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2024年1月追記
あるECMメーカのご好意により高品位単一指向性ECMカプセルを2種類入手することが出来ました。 (同社各位には心より御礼申し上げます)
10φ台、13φ台の口径、どちらのカプセルもデジキーなど海外から個人輸入で入手可能な単一指向性ECMカプセルとはまったく次元の異なる納得の一級品。
普通なら「カタログスペック」と称し理想値あたりを公表するが、このメーカ資料のスペック表記はどちらのマイクも遠慮がちです.
f 特も100HZ~との事だが「地鳴りのような領域まで見事に拾っており、実に奥ゆかしく実際には20HZ~20KHZはほぼクリアしていると思われます。
ソースフォロワ出力であり、「ファンタム式パナ改用マイク」のAMP部をややアレンジして卓接続でテストした。
13φ台のECMで驚いたのは、AKG C-451同等、というかプレゼンスピークを持ったワイドレンジな音は手許のC-451Bにウリ二つではないか、試しにA/B比較したが「どこに違いがあるのだろう?」と感ずる程・・・酷似である。
さらに残留ノイズのレベル・質ともに同等・同傾向・・・これでもECMか?と妙な感動を覚える。
それほど高品位な単一指向性ECMカプセルとの出会いです。
使用したUEB-5361。一味違うゾ(実物では前面に特殊繊維のフィルター有)
ジャーマンシルバー(洋白)製の贅沢なカプセルハウジングは「演奏音に馴染む」音作りに大きく貢献してくれているようだ。フルートなど管楽器素材として好まれて使われている素材。
また10φ台の方もまったく負けていない、フラットでワイドレンジな音は良い意味で手許のAKG C-391Bにそっくりだが繊細感や残留ノイズレベルではこちらの方がかなり勝っており、このカプセルも常識をあっさりとひっくり返してくれた。
誇大な宣伝文句も美辞麗句もないが、このように「キラリと光る」世界的品質のプロ用マイクロホンカプセルを粛々と生産されている国内メーカがある事は「モノ作り日本」の誇りです。
◎これでShinさんのライナップに念願の高品位単一指向性マイクが加わることになりそうです。
・「ファンタム式パナ改 fetシリーズ」・・・無指向性 (WM-61A使用)
・「fet-uシリーズ」・・・単一指向性 (UEB-5361or5261使用)
この棲み分けが出来るようにこれから整理していきます。
どちらも内容はいわゆる「パナ改」=(パナソニックのECMをソースフォロワ改造すること)
をファンタム電源で動作させ、平衡出力するものですが、「パナソニック製」ではなく、改造でもない場合は「パナ改」とは呼ばないですね。
無指向性・単一指向性ともいずれ甲乙つけ難い優秀なマイクロホンですが使用するシチュエーションは異なります。
今回試作したfet-u1です (13φ台カプセル:UEB-5361使用)
全長は5cm、これでC-451B同等の音、ちょっとイイでしょ
今回使用のECMは山形県に工場を持つ(株)フォーリーフ というメーカーのものです。
10φ台のECMカプセルはUEB-5261、13φ台はUEB-5361という品番です。
【製作】
[1.材料・加工]
マイクハウジング用に適切な銅パイプを探したが適当なものがない、キャノンコネクタがそのまま挿せそうな水道配管用の部品「M150銅管ソケット15.88」というものを求めてみた。
長さが25mmしかないのでガスコンロの直火を使って縦に2個ロウ付け(半田)した。
同一サイズの銅または真鍮パイプが手に入ればいちばん良いのですが。
ミニルータ を使って長さ15mmの細溝を彫りこみ、ロック溝も彫ったらキャノンコネクタ(メス)が気持ちよいほどピタッとフィットした。ノイトリック、ITTキャノン、スイッチクラフト、他無名メーカ品ともきっちりロックし、勘合具合は問題ない。
材料および加工部分の写真です。(他の工作への応用も出来ると思います)
・ミニルータによる金属彫刻
・ガス直火によるロウ付け
ハードウェアのアンバラ/バランス変換AMP兼ECM電源部は「ファンタム式パナ改マイク」「fet Ⅱ」 、「 Measurement fet Ⅰ・Ⅱ」 のものを少しアレンジして収納した。
[2.回路図]
ひょうたんから駒のようなこのアンバラ/バランス変換AMPは fetⅡなど ECMをファンタムで動作させる仕掛けとして小型化と高音質化を進めた結果「Shinオリジナル」として実に各方面から高評価いただいており、シンプルですがどんな高級マイクの内蔵AMPにも負けない結果を出しています。
