2202 :AKG C-451E(EB)カプセル CK-1張替え修復法の開発 (前編) | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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Challenge to replace the diaphragm of C-451E / EB

今回の記事は業務用コンデンサマイクロホンに関し必要な知識・スキルと資格を持つ音響家・舞台音響家を対象としています。複数のC-451E(EB)が手元にあり比較試聴できることも前提としています。安易に一般アマチュアのかたが手を出すことは避けていただくのが賢明です。

 

背景

 C-451E(EB)は接触不良問題のほかカプセルのCK-1が吹かれに弱く、長期運用のなかで取り扱いに気を付けてもダイアフラムの破れが起こりやすいのが特徴です。

 CK-1カプセルはすでに入手できない今、接触不良問題もないC-451Bにやむなく乗り換えて廃棄せざるを得ない諸兄も多くいらっしゃいます。また機材倉庫で廃棄を待つ個体も多いはず。

 

リボンマイクのように「張替えができないか」という単純な想いから発したプロジェクトです。

 

 

きらめたらゴミだけどダメもとで挑戦したらうまくいった。

これで救済できるマイク(カプセル)は結構あるはず!

 

まずは、「あの繊細なコンデンサマイク」にそんな低次元で荒っぽいことを・・・という神様と向き合うような崇拝意識を捨てることです。

「どうせ機械だ!」というワリキリこそ成功への唯一の道。

 

フチが切れて穴の開いた低域ヌケ、時々「バリッ!」、を我慢するか・・・

それなら張り替えてしまえ。

ダイアフラムの損傷の程度にかかわらず、あるいはダイアフラムが剝ぎ取られた状態でも結果はなんら変わりません。

 

 

 

(後日、音源を公開しました)

2206 :「AKG C-451E(EB)カプセル CK-1張替」より1か月、音声を公開しました

 

YOUTUBE https://youtu.be/JRZQbp0yCLM

 

 

 

 

 C-451E、C-451EBは構造上、カプセル「CK-1」とプリアンプ間の構造的問題でこの部分の接触不良が起こりやすく、それに気を付けながらみなさま使用されていると思います。

 

(上:C-451EB  下:C-451E)

 

 

 

それでもプレミアが付いたり、一向に人気は衰える気配もなくこの旧タイプは「ここ一番」でのパフォーマンスは現行のC-451Bと二分されます。

(上:現行のC-451B  下:C-451EB)

 

 C-451E(EB)は本体もアタマ部分の「CK-1」もかなり昔に廃版、これからの新品入手は絶望的。中古であっても世界的に流通数は少なくたまに入手できる場合も相手次第、ダイアフラムにダメージを負ったモノである確率が高い。

運が良ければ良品に当たるかもしれないが高確率でハズレの予想。

まあ半世紀経過しているんですから。

 

 

 「バリバリ」ノイズの原因には2つある。

1.CK-1とプリアンプ部との接触不良

CK-1のスプリングを強める、アルミ箔をたたんでボディとの間に挟むと現象は止まる。

 

2.振動膜の部分破損

・感度低下、低域が落ち、接触不良同様のバリバリノイズが出る。

マイク姿勢によっては逆相混じりの音になる。

 

 

(典型的な破損状況は)

振動膜(金属蒸着マイラーフィルム)の破れ、破れかかりと変形、一応音の出るものでもこれがピラピラしてバックプレートとの間で「バリバリ」ノイズが発生する。

この雑音は分割部の接触不良との違いがわかりづらいです。

 

 

 そんな個体がその辺に結構有るんじゃないでしょうか。

廃棄?、ちょっと待ってもう一度命を吹き込んでみませんか。

 

CK-1をはずしたC-451EB

 

 

 

(ダイアフラム=振動膜 張り替えに挑戦した)

 一発でうまくいくとは思わなかったが、そんなものかもしれない。

はがした蒸着フィルムを見るとRCA-77DXのリボン(1.8μm厚)程度と感じられた。

 

 メーカーや常識のある方からからすれば「そんなことやってはダメだ」と言うだろう、しかし後年ビンテージとなった機材の宿命として純正以外のこうした修復法は避けられないだろう。

