上で生活しながら、仕事を見つけることができないのです。

 現在、板橋区で生活保護の決定があり、ようやく安定して生活できる場所、再度自分の力で生活を立て直すための「前提」を得ました。

なぜ、法が定めた制度を私が利用し、私に生活を立て直していく機会を与えようとはしなかったのか、そのことの是非を、名前のない単なる「ホームレス」という呼称ではない、「○○○○」という一人の人間として、私は問いたいのです。そして、この問いが、声をあげることもできず、路上で苦しんでいる、一人一人の「ホームレス」に共通する思いであることを知ってください。









第1回期日のご報告

東京地裁第522号法廷にて、新宿区ホームレス生活保護裁判の第1回口頭弁論が行われました。
私たちの事前の呼びかけなどに応じてくださったみなさまが詰めかけてくださり
多くの傍聴人であふれ、定員40名ほどの法廷内には人が入りきれず、40名以上の方は、法廷の外で口頭弁論を聴いていただっきました。

期日前には、新宿区役所と東京地裁前で裁判についてのチラシを配布しました。
新宿区役所では、多くの職員がチラシを受け取り、読みながら庁舎に入って行きました。
地裁前でも、通りすがりの方が「これはどういう裁判なの」と声をかけてくださったり
立ち止まってチラシを読む方もいらっしゃっいkました。


開廷後は、まず原告が法廷に立ち、これまでのあらましと福祉事務所の対応を簡潔に述べました。
前日は緊張のあまり一睡も出来なかったという横山さんでしたが、
これまでの経緯をしっかりと自分の言葉で堂々と述べ、
新宿区の福祉行政に対して対峙する姿が印象的でした。
その後、弁護士の戸舘圭之氏がこの裁判の趣旨と争点を述べ閉廷となりました。

その後の報告集会には、傍聴に来てくださったみなさまの多くが参加してくださいました。
戸舘弁護士から第1回期日の報告、横山さんと弁護団長の宇都宮健児さんから挨拶がありました。
その後、この裁判の争点、新宿区の生活保護行政の問題点などを静岡大学の笹沼さんに
詳細に説明していただきました。
また、会場の方からもいくつかご意見やご質問をいただきました。


「絶対的貧困状態にあるホームレス状態にいる人は、
 なぜ居宅(アパート)にて生活保護の利用ができないのか」



この新宿区ホームレス生活保護裁判は、実際に野宿生活を強いられている当事者の方や、そういった方を支援している方がたにとっても非常に重要な問題として捉えられており、大きな関心が持たれています。
また、全国でホームレス支援にかかわっている方たちからも、注目されています。

新宿区では、この間もホームレスの方に対し、間違った生活保護行政の運用が続けられているため、
多くのホームレスの方が生活保護を受けることができず、路上生活を強いられています。
その中には、仕事がなくまったく収入の無い方、病気の方、高齢の方も含まれます。

ホームレス=絶対的貧困状態にあり、どこにも行き場がない状態
こういう状態にある方にこそ、居宅(自分のアパート)で生活保護を受け、安心して暮らすことが必要なはずです。


次回裁判は11月5日水曜10時45分より東京地方裁判所522号法廷で行われます。
新宿区の間違った保護行政をただすためにも、この問題を多くのみなさまに知っていただきたいと思います。

(事務局n)

9月10日(水)新宿ホームレス生活保護裁判(新宿七夕訴訟)第1回口頭弁論

新宿区ホームレス生活保護裁判(新宿七夕訴訟)の第1回口頭弁論が、
来る9月10日午前11時~東京地裁522号法廷で行われます。
現在、傍聴人を募っています。どなたでも傍聴可能ですので、ぜひ、みなさま
お誘い合わせの上、東京地裁522号法廷にご参集ください。
裁判終了後、となりの弁護士会館で報告集会も行います!
よろしくお願いします。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ホームレス」だと生活保護を受けられないの?
~アパートでごく普通に暮らす生活を求める裁判(東京)~

