“the last resort” 【時事所感114】
前回の続きをお話しします。
「国家存立存続の3要素」とは
・「経済力」
・「軍事力」
・「形而上価値観、価値規範」
そのうちの「軍事力」は現在の世界は3極構造にあって、
その3極は「米国」「中国」そして「ロシア」の3カ国。
米国が中国と覇権競争による対立関係を深めていくならば、軍事3大国の残り1カ国ロシアが中国側と接近、同盟的関係にならないように、
米国はロシアとの関係性を改善して味方に取り込むか、それが困難ならば、最低限やっておくべきは、
ロシアが中国側の味方にならないように、
中露関係を引き離すような外交カードを使うか、
ロシアが米中覇権対立を中立的立場にさせるか、米中覇権競争を静観せざるを得ない状態へと導くべきだった。
具体例は、冷戦時代の「米中の接近」。国境・領土問題を対ロシア(旧ソ連邦)で抱えていた中国と核兵器・軍事力競争、宇宙開発競争等社会主義国家ロシア(ソ連邦)との「東西冷戦」の先頭に立つ覇権国家米国が、共通の敵国ソビエト連邦を視野に、国交回復、科学技術研究や技術者
留学、経済的支援を対中国にすることで、米国が中国を一時的にソビエト連邦から引き離す政策に成功した、という話でした。
この「米中接近」の米国外交政策が西側陣営、日本を含めて、現在の中国覇権主義政策を促し早めてしまったのが現在です。
これをソビエト連邦、現在のロシアは知っている。
考えてみれば、ロシアのプーチン大統領、政府中枢部の人々は予測した可能性は大きい。
「米国と中国は経済力や軍事力を高めて覇権競争をしている。
このままではロシアは遅れをとって、後々に禍根を遺すことに為りかねない。
中国は対立相手国米国に接近、味方することは困難だ。
やるならこの機会だ。」
国際政治、外交政策において、
「軍事力」のことを「ラスト・リゾート」“the last resort”、「最後の手段」と表現する。
“resort”「頼みの綱」「手段で訴える」の意味合いです。
米国ニクソン政権、フォード政権期の元国家安全保障問題担当の大統領補佐官、元国務長官、ノーベル平和賞受賞者、
ヘンリー=キッシンジャー氏の発言内容を紹介します。
「国際政治、外交交渉において、どれほど優れた外交交渉文書を準備し束ねようと、どれほど崇高な法律書を用意し積み重ねても、
交渉相手国が『この交渉会談で会議が決裂したら、この連射銃を発砲するぞ』と威嚇されれば、
全てはお流れ、お終い。」
米国外交とロシア・中国【時事所感113】
今回は米国外交とロシア・中国について話をします。
今回のロシア・ウクライナ問題について、先に述べます。
米国の発言力、影響力を考えれば、少し乱暴な表現で言えば、
NATO欧州諸国が巻き添えを喰らった形と言えるかもしれません。
度々お話ししています「国家存立の3要素」の一つ、
「経済力」においては現在の世界は、「米国」「中国」「欧州連合」「日本」「インド」の5極構造。
「~3要素」のもう一つ「軍事力」は、
現在の世界は3極構造になっていて、
「米国」「中国」「ロシア」です。
この軍事力3大国である米国が外交政策を考えるとき、残りの軍事2大国「ロシア」と「中国」両国の関係性に注視、熟慮しながらでなければいけません。
米国と中国の覇権競争が激化するならば、
米国はロシアとの関係を前もって一足先に良好に保つか、理想的に事が運べるならば、経済力や他の外交カードを使って米国側の味方につける、西側陣営に取り込めれば最善。
思惑通りにいかなくとも最低限やっておくべきは、
ロシアと中国の関係をなるべく引き離す、若しくはロシアが米中対立関係を静観するか中立的立場を採択せざるを得ない状態へと導くべきでした。
ところが今回のロシア・ウクライナ問題については、
中国との対立関係が深まるなかで、旧ソ連邦解体による東西冷戦終結から今日までの米露関係、米国の対ロ政策、NATO拡大がよくなかった。
時系列にみていけば、ロシアと中国の接近、両国が手を組む事態は、米国にとっては最も注意すべき、やってはいけない状況を自ら招いてしまった訳です。
かつての大戦終結後、中国毛沢東側からニクソン大統領へ接近したのを受け入れた米国。
※(関連:時事所感64/「中華③」)
歴史的経験則を活かせないことが招いてしまった現状でしょう。
次回はこの話の続きで補足を。
米国の外交下手【時事所感112】
10代の頃から長年疑問視してきたことがあります。
「何故、米国は外交が下手なのだろうか?」
米国が他国との経済、金融、貿易、安全保障等各分野について交渉なり会合なり行うと、必ずといっていい程に波風が起きる、問題が複雑化することが多い。
欧州諸国、中南米、アジア地域、アフリカ、そして中東地域・・・。
具体例を挙げるにきりが無い。
結論を先に述べると、
米国の外交政策は、悪い表現になるが下手、過剰なのです。
イギリスの慣習的文化、伝統的宗教、保守的政治を嫌った反体制的・革新思想の左派、そのなかでも極左派の人々が多くを占めた大陸移民。
彼らを中心に建国されたのがアメリカ合衆国の始まりである。
建国からの歴史も短く、更に革新思想であるが故に、
無歴史(ahistorical / no history)にかなり等しい。
米国の外交政策を遡って観察すると、
ウィルソニアン的理想主義を表向きに掲げながらも、
その根本には「覇権拡大、覇権主義」がある。
「平等」を理想に掲げながらも、現実には原住民インディアンを殺戮しながら、新大陸の開拓、領土拡大。
奴隷貿易による人身売買によって、開拓労働者をアフリカや中南米の黒人種や有色人種で確保した。
以前述べた「国家存立の3大要素」
・経済力
・軍事力
・規範的価値観、形而上的価値観
この3要素を用いて、世界中の各地域の覇権を拡大、掌握することを優先している。
経済力は述べるまでもないでしょう。
軍事力については、約60以上の世界中の国・地域と軍事同盟、安全保障条約・協定の関係を持ち、
世界中の約800箇所に米軍基地や米軍関連施設を有して、
約130カ国に米軍を駐留させている。
米国は自国存立のための安全保障政策を優先するなら、
60カ国以上の国と軍事同盟関係を結ぶのは、逆に同盟関係国の何れかの国で軍事紛争が勃発すると、
その都度に米国は他国と同盟関係国の軍事紛争に巻き込まれざるを得ない訳です。
ましてや同時期に同盟関係国数カ国に軍事衝突が起きたら、米国は全てに対応するのは実質的に不可能、サボタージュはリアリティを帯びて有り得るわけです。
そんな自国を他国の軍事紛争に巻き込んでしまう可能性を高める多数の軍事同盟関係を何故締結するのか。
全ては「覇権」、世界中各地域に米軍依存型安全保障体制を構築することで、
経済、軍事の両方で世界中の影響力、実権を掌握すること、世界中の覇権を拡大すること、
米国にとっては「覇権主義」こそ最優先の国益だからです。
「革新思想」
「無歴史」
「覇権主義」
米国が選択する外交政策は、歴史からの経験則に乏しく過剰なのです。
故に、他国との対立や軋轢、衝突が生じたり、
米国が介入する地域や国家は、問題が泥沼化していくのは、
最優先が「相手国」ではなく、「米国覇権第一」だからなのです。