 

 まず音質はどうであれ、動作するかどうかだけでも見たいので「キッチンホイル」=11μm厚を使って仮修復を試みた。

 

 

 「コンデンサマイクは超精密で繊細、そんなチープな素人発想が通用するはずがない」というのが普通の感覚であろう、しかしこれが問題なく使えることがわかった。

 約6dB感度が低いが音質も問題なく現場で使えるレベル、すなわちオリジナル品と混ざったら音質だけではこの張替え品を見分けるのは不可能なレベルで修復できた。

 2回、3回と同じことを試みるが感度・音質ともに同一に仕上がる。

17Φに切り出した箔はカタチを保ったままストレスなくピンセットでつかめることは大きなメリットである。

 

 

分解したCK-1と交換用のアルミホイル振動膜

破れた元の蒸着ダイアフラムをきれいにはがしてこちらに交換する。

 

バックプレートの破損ダイアフラムはキレイに取り除いた。

アルミホイルはきれいに伸ばすとこの写真のように「湾曲」するため凸面をバックプレートに向けると短絡が起き、逆に向けると低容量(低感度)を余儀なくされる。

この平面性を確保することこそが命といえる。しかしまだその方法を見出していないが、たまたま完全平面性を確保したときは感度・音質ともに同一、カプセル容量は26PFを示した.、しかし再現性はなかった。

 

 

★ しかしながら一瞬でも正常な音が聴こえた事は「金」にも値します。

 

 

  1.8μmのリボンマイク用アルミ箔でも試したが、面積を持ったまっ平かつ円形に切り出すのは至難の業というより「まったく不可能」と判断した。

 

 4μm厚の銀箔で試してみると中域に共振点のあるナローレンジ、違和感の強い音になる、銀の素性的なものか、リボンマイクのときも振動板材料として、同様の経験をしたことがある。

正常なCK-1カプセル容量実測のようす

(秋月のDMG6243キャパシタンスメータ使用)

 

 正常品で25PF程度(実測)ですが、張り替えたものは15PF前後、感度差がややあるが音質差はまず分からないくらいの完成度で仕上がる。

これにはカプセル構造によるものが大だと思われる、バックプレートにまっ平に密着できればあえてテンションをかけて引っ張る必要はないようだ

 

(ポイント)

この修復を必要とするすべての方がこの恩恵を受けやすくする為、ダイアフラム膜材料は誰もが入手できる「キッチンアルミホイル」とする。

 

ダイアフラム膜は「張力の管理」よりもバックプレートとの平滑面を保つことが肝心、音作りはバックプレートの穴とその背面のラビリンスによるものが支配的と思われる。

 

バックプレート部を中心に、すべての電極を素手で触れない。

 

容量メーターによってコンデンサとしての状態把握は成功への近道。

 

25PFが目標だが、15PF程度ならオンマイク(ドラムトップ、ハイハットほか)では問題なく使用可となる。現C-451Bなら10dB・20dBのATTさえあるのだから、6dBのATTを入れたのと変わりない。

20PF以上になればオリジナルと同じ扱いができる。

 

 

 6dBほどの感度差、カプセル容量15PF程度の修復はあっても、もともとオフマイクで使われるよりもドラムの金物系やギター、ピアノなど圧倒的に「オンマイク向き」であることからやや感度が低くとも問題ナシ、と割り切れる。

 

 さらに「キッチンホイル」(11ミクロン厚アルミ箔)の使用が有効なのはこのリペア作業のハードルを下げ、オリジナルと同一音であることは決定的です。

これで救えるCK-1カプセルが増えることを願っております。

 

 しかし簡単にここまでたどり着いたのは奇跡としか言いようがない。

さらに普通のシゴイチめざして元気に復活させてやる事を次のステップ課題とします。

 

1stレポートでは「オンマイク」で使えるここ迄でひと区切りとします。

 

 

 

💖 (後編)をおたのしみに!!

(最終音源の公開も予定しています)

 

以上

本記事の無断ネット盗用は犯罪です。

 

 

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