●第1回期日:9月10日(水)11時00分~

        東京地裁522号法廷にて

●事件名:新宿ホームレス生活保護裁判(新宿七夕訴訟)
●係属裁判所:東京地方裁判所民事第2部
●事件番号:平成20年(行ウ)415号 生活保護開始申請却下取消等請求事件
平成20年(行ク)146号 生活保護開始仮の義務付け申立事件


●期日の内容:第1回口頭弁論期日(訴状陳述、答弁書陳述)
       原告本人の意見陳述を行う予定です。

内 容:生活に困窮し野宿生活を余儀なくされていた原告が
法律家、支援者らの援助により新宿区福祉事務所にアパートでの生活を求めて
生活保護を申請したところ、2度にわたり 「稼働能力不活用」 などを理由に却下された
ことから、却下処分の取消しと保護開始決定の義務づけを求め提訴した事件です。



★期日終了後 報告集会を行います(9/10当日です)★

●報告集会 

「ホームレス」だと生活保護を受けられないの?●
日 時:平成20年9月10日(水)
    11時30分~12時30分
場 所:弁護士会館5階 508号室ABC


内 容:1)生活保護申請に至るまでの経緯
    2)本案提訴に至るまでの経緯
    3)弁護団報告および訴訟活動の見通し
    4)支援する会からの協力要請

【訴訟の概要】
1  当事者
  原 告:新宿区で野宿生活を余儀なくされていた58歳の男性
    原告弁護団(宇都宮健児団長ほか29名)
  被 告:新宿区 (代表者 区長中山弘子)
2  提訴日 平成20年7月7日
3  請求の内容
 (1) 生活保護開始申請に対する却下処分の取消し
 (2) 生活保護開始決定の義務づけ及び生活保護費の支払い
 (3) 仮の義務づけの申立て


【提訴までの経緯】
1 新宿区福祉事務所へ生活保護申請
原告は、野宿状態で困窮していたことから、本年6月2日に「ホームレス総合相談ネットワーク」 の法律家、支援者らとともに生活保護申請をしようと新宿区福祉事務所の窓口を訪
れました。 ところが、相談員は、生活保護申請をする意思が明確である原告に対し、執ように法外の制度である緊急一時保護センター等への入所をすすめ生活保護申請を直ちに受け付けようとはしませんでした。
  原告は、自立支援センターではなくあくまで生活保護を申請し簡易宿泊所で待機後、アパート入居をめざす旨を支援者らとともに再三にわたり述べたところ、ようやく申請が受理されました。

 2 生活保護申請却下
  しかしながら、新宿区福祉事務所は、申請は受けつけたものの 「急迫」 を理由とする職権保護は行わず、そればかりでなく 「調査」 と称するさまざまな形での嫌がらせを原告に対
し行ったあげく、「稼働能力を活用していない」という理由で生活保護申請を却下するという暴挙にでました。 新宿区福祉事務所が言う却下理由は、いずれも生活保護法に照らし理由のないものです。

 3 訴え提起
  原告についてみれば、生活保護の要件を満たすことは明らかであり、直ちに保護が開始されなければならないのですが、新宿区にて保護は開始されませんでした。そこで、原告は、やむなく本訴を提起し、併せて「仮の義務づけの申立て」を行い緊急の保護を求めるに至りました。
 
 4 板橋区福祉事務所では保護開始決定!
 仮の義務付け申立ては、不当にも却下されてしまいましたが(現在即時抗告中)、
板橋区福祉事務所は、8月25日、原告に対し生活保護を開始する決定を行いました。


【訴訟の意義】
  本件訴訟は、ホームレス状態を余儀なくされている人々に対し侮辱的、差別的な
取扱いを行う新宿区福祉事務所の生活保護行政のあり方を問う訴訟です。

  生活保護法は憲法25条に基づいて全ての生活困窮者に対し
「健康で文化的な最低限度の生活」 を保障することを行政に義務づけています。
にもかかわらず、多数のホームレス状態にある人が生活している新宿区において、

