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2024年1月追記
単一指向性ECMカプセルを求める。
まず思い当たるのが東京近郊なら秋葉原、大阪
近郊でしたら日本橋ということになりますがどんなに足を棒にして探し回っても「まともなモノ」はありません。(100円か200円で幾らでもあると思うでしょ、甘い。)
音楽を扱えるモノ、現状では皆無です。
あそこに行けば何とかなる・・・淡い期待を抱いて探しまわって足が棒になる前に申し上げておきます。
次に、Webで「Digi-key」 を通じた個人輸入という手段。(国内メーカーなのに・・・)
パナソニックのWM-65A103やWM-55A103の機種限定で入手可能ですが・・・
しかし、はたしてこれらのマイクカプセルがどの程度「実用」になるかといわれれば「絶望的」と答えざるを得ません。
KUB8223 (8φ)
感度 -45dB
タイプ エレクトレットコンデンサ
サイズ/寸法 円形 -8.0mm 径 x4.5mm
周波数特性・SN比の公表が有りませんがWM-55A103より劣ります。
(ホシデンの単一指向カプセルはSNの低さと独特の周波数特性で、限定された用途以外使い道はないでしょう)
WM-65A103 (6φ)
感度 -50dB ±4dB
電圧 - 定格 2V
タイプ エレクトレットコンデンサ
サイズ/寸法 円形 - 6mm 径 x 5mm
S/N比 55dB
周波数 100Hz ~ 12kHz
WM-55A103 (9.7φ)
感度 -47dB ±4dB
電圧 - 定格 1.5V
タイプ エレクトレットコンデンサ
サイズ/寸法 円形 - 9.7mm 径 x 5mm
S/N比 60dB
周波数 100Hz~ 16kHz
とはなっていますが使ってみてガッカリするだけでしょう
周波数特性、SN比ともに音楽用としてはまったく残念ですがどちらのカプセルも割高な個人輸入をするほどの価値は有りません、これはスピーチ用でしょう。
しかし求める者には必ず道がある
入手不可能なはずの高品位な単一指向性ECMカプセルを手にする事ができます。
フォーリーフ社は入手可能な方法できっちりと音楽と向き合えるMade in japanの各種単一指向性ECMカプセルを生み出しているメーカーでありマイクロホンクラフトをおこなう者にとってはまさに救世主、貴重な存在です。
※ ECMカプセルのテストハウジングは「ティストレーナ」に限る!(今年のマイ・ブーム)
「イケアで見つけた」と友人が送ってくれた小型ティストレーナ(25φ) Thank you
UEB-5261 を入れてテスト中
(フォーリーフ) (メーカ直販)
UEB-0600またはUEC-0600 (6φ)
これはほぼWM-65A103同等です、「接話向き」という説明があります、レンジも狭く、SN比の点も音楽には向きません。
UEB-5261 (10φ)
このカプセルのフラットさは何回かご紹介した通りAKGのC-391Bに酷似して音楽録音に十分なものがあります、PA用途ではこの「クセ」のなさをどう評価するかで明暗分かれます。
ワイドレンジかつ高品位のECMカプセルです。
UEB-5361 (13.7φ)
このカプセルも何回かご紹介した通り、フォーリーフECMカプセルの名器。
AKGのC-451Bに酷似しています、現実にC-451代替として使えるクオリティを持ちますので、録音だけでなくピアノ・ギター・ドラムトップとPA用として実力を見せます。
バウンダリーマイクとして製作したものは従来の定番マイクをはるかに超えるハウリングマージン、友人からの依頼により、3日間の芝居公演でそれを証明しました。
最近これに加えて何種類かフォーリーフのECMカプセルをテストし、中には特筆するようなカプセルがあることを発見しました。
OEB-1451 (14φ)・・・オムニカーディオイド型
プレゼンスピークはスペックより穏やか、「高域がすっきり浮き上がり綺麗だ」という演奏家のコメントをいただいたマイク。全体にフラット指向。
また、オムニカーディオイド(ゆるやかな単一指向性)の180度の減衰値もスペックよりやや多めに感ずる。 このめずらしい指向性のユニットは「無指向性」のようなホールトーンが得られる点でもちょっとお宝かもしれません。
今回入手した14φカプセルの中では最もクラシック録音向きのパフォーマンスを示した、何よりもSN比が高いのはありがたい。
で、このカプセルを使用fet-uⅢとして製作したマイクをクラシック録音専門の友人がオーケストラのホール録音でなんと有名な大口径超高級機との同録を試みた。
いやこれが決して負けていない、録音した側も演奏者側も簡単には甲乙つけがたいところまで踏ん張っている。
記事
http://ameblo.jp/shin-aiai/entry-11007679323.html
http://ameblo.jp/shin-aiai/entry-11011534249.html
UEB-1461 (14φ)
何よりもハウリングマージンの高いことは特筆に値する。
音傾向はOEB-1451に似ている、低域の量感はUEB-5261・5361に譲る。
この特性を生かした使い方を探っています。
現在評価中
UEB-1450 (14φ)
こちらはFETナシ、UEB-1461との比較が適切だが、ゲート抵抗1GΩ・2SK117にした場合低域はややマシになる、プレゼンスピークはおとなし目に8KHZ付近に。、FETとゲート抵抗値(種類)の選択によって音質・SN比などかなりカスタマイズ出来ます。
現在評価中
※音質はUEB-5XXXシリーズと14XXシリーズそれぞれ独特の音質的キャラクタがあります。
低域たっぷりの5XXXシリーズに対し、低域よりも高域にきらめきを持つ14XXと感じ好みの分かれるところでしょう、どちらも優秀な素性のユニットです。
(総括)
マイクロホンはあきらかに録音向きとPA向きとがある、テストハウジングに入れたスピーチテストによって大方の性能と音源に対する向き・不向きはわかる。
マイクロホンの自作も自分の用途に合わせたカプセル選択ができるようになったことは大変歓迎される。
こうして良質な単一指向性ECMカプセルの入手が可能となった今、マイクロホンとして完成させるノウハウを以って望まねば、今度は宝も持ち腐れになる。
次の記事を是非参考にしていただきたい。
http://ameblo.jp/shin-aiai/entry-10953746406.html
http://ameblo.jp/shin-aiai/entry-10960420736.html
http://ameblo.jp/shin-aiai/entry-11000226240.html
http://ameblo.jp/shin-aiai/entry-11007679323.html
http://ameblo.jp/shin-aiai/entry-11011534249.html
最後に
マイクやマイクユニット(カプセル)を選ぶ際どうしても「周波数特性表」を見ながらつい決めてしまう場面は案外多いと思います。
今回ご紹介したカプセルはほぼすべてShinの測定環境でスペアナ波形をキャプチャーして掲載準備したが、最終的に全部削除した。
それは実使用においては得てして周波数特性カーブとは異なる表情を見せるのが「マイクロホン」だからです。
「音質」と周波数特性とは無関係ではないが、それがすべてではない。
周波数特性表からは想像もつかない結果に唖然とする場面は日常茶飯事。
楽音を相手にするツールをサイン波のスイープやホワイトノイズ等で得た結果で評価するのは、その昔「物理特性優先」の日本のオーディオメーカのあり方、特にSPとマイクは一部を除き世界から嘲笑された二の舞、BTS(旧 放送技術規格)すら廃止された。
これはメーカー発表の資料で十分、もっと自分の耳を信じるべきです。
これなくしてお宝と出会うチャンスはありえない。
・・・それにしても無指向性カプセルであるWM-61A(改)の凄さをあらためて感ずる。
【おことわり】
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