「怪獣8号」の保科副隊長のトレーニング姿は、やっぱ結弦くんの練習着姿にそっくりだよなぁ…なーんて思っている今日この頃ですが、どうやら日本のアニメは絶好調のようです。
本日発表の興収ランキングで「鬼滅の刃 無限城編」の興行収入が314.3億円になりました。
あと2.5億円で「千と千尋の神隠し」を抜くので、2~3日後には「無限城編」が日本映画の興収ランキングの2位になると思われます。
凄いですよね?
日本映画の興収ランキングの1位と2位が「鬼滅」ですよ。
ファンの方々は、数年後には1位から4位まで全て「鬼滅」になるんじゃないかとワクワクしているようです。
今の様子ではそれも夢物語ではなさそうですね。
もちろん、「鬼滅」の躍進を快く思わない他ジャンルのファンの中には
「あれだけ来場者特典を配りまくったらそりゃあ興収も上がるさ」
とイヤミを言う人もいます。
確かに、「鬼滅」は驚くくらい来場者特典を次々と配っています。
でも、それで確実に来場者が増えるなら他の映画もやればいいのです。
「鬼滅」は確かに他の映画とは資金力が違うように見えます。
アジア各国では日本よりも宣伝に力を入れているようですし、アメリカではタイムズスクエアという一等地で広告ジャックしたり、メジャーリーグの来場者に「鬼滅」とコラボしたキャップやユニフォームを配ったりしています。
宣伝にかける金額が他の日本作品とはけた違いなのです。
これはあくまで私の推察なのですが、この資金力は「鬼滅」が「製作委員会」制度を利用していないから、ではないでしょうか。
ここ数十年、映像作品の世界では「〇〇製作委員会」と表記されていることがほとんどです。
この「製作委員会」というのは、誰がお金を出しているのか分からないというシステムで、この中には映画の制作会社や配給会社だけではなくテレビ局や場合によっては配当に期待した海外ファンドなども参加していることがあります。
なぜこういったシステムが導入されるようになったかというと、それは、それまでの映画は監督や制作会社がお金を集めて(つまり借金をして)映画を作ることが普通で、コケたらそれがそのまま負債となってしまったからのようなんですね。
有名な話では「さだまさし」さんが映画を作って、それが当たらずに28億もの借金を作ってしまったなんて話がありましたよね。
映画がヒットするかどうかなんて誰にも分らないわけで、その資金を制作会社だけが負担したのでは1コケで終わってしまうことになりかねないので、多くの出資者がお金を出し合い利益も赤字も分け合う形に移行していったようです。
まあ、リスク回避というかリスク分散というか、ですね。
この方法の良いところは、赤字を作った場合でもダメージを小さく抑えられるところなんですが、悪いところは、利益が出た場合それなりに分け前を持っていかれるところです(笑)
で、「鬼滅の刃」ですが、この作品は何と製作委員会制度を採用せず、最初から
◆ufotable、集英社、アニプレックス
の3社が名前を出して制作しています。
「3社が連なっているならそれもある意味製作委員会だ」という人もいるのですが、基本的に製作委員会というのは参加企業の名前は出さないので、これは単純に3社が平等に出資しているということなんだと思います。
もし製作委員会方式をとっているなら「制作:ufotable、配給:アニプレックス、協力:集英社」と表記され、その他に「鬼滅の刃製作委員会」と記載があるはずです。
それが「ufotable、集英社、アニプレックス」とデカデカ出たことで、一部のファンや投資家が「無限列車編」の時にちょっと騒いだわけですね。
ようするに、この巨額の儲けによりこれらの会社の株価が上がるだろうと、そう考えた人たちが結構いたということです。
でも、この3社のうち株式を公開していたのはアニプレックスの親会社である「ソニーエンターテインメント」だけだったので、ソニーの株価はこの年かなり上がったという記事が出ていました。
集英社は出版社で、出版社というのは外からの圧力を受けないために基本的に株式を公開しません。
ufotableに至っては有限会社なので株価の値上がりに期待することも出来ません。
それで「無限列車編」の利益にありつくにはソニー1択だったんだと思います。
1回のヒットでこれだけ投資家が群がるんですから、次の作品で製作委員会を作ったら色々なファンドが入り込もうとしますよね。
で、こういったファンドや投資家が入り込むと、実際の制作に関わっていない人たちに利益をガッツリ持っていかれることになるので、「鬼滅」が3社のみでやっていくのはとてもいいことだと思います。
ufotableもかなり潤沢な資金で制作しているからこそあのクオリティなんでしょうし、集英社はグッズやコラボなどを取り仕切り、ufotableにイラストを描かせることでかなりの収益を上げていると思います。どちらにとってもwin-winです。
完全に3分割ではなくその出資比率で受け取る利益も変わってくると思いますが、そりゃあ配給のアニプレックスも宣伝に気合いが入るってもんですね
かけられる資金が通常の映画より潤沢にあるんでしょうから来場者特典だって配りますよ。
もちろん、映画の興収の半分は劇場の取り分になります。
300億売り上げたとしても東宝に150億持っていかれるわけです。
でも、実際に上映し観客をさばき施設を維持するのは映画館なのでそこは仕方ありません。
で、「原作者へ支払われる使用料はいくらか」という疑問が残るわけですが、これは想像よりは少なめになるようです。
テレビで発言している漫画家さんの言葉から推測すると、一番安くて20万円くらい。
高くても200万円くらいと思われていました。
ただ、これだけのヒット作ということですからさすがに200万ということはないだろうと思います。
一応、原作使用料には1000万という上限が決められているそうなのですが、それに近いところまでは支払われているのではないでしょうか。