ホームレス状態にある人々への生活保護制度の適用を事実上排斥していることは由々しき事態です。

  本件訴訟は、単に原告ひとりの生活保障を実現するにとどまらず、背後に数万人はいるといわれる日本中の安定した住居を持たない人々への生存権保障のあり方を強く問うものでもあり、広く社会的意義を有するものと考えます。



文 責
新宿区ホームレス生活保護裁判(新宿七夕訴訟)弁護団事務局
弁護士 戸舘圭之(第二東京弁護士会)
東京都渋谷区代々木1-42-4 代々木総合法律事務所 
TEL 03-3379-5211
FAX  03-3379-2840 
blog http://blogs.yahoo.co.jp/yoshiyukitodate

【ご報告】Z区にて生活保護決定・開始

ホームレス総合相談ネットワークの信木です。
新宿ホームレス生活保護訴訟のYさんの件でご報告です。

ご報告しそびれていたかもしれませんが、
さる8/14に、「仮の義務づけ」の申し立てが東京地裁によって
却下されました。おもな却下理由は

●Yさんは稼働能力があるにもかかわらず、
 それを活用して就労自立しようという真摯な努力をしていない
 (怠けているだけだ)
●自立支援センターという就労支援や稼働能力を活用できる
 場があるにもかかわらず、それを十分に利用しなかったり
 仕事を自分の都合で辞めるなど、自ら路上生活に陥いることを
 選択した(こうなったのは自己責任だ)

というものです。
この件については、即時抗告の準備を弁護団がすすめています。

また、この処分を受け、Yさんの生活の安定を優先させる事を
ご本人と弁護団や裁判を支える会で検討した結果、
他区にて再度生保申請することとなり
一昨日、8/25(月)に都内のZ区に生保申請することになりました。
結果「要保護性があり、緊急性が高い」ということで
即日保護が開始決定され、当日の夕方に開始決定通知と
8月分の保護費を受け取ることができました。
(もちろん、「すんなり」とはいかず、3時間以上の面談と
 支援者と職員による押し問答と交渉などがありましたが)

また、昨日8/26(火)に担当ワーカーが滞在先のシェルターを
調査訪問し、9/5(金)に見積もりを出したアパートに転宅できるよう
手続きをすすめてもらうことになりました。
Yさんが安定した生活の中で裁判をすすめていくことができる
という見通しが立っただけでも
ご本人の精神的なストレスがかなり軽減したと思われます。

新宿区では三度却下された生活保護申請が
Z区では即日開始決定となるというこの結果は、
新宿区の生活保護行政、裁判所の仮の義務づけ却下処分が
いかに間違ったものであるということの証しになります。

「ホームレスだと生活保護を受けられないの?」ということを
問いかけているYさんの新宿訴訟ですが
「ホームレスでも生活保護は受けられる」し、
「ホームレスでもアパートで暮らすことができる」ということが
このことで公に証明されたことになります。

Z区の対応は、押し問答の部分はともかく
開始決定やその後の手続きについては法律通り
また急迫案件としての対応は、非常に迅速で素晴らしいです。
東京都内のどの区でも市町村でも、また全国どこの福祉事務所でも
このようなごくごくあたりまえの対応がなされてほしいです。
(もっと素晴らしい対応をするところもあるようですが)

Yさんは、
「アパート生活を始められたらできるだけ早く仕事に就きたい」
「早く生活を立て直して、なんとか自力で生活できるようにしていきたい」
と意欲を燃やしています。

みなさま、引き続き応援をよろしくお願いします。

(事務局N)

カンパの口座

裁判を支えるため、Yさんの生活を支えるためのカンパを募っています。
どうざおみなさまご協力ください。

◆カンパにご協力ください◆
○三井住友銀行  麹町支店 普通口座 口座番号:8924234
 口座名義:新宿生活保護裁判を支える会 会計 力丸 寛
○ゆうちょ銀行  記号:10050  番号:91185431
 口座名義:新宿生活保護裁判を支える会


