夜空に明るく、

 

それでいて

 

どこか静かに冷たく輝く

あの月は、

 

人の気持ちのようなものかもしれません。

 

 

たった今、

目の前に輝いていたと思っていたのに、

 

ふと目を離している間に、

あっという間に雲の向こうに

隠れてしまったあの月のように

 

 

楽しい気持ち、

人を思う気持ち、

感謝の気持ち、

 

 

それらは

 

今ここにあったと思っても

次の瞬間には見失ってしまいがち

ですよね・・・。

 

 

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めぐり逢ひて 

見しやそれともわかぬ間に

雲がくれにし

夜半(よは)の月かな

(紫式部)

 

(現代語訳)

せっかく久しぶりに逢えたのに、

それが貴女だと分かるかどうかの

わずかな間に

あわただしく帰ってしまわれた。

まるで雲間にさっと隠れてしまう

夜半の月のように。

 

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紫式部

 

発表から1000年以上の月日が

過ぎた現在でも

 

日本文学の代表的なものとして

20言語以上に翻訳され世界中で

読まれている華麗なる宮廷絵巻、

 

「源氏物語」

 

の作者として知られる彼女の名は、

皆さんもよくご存じだと思います。

 

 

生年、没年とも諸説ありますが

平安時代中期、

 

西暦740年頃生まれて、

1019年までは存命していたと

最近の研究で言われています。

 

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今回ご紹介した歌も

百人一首の中で

人気のある歌の一つですね。

 

 

もともとは

「新古今和歌集」

の中からの歌で、

 

紫式部自身が、

 

「幼友達と久しぶりに逢ったが、

ほんのわずかの時間しかとれず、

月と競うように帰っていったことを詠んだ」

 

と書いているそうです。

 

 

懐かしい人との再会

 

そんな楽しい時間というのは、

 

夢中になりすぎていて、

 

気づいたら

あっという間に過ぎ去って

しまっているもの。

 

そして

過ぎていってしまった後になって

寂しさを募らせるもの。

 

 

そんな人の心は

1000年の時間も空間も超えて、

 

いつの時代も、

いつの場所でも、

 

そして

誰にでも、

 

共通なものなのかもしれませんね。

 

 

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そして

 

気づいたら

過ぎ去ってしまっているのは、

 

懐かしい人との時間だけでは

無いのでしょう。

 

 

私たちに許された時間というのは

限られたもの・・・。

 

 

だから、

 

過ぎ去っていく

この限られた時間の中で、

 

自分の中にある

 

きらめくような、温かく、

そして心に響き続けるような

その気持ち、

 

見失わないように

大切にしていきたいですね。

 

 

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楽しい気持ち、

人を思う気持ち、

感謝の気持ち、

 

人の気持ちもまた、

 

夜空に明るく輝く月のようなもの

かもしれません。

 

 

雲の後ろに隠れてしまったとしても、

夜空に輝かない日があったとしても、

 

無くなってしまったのではなく、

見えなくなっただけ。

 

 

実はいつでも

変わらない場所にそこにある。

 

そんなものですよね。