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2024年追記
お役立ち度 ★★★★★
(2009年11月~2010年3月にかけて「ファンタム式パナ改マイク」はノウハウを確立していきました)
4号機は手作り感を廃した美しさと完成度を重視して力を集中した。
手作り感排除を重視、LRペアの4号機
!そのころある音響技術セミナーからお誘いを頂いた。
「サンプルを送っておいてほしい」ということで出力を「マイクレベル」に調整した4号機 と 測定用の短小マイクを事務局にお預けした。
さあ大変! 実はここまで黙ってきたがこのマイクには最大の欠点がある。
大音量に弱いのだ。
それはここまでの「ファンタム式パナ改」は最大108dB/SPL:(1% THD)がリミット、「ガツーン」と来たらいっぺんにひずむ。
期限は1週間しかない。
Shinさん何を思ったか真空管(昭和30年台の電池管 :5678SF)を引っ張り出し、フィラメント用のA電池と急ごしらえのB電源(約+30V)を電池で与えた。
サブミニチュア電池管特有のマイクロホニックノイズが気になるものの、バイポーラTRと比べとにかく圧倒的にピークマージンがデカイことが確認された。
ひざを叩いて実験は放り出した、そして「半導体5極管」であるFET回路を描きはじめた。
FETもスモールサイズでスペックをカバーする「2SK330」を若松通商で探し出し、類例のない回路で組み上げた。
カップリングコンデンサも容量の小さなフィルムコンデンサで間に合うことになり、AVX社の0.22μFのコンデンサが一番大きな部品となった。
かくして完成したのが初のFET型ファンタム式パナ改マイク(fetⅠ)である。
最大SPLを測定すると111dB/SPL:(1% THD)、バイポーラTR式よりわずか3dBだが改善でき、ビニテにマジックで「fet」と書いてセミナー当日持参した。
日帰りの予定だったが何があるのか詳細の分からないまま宿泊の予約までお願いした。
会場には業界重鎮の方もおられ、やや緊張していた。
1日目のデモ・実技中心のセミナーではデジタルワイヤレスマイクのデモも行われ、関心はレイテンシーにしかない、3~4ms程度との事でVoさんの唇の動きとSR音の関係をカマチ位置で確認してやろう、とカブリつき、結局生音でも音速分の遅れによる口パク現象を確認したに過ぎずもはや「遅延」を気にしても意味のない事を学んだ。
夜は大宴会場で参加者全員と山の幸に舌鼓、PAは持込だ、
日付が明日に差し掛かっても酒盛り部屋でマイク談義に花が咲く、何しろ「100円」のカプセルである事と、あのXLRコネクタの中に収納された小基板に皆の興味は集中する。
翌日のスケジュールは私は別予定のため送迎バスで会場迄で失礼した。
このあとピアノのSRによる某社の新製品発売前デモがあり、新発表の超高級マイクは納得のパフォーマンスだったと聞く。
誰かが「例のマイク(fetⅠ)も試してみよう」と言い出した。
この時点では「どうせロクなものじゃないだろう」と誰もが思ったはずです。
「それでは」と比較テストに及んだがこの超高級マイクに全然負けておらず会場から「オーー!」の声が上がり、「驚愕」の結果だったとのちに聞かされた。
デモを行った某社も宣伝になったのか、ならなかったのか詳細は不明であるが、知らせを聞いて私は度肝を抜くほど驚いた、そして嬉しさよりもはかり知れない充実感に包まれた。
夢の第ニステップである「業務用マイクロホン」として、しかもきわめて高いポテンシャルを以って認められた瞬間である。
(2010年2月10日のことである)
想像を超える評価を頂いたが、いかんせんfet Ⅰは 急ごしらえのマイクであるが故、手が行き届いてないのがイヤであった。そしてどうしても130dB/SPL(1%THD)をクリアさせたい。
①ECM電源をAMP回路からパクるのをやめ、独立させた。
②AVXのBox型フィルムコンデンサは叩くと「カンカン」鳴く、これはいけないと良質のコンデンサ選びを行った。
結果、WIMAのMKS-2とMKS-4がが候補に上がった、ショックテストを比較した結果と63V耐圧である事、そしてショックノイズも極めて小さく「ゴツゴツ」した感じのMKS-2に決定した。
この2点を改善したところ念願の130dB/SPL:(0.4~1% THD)をクリアーし、手許の音圧計(RION NA-20)では測定限界を超え、高ダイナミックレンジを確保した。
fetⅡ 誕生の瞬間である。
(このテストはごく短時間で済まさないと警察に通報されかねない「超巨大騒音」なのです)
建物の遮音性能(TL)が40dBのマンションだとしても外に90dB/SPL漏れ、一般家屋では更に10dB以上TL性能は低いので100dBモレを考えたら当然110番通報は間違いないが、それ以上に目の前で1KHZシングルトーン130dB/SPLを浴びる事自身、音屋としては自殺行為に等しい。
当日の事務局ご担当に送り、使っていただいたがこちらでの改善結果と同じ答えが返ってきた。
また、これは「ロングテール」で続けるべきマイクだ、というコメントも併せて頂いた。
かくしてfetⅠ は伝説のマイクとなり、改良型であるfetⅡ を以って「ファンタム式パナ改マイク」の代表的な完成形となった。
あれから2年半、measurement fetⅡ とクリップオン専用のfetⅡi を加え益々ファンは増えロングテール化の様相。
何よりもブログ記事を参考に自作された皆様の意見も異口同音に「素晴らしい」の連続、これは確実にホンモノになった。
「ShinさんのPA工作室」では技術情報は回路図も含め全公開していますので記事を参考に同じものを作ることが出来る点も特徴です(駄作もあるけど)
またこの「ファンタム式パナ改マイク」のノウハウはそのままあらゆる手作りマイクへ波及している事を見るにつけ、作られた皆様の新しい感動に結びついている事を見聞きするにつけ、強引かつ早いテンポであったがこのプロジェクトを推進してきた事は少し未来を開くことが出来たのかもしれない。
(お知らせ)
fetⅡ、fetⅡi、measurement-fetⅡほか、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください Shin
モノ作り日本もっと元気出せ! (Shin)
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