(事務局n)

新宿ホームレス生活保護裁判〜これまでの経緯〜

Yさんの生活保護申請について5月31日からこれまでの経緯をここに記します。

○5/31(土)新宿角筈地域センターにてホームレス総合相談ネットワークによる無料法律相談会開催
       その際、生活保護を申請できると知り、Yさんは生活保護を申請することに決めた。
○6/2(月) 新宿区に生活保護申請(Yさん含め10名)
       新宿区の不作為に対して審査請求(1度目)
○6/3(火) 新宿福祉事務所へ
○6/9(月) 新宿福祉事務所へ
○6/13(金)新宿福祉/1度目の保護申請却下
       新宿区の不作為に対して審査請求(2度目)
       東京都に審査請求(1度目)
○6/23(水)不作為の審査請求却下(1度目)
○6/26(木)新宿福祉/2度目の保護申請却下
       3度目目の生活保護申請
○7/4(金) 東京都に審査請求(2度目)
○7/7(月) 提訴
       1 生活保護開始申請に対する却下処分の取消し
       2 生活保護開始決定の義務づけ及び生活保護費の支払い
       3 仮の義務づけの申立て
○7/9(水) 不作為の審査請求却下(2度目)
○7/18(金)検診命令にて精神科受診
○7/25(金)「性格障害の疑い」という検診書を受け、「病状を明確にしたい」という新宿区側の決定
       により、国立国際医療センターでの検診命令を出される。検診命令には従わず。
       午後に三度目の申請却下通知を渡される。

現在、Yさんは都内のシェルターにて一時的な滞在場所を提供してもらい、生活しています。
一刻も早く落ち着いた生活をスタートさせることが望まれます。


以下、経緯詳細
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
○5/31(土)新宿角筈法律相談会
 →事前のチラシ配布の際、Yさんがスタッフからチラシを受け取り
  相談会へ。翌月曜日に生活保護申請(アパート希望)することに。

○6/2(月)新宿に生活保護申請(Yさん含め10名)
      新宿区の不作為に対して審査請求。
 →Yさん以外は、新宿ではドヤでの待機が不可能ということで
  おおむね自主的に千代田寮(緊急一時保護センター)、または
  新大久保(宿泊所)での待機となる。
  
  Yさんが申請したところ、担当した職員Tが
 「生活保護ではなく仕事をすることを考えろ」
 「他方他施策が優先するのだから」
 「あなたは働けるだろ、働く努力をしろ」
  と東京都の独自制度である
 「TOKYOチャレンジネット」http://www.tokyo-challenge.net/
  に行けとYさんにチラシを渡す。
  
  野宿中で所持金はおろか、安定した仕事も住居もないYさんに、
  住宅費や生活費の貸し付け制度を利用させようとする悪質とも
  いえる対応。(※チャレンジネットについては、文末に説明を添付)

  ご本人が法律家や支援者が生活保護申請を強く主張した
  ところ、申請は受け付けたものの、待機場所については
 「千代田寮・新大久保寮以外に提供できる場所はない。
  緊急性が高く保護が必要なのであれば千代田寮へ入所
  するべき」とくり返すのみでまったく話にならず。   
  その日は埒が開かず、路上待機を余儀なくされることになり、
  総合相談の支援で新宿のサウナに宿泊。

  新宿区に対して不作為の審査請求(1度目)を行う。

○6/3(火)新宿福祉
 →前日の相談担当者が不在だったため、係長代理が対応、
  「路上にいることは認識しているが,路上でも緊急性が
   ない場合もあり、この人がそうだ」
  「また明日来るように」
  「本当に困窮しているなら朝一番でくるのが普通(役所に)」
   相部屋はしんどいので居宅保護をという本人の主張に対し、
  「社会では人と関わり生きて行かなくてはならない」
   などと発言。埒があかず、その日も路上待機へ。
  「生活保護申請した方に宿泊場所を提供しないで
   路上へ戻すんですね」と確認したところ
  「ご本人が千代田寮に入所できないならやむを得ない」
   とのこと。翌月曜に再び来所するよう言われる。