普通のヒット作とは関連会社に与える利益が違いますからね。
でも、このヒットで漫画の文庫本は約2億部売れているそうで、本が1冊500円だとして計算すると、原作者はすでに100億円ほどを漫画の売り上げだけで得ているはずです。
もちろん税金で半分くらい消えるんでしょうが、グッズだのコラボだのの権料もありますし、まあ凡人が妄想したところで意味はないくらいの金額は入ってくるんでしょうね(笑)
今回ちょっと不思議に思ったのは、今回の「無限城編」のエンディングで原作者の名前が上記の3社の前に並んでいたことなんですよね。
もしかしたら、吾峠呼世晴氏も上記3社と同じ立場になったということでしょうか
いや、有り得る。
もちろん編集者の方のセンスによる部分も大きいしufotableの神がかった作画によるところも大きいんですが、全ての人が原作をリスペクトしているからこその「鬼滅の刃」なので。
普通に「原作者」とすると規定により最大でも1000万までしか払えないから(そこから手数料などを引くと結局受け取るのは数百万なので)それで共同制作者みたいな枠で名前を載せたのかな?と思ったりしちゃいました
なんにしても、これだけ多くの人々に感動を与えてくれる作品を生み出してくれた方々全員に、その努力に見合うお給料が支払われるといいですね。
最後に少しネガティブなことも…。
上にも少し書きましたが、これだけひとつの作品が売れるとひがんだり腹を立てたりする人はどうしても出てきます。
当然のように今回も、公開当初、あまりに「鬼滅」がスクリーンを占有することに対し不満を漏らす人たちがいました。
どうやらアメコミのファンの方々だったみたいで
「鬼滅がスクリーンを占有しているため他の作品のスクリーン数が減らされている。スクリーンは平等であるべきだ」
ということを言っていました。
まあ、気持ちはわかります。
今回の「スーパーマン」は面白いと言われていたのに1日3回しか上映してもらえない。なのに「鬼滅」は3~4スクリーンで1日20回以上上映している。
これで「鬼滅」の売り上げがいいのは当たり前じゃないか。
「スーパーマン」だって同じだけスクリーンを与えてくれたらもっと売り上げが上がったはずだ、と言いたいわけですよね。
でも、これは仕方ないです。
そういったコメントを読んだので「スーパーマン」の座席を確認してみたら、1回の上映で10席くらいしか売れてなかったんですよね。
これじゃあ減らされるのは仕方ないですよ。
スクリーン数をもっと増やして欲しいと思ったら席は埋めなくちゃ。
上映が始まってから結構日数が経っていた「国宝」ですら当時まだ8~9割の席を埋めていたんですから。
「国宝」なんて3時間もあったから1日3回しか上映してない映画館が多かったんですよ。
それでもレイトショー以外はほぼ席が埋まっていましたよね。
観客が行く気になるかどうかはスクリーン数じゃないですよ。
もちろん「鬼滅」とぶつからなければ他の映画ももう少し収益が伸びたかもしれませんが、そこはズラすこともできたはずですよね。
「鬼滅」とぶつかっても「国宝」は130億くらい興収を上げていますし。スクリーン数の問題だけではないと思います。
もうひとつ、私がちょっと理解できなかったことのひとつが「盗撮した動画をネットで公開する行為」ですね。
しかも盗撮してネットで拡散した理由として「宣伝してやってるんだからむしろ感謝すべき」とか「なんで世界同時上映しないんだ!他の国のファンを無視するな!無視するからこうするしかないんだ!」といったことをほざいていた人もいたみたいですが、この人たち馬鹿なんでしょうかね?
日本の映画をハリウッド大作だと思っているんでしょうか?
どんなに言い訳したところでただのアクセス稼ぎの盗撮でしかないですよね?
日本も金回りが良くてブイブイ言っていた時はハリウッド大作に「日米同時公開!」みたいなことをやってもらっていましたけど、普通は1~2ヶ月遅れるなんて当たり前ですよ。
TVアニメだとネットなどで同時公開されるので、こういうことを言っている人達は配信と映画の上映を同じようなものだと思っているんでしょうか。
映画はその国の配給会社と色々話をしないといけないので日本のアニプレックスだけで公開日を決められるもんじゃないんですよ。受け入れる側の配給会社がどのあたりの売り上げを見込んでどこまで力を入れるか、それによって左右されるじゃないですか。
1~2ヶ月遅れの公開でも早い方ですよ。
もちろん受け入れ国の都合で公開されないなんてことも良くあります。
中国は多分今回も上映されないと思います。
中国は暴力的な表現の作品を嫌がります。興奮した国民が、政府を敵だと思うようになっては困るからです。
それと、日本人が正義の立場にいるのも嫌がります。自分たちが正義であると言うためには日本人が正義であっては困るからです。
そのため以前も「無限列車編」を公開していませんでした。
なので今回も中国本土での上映許可は下りないでしょう。
中国の「鬼滅」ファンは香港と台湾で見るしかないようです。
アジアは順次公開されていて、合計するとすでに100億くらい行っているそうです。
これから欧米での公開が始まります。
世界興収の目標としてはまずは500億といったところでしょうが、その前に日本の興収が400億を超えるかどうか、そこが注目ですね。
日本のアニメ全体の収益は約3.3兆円で、そのうち海外の収益は1.7兆円だそうです(2023年度)
日本中のクリエイターたちが人生をかけて生み出す売り上げとして3.3兆円が高いのか安いのかは分かりませんが、日本政府が80兆円もの大金をポンとアメリカに出すことを考えたらちょっと拳を握っちゃいますよね。
それでも日本は粛々と、ポリコレだのなんだのに屈することもなく、楽しくて感動的なアニメを作り続けていって欲しいですね。
以上