1235 :「ファンタム式パナ改マイク」誕生秘話(前編) | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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2024年追記

 

お役立ち度 ★★★★★

(2009年11月~2010年3月にかけて「ファンタム式パナ改マイク」はノウハウを確立していきました)

 

3年前、「パナ改」と呼ばれるマイクの自作を行った。

 

今日のライブが無事終わり、機材と一緒に練習所に戻って打ち上げの開始、今日のビデオも見終わりグラスも空いて行く、この間鉄板で鮮やかな腕を見せるTbのA君お得意の手料理もヤキソバを平らげる頃になると、誰からともなく楽器が取り出される、面倒見の良いのはどこのバンドでも大体Tbだがこういう時もTbが先手を切る、SaxやTpが加わりセッションが分厚くなっていく。

 

Dsが加わったらもう止まらない、Bsも続く、ピアノまで加わる頃はもう明日になっているが益々盛り上がって夜は更けていく。

手持ちのR-09にパナ改を付け録音してみた。

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(3年前自作したパナ改マイク=Linkwits-Mod)

PB音を聞かせると「本番のよりこっちのほうが全然いいよ」と誰かが言い、ヘッドホンが回される。そうだ、私もそう思った。 

 

このパナ改マイクでバンド35周年記念ライブの録音を都内のライブハウスでおこなった。

小型卓にAKG C-3000Bの録音は録音機のメーター片側が振っていないのに気づいた、R-09なので入力プラグを抜き差しして緊急処置。

 

「飲み物がどうだとか、通路を空ける」とかで本番中の録音場所を1mほどずらすことになった。

そっと移動するのだが案の定「パナ改」を接続した私のR-09も電池BOXのミニプラグからのケーブルのタワミ変化で「バリッ」と云った。どちらの例もミニプラグ・ジャックの宿命的・致命的欠陥。

 

分かってはいるがこの時ほど落胆したことはない、「ミニプラグ・ジャックなんかこの世から消えて無くなれ!」と捨てゼリフが頭をよぎった。

 

かくして記念CDはこの両方の録音を合わせて作成した、しかしもう我慢している場合ではない。

 

「何がパナ改だ!」、くやしさに怒りが込み上げた。

 

そのときだ、「この出来そこないの巨人「パナ改」を優秀な業務用マイクに変身させるんだ、ととんでもない課題が胸のどこかに「グサッ」と来た。

 

それはパナ改の泣き所に気づいた自分に課せられた責任、「パナ改」創始者である Linkwits 氏の仕事はここまで。

「本家」とか「元祖」とか神格化する時代はこの通り終わった、そして前例が有ろうとなかろうと、ここからはそれに気づいた自分がやるしかないと決意した。


【決意】

出来るまでやる」

 

そして「ないモノねだりこそ開発の原点だ」とわがままな夢をブログのTOP画面に記した。


 

「ファンタム式パナ改」第1号の完成】
 
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(ファンタム式パナ改 第1号) 2009.11.4 誕生

 

こうして姿を現したのは「スモールダイアフラム」のペンシル型マイクだ。

全長170mmとECM8000より20mm短い、負けられないのだ、第一音が全然違う。

音質は「パナ改」(Linkwts-Mod)そのままである。ラインレベルで出力される常識外れ新型のマイクは、ドッシリ感のあるナチュラルな音声と並はずれた高SN比。

 

ケーブルを付けたフォルムはにわかには信じがたくボイステストでは身震いを禁じ得なかった。

かくして邪魔な電池箱もミニジャック・ミニプラグもない「夢のパナ改マイク」が実現した。

ツギハギだらけの外観だけど私には「救世主」のように思えた、

あの思い出したくもないライブハウスでのムチャクチャ録音経験の1ケ月後のことだ。

 

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試行錯誤で有り合わせのXLRコネクタに組み上げた基板。


 

 

【もっと小さく・音質よもっと良くなれ】 小は大に勝れ!

 

2号機 は普遍性のある超小型デザインにしたいと思い、XLRコネクタの中に基板を完全収納しマイク部のデザインはこの時に決定させた。

 

写真のようにfetⅡやfetⅡi 同様のマイク部のフォルムはこの2号機からのオリジナル金属部品を投入して現在も継続している。


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       第2号機

 

基板は1号機からの流用、この2号機は現在動態保存してあり時々動作確認している。

SCRノイズ・イミュニティの低減化などと併せて独自のフローティング構造を盛り込みタッチノイズの極小化も徹底した。

(完成後手にして、あまりにもタッチノイズ(手触りノイズ)が少ないので私の方が驚いたほどです)

 

この構造はその後、クリップオンマイクの「fetⅡi」でメーカー製定番マイクに圧倒的な差をつけることになった。

タッチノイズを徹底的に抑えるかどうかでクリップオンではこれほどの違いを見せ、この違いは楽音にそのまま現れる。(60HZの強い共振音はご法度である)



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これは同一のフレキシブルアーム(AT-8418)を使用し、軽くアームを叩いたスペクトル比較、両者の音の違いが想像できると思います。

 

 

【手作り感覚からの脱皮】

「手作り」にこそ価値を見出される世界は伝統工芸や料理の世界などと多くあるが緻密さ、精密さから「美」を醸し出す工業製品であるほどむしろ「手作り」感覚の排除にこそ価値がある。
 

たとえばECMカプセルにリード線を半田付けしたガイコツのようなモノを「良い音だ」と崇め奉ったり洗濯バサミのマイクホルダを良しとする感覚などまったく持ち合わせていない。

 

「良い音はカタチを求め、美しいしいフォルムからは良い音が得られる」

これはマイク作りに携わる自分のたどりついた結論です、マイクは生き物だ。

 

【基板超小型化へのあせりと失敗】

3号機 では2CS1740S という超小型TRとチップ部品化して基板の小型化を試みたがユニバーサル基板ではチップ部品は手に負えないほど扱い辛い、やっとこしらえたものをテストするが音の悪さに加え、チップコンデンサのせいであろうか基板を叩くと「カンカン・キンキン」いう、これは即ボツにした。

 

【さればスシ詰め路線だ】
4号機 は基板のすし詰めを覚悟しこんなおしゃれなペアマイクになった。

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                              (その基板)

 

基板を小さくする事によってこれまで出来なかった事も可能にすることがわかった。  (でも配線を間違えたら絶対に直せない)

 

これはmeasurement fetⅠの元形「測定用」です。

http://ameblo.jp/shin-aiai/image-10447767155-10396144432.html

10mm四方の宇宙が自分に与えられたエリアだ、この時点では金属皮膜抵抗を使ったり使わなかったりであった。

 

ここ迄のマイクはすべてバイポーラTR使用です。

 

 

そのころある音響技術セミナーからお誘いを頂いた。

 

 

         後編に続く


 

 

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