○6/9(月)新宿福祉
 →職員Tが「あなた方が邪魔をしている(申請者との相談を)」
 「あなたがたの資金で保護をすればいいではないか」などと
  発言。すぐに開始を要求するこちらに対し、
  Yさんが以前入所していた自立支援センターでの
  就労や生活状態についての報告がないと判断できないため
  決定は6/13にするということになる。

○6/13(金)新宿福祉/1度目の保護申請却下
 →1度目の保護申請却下(一時扶助についても却下)
  却下理由は
  「申請人の保護申請書の内容や前回の状況、および数回に
   わたる面談、X区福祉事務所からの資料検討により、
   新宿福祉事務所として総合的に判断した結果、申請人には
   重大な就労阻害要因があるとは見受けられない。
   更に、業種を問わなければ就労努力により適切な仕事は
   十分確保できるものと考えられる。
   申請人にはこれまで稼働能力を活用する機会が複数あった
   にもかかわrず、活用にいたっていない。したがって
   生活保護法第4条1項にある「稼働能力」を十分に
   活用しているとは判断できない。また、居住地を持たない
   申請人の自立のたまには、更生施設を事実上代替する 
   自立支援システムがああり、その利用が先ず求められる
   ものである。よって、生活保護申請を却下する。」
  
  これを受けて、即時再申請、不服審査請求を行う。

○6/20(金)職員により訪問調査(シェルターにて)
○6/23(水)不作為の審査請求却下(1度目)

○6/26(木)新宿福祉/2度目の保護申請却下
 →新宿福祉から呼ばれてご本人法律家支援者ともに出向いた
  ところ、2度目の保護申請却下(内容は1度目と同じ)。
  自立支援係係長、課長とも話し合い、
  政府答弁書をふまえての処分取り消しを求めるも
  「答弁書内容を承知していないし処分を変える気はない」
  との答え。
 
  担当相談員からは執拗な嫌がらせともいえる過去の
  出来事に関する質問や、稼働能力のある人には生活保護は
  出せない、という話などがくり返される。

○7/4(金) 東京都に審査請求(2度目)

○7/7(月) 提訴
       1 生活保護開始申請に対する却下処分の取消し
       2 生活保護開始決定の義務づけ及び生活保護費の支払い
       3 仮の義務づけの申立て
○7/9(水) 不作為の審査請求却下(2度目)

○7/18(金)検診命令にて精神科受診

○7/25(金)「性格障害の疑い」という検診書を受け、「病状を明確にしたい」という新宿区側の決定
       により、国立国際医療センターでの検診命令を出される。検診命令には従わず。
       午後に三度目の申請却下通知を渡される。

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※「TОKYОチャレンジネット」とは?
http://www.tokyo-challenge.net/
TОKYОチャレンジネットは、住居を失い、インターネットカフェや
漫画喫茶・サウナ・ファーストフード店・ファミリーレストラン・
24時間深夜営業店等で寝泊りしながら就労している方に対して、生活、
住居、仕事の相談を行う相談機関です。また、一定の要件のある方には
住宅資金や生活資金の貸付手続をサポートします。
生活相談、住居相談は、東京都が社会福祉法人やまて福祉会に委託して
実施します。仕事相談については、厚生労働省の出先機関であるハロー
ワーク新宿等が実施します。なお、資金の貸付は、東京都が東京都社会
福祉協議会へ補助を行い各種の資金貸付を実施します。
TОKYОチャレンジネットを経て、アパート入居された場合、引き続
き、生活、住居、仕事の相談などサポートいたします。
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