「基板を起こさないのか」「キット化してほしい」などのご意見まで頂いておりますが、これはあくまで厳選部品使用の手製ディスクリート回路、10mm×10mmのサイズをキープさせて必要な時必要なだけ作ります。
回路は公開させていただいており、再現性が高いのでそっくりそのままコピーして下さればあっけなく動作します。
但し、別のFET(耐圧の低い汎用FETでは動作しせん)を使われたり、カーボン抵抗や安いコンデンサ使用の場合、低いグレードに留まったり、その結果は期待出来ません。
製作は極めてミニチュアな精密作業となりますので慣れた方でないと実際には難しいと思います。
※この定数は変更された新しいものです
(ご注意)この回路定数は今回のECMに合わせて変えたものです。
したがってWM-61Aなど、パナソニックのECMカプセルを使った「ファンタム式パナ改マイク」
にはおすすめしません。
(ご注意)非業務用のマイクアンプやオーディオI/F、格安卓など低品質のファンタム環境での動作は保障できません。
Measurement fet Ⅱ ではハウジングへの収納に相当苦労しますが、このfet-u1 試作品ではややスペースに余裕があり、スムーズに出し入れ出来ます。
バラック試作例ではアース線がECM電極に硬く一体化されている為アース線の物理的共振音「ボンボン音」が耳につきましたが、細く柔らかいリード線(0.08φ7芯)に交換したら完全に止まった。
基板は「ファンタム式パナ改 Measurement fetⅡ」用です、負荷抵抗及びECM電源部の抵抗値のみ変更。
塗装前の様子です
黒色塗装の難しさはイヤという程味わったが、焼付け塗装を正式にやろうとすると専用塗料が必要であり、スプレー缶などはなく、最低4kg缶、そこまではいらない。
地金属と塗料の密着度を何とか上げようと入手したのが「ミッチャクロン・マルチ スプレー」という下塗り剤である。
結果は前回の「手作り音響機材 金属部分の黒色化(Ⅰ)」 の焼付け塗装と比較してもはるかに安定、定着した。
こんな出来栄えです (多少の工作キズはご勘弁)
13φ台、10φ台どちらのカプセルでも使えます。
結局AUDIXのM1245、1250あたりと同一サイズに出来上がっていました。
【4.結果・仕上がり】2010.09.26追記
非常に単純ですが、C-451の守備範囲をきれいにこなすマイクです。
9月26日、所属のビッグバンドでドラムのOverHeadに2本使用、金物系からタム、スネアー、JAZZでのKickまでをカバーし、シンバル・ハイハットの金物の響きの美しさとタイコ系の押し出しの強さはこのミニサイズ(短小サイズ)からは想像もできない程です、バンド用として2本すぐ作れという事になりましたが・・・
でも、OHの2本のマイクはドラムの一部として、ビジュアル的要素はかなり大切、
この短小サイズのOHマイクにはさすがに「見た目がネー」とドラマー氏・・・
同時に、出来たてのfet-uⅡを1本だけですが音質比較テスト行いました。
こちらは金物系がおとなしく収音出来る傾向、キャラクタの違いとしてどちらのマイクもドラムのOverHead用として十分な能力を持ちます。
【考察】
1.今まで単一指向ECMを甘く見ていたことを率直に反省、良いものと出会うチャンスがなかっただけです。
2.安定的にこれらのECMカプセルが入手可能となれば手作りマイクの世界に新たな可能性が開けてくれる大きな福音のはずです。
3.マイクハウジング(外筐)は「流用できる何か」出来合いのモノを見つける事が最も重要、これで7割は完成したようなもの。
「二種類の既製品を合体させ、ピッタリフィットする場合「手製感」は極端に薄れる」という
「Shinさんの法則」です
そして何を流用しても、さらに一手間かけてソレに見せず別物にしてしまうのがこのワザです。
(色かたち、材質と仕上げ、サイズ、ネジ部の相性や嵌合の可否 )そしてそれを組み合わせた立体完成想像図・・・そんな頭の体操。
そんな意味で100円ショップ、ホームセンター、大型文具店は素材の宝庫、ジャンルにこだわらず探す事です。
シャチハタのハンコや口紅ケースがマイクロホンハウジングになってもまったく不思議ではない・・・という発想がポイントでしょう。
でも、ポップガードをハエたたきでこしらえるのはちょっとネ・・・・
次回も「アッ」と驚くマイクを登場させます
乞うご期待!
モノ作り日本 もっと元気出そう
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【おことわり】
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