※ この記事は公開から13年以上経過していることにご留意ください。
2024年1月追記
マイクロホンクラフトで「単一指向性」マイクは無指向性と比較して格段に難易度が高くなりますがぜひ挑戦してみたいアイテムです。
このハードルは何と言っても「よいマイクカプセルの入手」と次にハウジングやクリップなど「外観構造(デザイン)」にあると言って差し支えないと思います。
特に「単一指向性のECMカプセルは一般にはほとんど手に入るアイテムではなく、性能に関係なく何か入手出来ればラッキーな話。
今回のマイク、ECMユニットはホシデンのKUB8223(千石電商扱い) です。
このマイクカプセルサイズは8φですのでWM-65AやKUB-7823など 6φのものと比較し、感度・SN比・指向性能ともに優れてはいるもののすべての性能が中途半端な感は否めない。
近々優秀なECMカプセルの入手を予定している為、すぐ応用が利くように、ワーキングサンプルではあるが、出来る限り手作り感を排除したマイクを試作することにしました、
※会議(スピーチ用)グースネックマイク
(今回の記事では特に「グースネックシャフト材料」の調達法にご注目ください)
今回、Shinさんが使った材料はほとんど簡単に入手できるものばかりです。
詳細な材料と加工方法は写真から推察していただき、基本的にはご説明はいたしませんのであしからずご了解ください。
マイク前面のパンチングメタルや装飾リング、フレキシブルシャフトに至るまで流用品及びShinさんオリジナルです。
(特徴)
①ECMカプセルKUB-8223の構造上カプセル改造が出来ないため、ソース接地・ドレイン出力となっています。(メーカー指定接続のままです)
②フレキシブルシャフトを他の構成金属と等電位になるような接地で静電シールドを完全に行いコモンモードノイズに俄然強く、誘導ノイズは皆無。
これは海外有名メーカーでも全く考えられていないものが散見される。
(「筐体のEMC構造技術」と呼べるアナログ技術です。)
③外観の手作り感排除との戦いは十分時間をかけました。
【スピーチ用(会議用)グースネックマイクの試作】
スピーチ用(会議用)単一指向性コンデンサマイク(ファンタム式)・・・ボディは黒色焼付け塗装、フレキシブルシャフト15cm)、
★やはり短い!
このマイクは性能的には問題ありませんが、シャフトの全長はストレート部・グースネック部合わせて40cm程度はほしいところです。
★色が・・・
XLRベースの色はやはり「黒」がいいのですが・・・
この2点は持ち越しです。
※今回はフレキシブルシャフト(細径)の調達方法に大いにご注目ください。
この方法が非常に現実的だという事を尽き止めました(下写真)
・水道配管用は、「蛇腹」・・・グースネックではない
・パーツショップやマイク用のグースは太すぎかつ高すぎ、されば・・・・
(フレキシブルシャフト材料の調達)
アキバ
のショップ店頭で結構見かけるUSB LEDライト、やUSB扇風機・・・と細フレキシブルシャフトの安価グッズが各種あり。
短かくてよければ100円ショップの「ミニ三脚」の一部製品はこの金属製フレキシブル構造だ。
(ただ針金が通っているだけのモノが有りますが、そういうのはパス)
上写真は切り出したフレキシブルシャフトに熱収縮チューブをかぶせたもの・・・白い印刷はアルコールやシンナーでキレイに消える。
※不平衡でマイクロホンレベルの信号をこのようなフレキシブルシャフトに収めると誘導ノイズに悩まされます。
フレキシブルシャフトの構造を写真でご覧ください。
これはEMC技術(=「電磁環境両立性技術」・・・分布定数の等価回路を描き、その中で予測・処理を行う)の上で問題アリ。
このように中心部はスプリング、その周りは装飾金属でコイル状になっており、シャフトにはシールド効果があまり無いばかりか、シールド線を通すとはいえ、この中を微小信号を通過させた場合コモンモードのノイズ誘起が起こる。
金属筒っぽくてもシールド効果が期待出来ないばかりか、別な等価回路とそれによる電気的現象を背負わされます。
2つの金属が密着しても高周波的には別回路を形成、これがノイズの源だ。
まず2つのコイルの両端を半田でショートしてバイファイラ巻きコイル成分をキャンセル。
ここを通すシールド線(1芯)はこのフレキシブルシャフトの両端GNDに落とした。
これで事実上、誘導を受けることはなくなった。
★この対策処理の出来ていないのがAKGとJTSの楽器用クリップオンマイク、いずれも条件次第で強烈なハムが出る、SCRノイズにもきわめて弱い。
一方、この事でよほど苦労したのであろうAT社は決してフレキシブルシャフト内を通さずケーブルは格好悪く外側をノタクッている、これはこれで理解できる正しい方法である。
以上で会議用単一指向性グースネックマイクの完成である。
[試しに・・・]
前に実験した「 1030 :WM-61A使用ファンタム式 ハイパー・カーディオイドマイクの実験」 の作例とハウリングマージンを比較してみた。
結果は無指向性で構成した「1030 :WM-61A使用ファンタム式ハイパー・カーディオイド・・・」の方がハウリングマージンがとれ、話者からの距離も稼げる、しかし・・・・音質の問題とデザイン上の問題で×ですね。
【雑感】
①スピーチ用マイクとてかなり複合したノウハウのかたまり、決して侮れるものではない。
②この手のスピーチ用途では、ハイパーカーディオイド(峡角度単一指向性)が最も向いている。
③しかし市販パーツとして入手可能な単一指向性ECMカプセルでダイヤフラム径10φ未満のものに期待できる性能のものはほぼない。
以上、音楽用マイクとは違った切り口であるが、要点さえ押さえればグースネックマイクのハンドメイドはこのようにして可能となります、ご参考あれ。
モノ作りニッポンもっと頑張れ!
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【おことわり】
★ここで公開している回路・写真・説明文などはアマチュアの方、音響家の方でハンドメイドまたは試験評価なさる場合の参考として考えております。
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