祖母は足に怪我をして、傷口から雑菌が入ったことがある。この時、雑菌の拡散・上昇を防ぐために心臓に近い位置にメスを入れた。この為、一生、ビッコを引いて歩行が若干、難しくなった。また、祖母の娘、すなわち母の姉は、4歳の時、矢張り怪我から苦痛を訴えたが、捻挫と誤診して温めてしまった。結果、侵入していた雑菌が増殖して、病状を悪化させて死に至った。
戦前の抗生物質が無かった頃は、ちょっとした怪我などで死に至る危機に遭遇していたのである。
幕末の開国以来、伝染病などが海外からやって来るようになった。下関でも度々、コレラが蔓延して人々が簡単に死んでいった。母親の話によると、コレラにかかったら生きている内に棺桶に押し込めるのが伝染病対策になっていたと言う。上手く棺桶から自力脱出して、手水鉢の水とか、そこら辺の川の水とか見境なく大量の水を飲んだ人が、けっこう助かったと言っていた。
また、母の子供時代の近所の友達も赤痢などで相当、死んでいったようだ。医学の進歩に丁度間に合った母親は89歳の現在もどうにか生きているが、何歳か違いで、生死を分けたことになる。
医学が秒進分歩で発展する現在から振り返ると、昔の人生は悲惨を通り越して喜劇にすら思える。
ところで、60年前まで我が家の常備薬として、ゲンノショウコやケシを極少量、自家栽培し、乾燥して暗所に保存し、必要な時に煎じて服用していた。ケシは当時すでに栽培が禁じられており、どうやって入手したかは今になっては不明であるが、先祖代々の伝家の常備薬として畑で栽培したのであろう。
参考
① 民間治療法
《ぜんそく》
グミの葉の陰干しを煎じて飲む。(秋根・内日)
《喉・百日ぜき》
アメ、黒砂糖をなめる。キンカンの煎汁、ショウガ汁の熱湯を飲む。黒豆、南天の実を煎じ、汁を飲む。オオバコの干したものにカンゾウを混ぜた煎じ汁を飲む。(旧市内・彦島・安岡・内日)
オオバコを煎じて飲む。(蓋井島)
食塩を紙などに包み、ガーゼ布などでノドに巻く。(彦島)(追加: 福江)
ノドにサロンパスを貼る。(蓋井島)
(「下関の民俗知識」中西輝麿著より)(彦島のけしきより)
② 民間治療法 その2
《シャックリ》
柿のへた、または種を煎じて飲む。(王司・長府・彦島)
砂糖、あめ、サイダーなどを飲む。(長府)
びっくりさせる。(全域)(追加: 福江)
《心臓病》
卵の油を飲む。(旧市内・彦島・内日)
サフランの汁を飲む。(内日)
(「下関の民俗知識」中西輝麿著より)(彦島のけしきより)
③ 民間治療法 その3
《肋膜炎》
彼岸花の根または水仙の根をおろし、飯粒で練り、布に伸ばして土踏まずに貼る。(安岡・内日)
マムシを蒸し焼きにして飲ませる。(安岡)
ミミズを煎じたものを解熱のために飲ませる。(王司・彦島・安岡・内日)
青ガエルの小さいのを生きたまま飲む。(清末)
マムシの生かし焼酎を飲ませる。(安岡)
墓の骨壷にたまった上澄みを飲む。(秋根)
《心臓・血圧》
カキの葉を煎じて飲む。(小月・安岡・吉母)
青ジソの焼酎漬に砂糖を加え、三ヶ月たったものを飲む。(小月・長府・内日)
卵の黄身の油を飲む。(旧市内・安岡・彦島)
(「下関の民俗知識」中西輝麿著より)(彦島のけしきより)
④ 民間治療法 その4
《盲腸炎》
フナかドジョウを三尾、梅干しまたは酢少々、麦飯茶碗一杯全部をよく混ぜ、よくたたき、すりつぶして、五時間くらい幹部に五日間貼り続ける。(清末)
《痔疾》
ニンニクをつける。(王司・彦島・内日)
ナスのヘタの黒焼きをつける。(王司・彦島・内日)
イチジクの葉で患部をなでる。(吉見)
卵を焼いて油をとり、肛門に差し込む。(蓋井島)
ゲンノショウコを煎じて飲む。(蓋井島)
風呂に入って温まり、指で何回も押さえる。(彦島)
灸をすえる。(彦島)
朝起きた直後の自分のツバを幹部につける。(清末)
《かっけ》
麦粉、小豆を煮て食べる。麦飯を食べる。朝露を踏む。(蓋井島)注: 正解、ビタミンBの補給
(「下関の民俗知識」中西輝麿著より)(彦島のけしきより)
⑤ 民間治療法 その5
《ねんざ》
スイセンの根、卵白、酢、メリケン粉を合わせてねり、布にのべて患部に貼る。(小月・彦島・六連島)
スイセンの根、ヒガンバナの根、またはクチナシの実をおろし、卵白、酢、メリケン粉を合わせてねり、布にのべて患部に貼る。(王司・長府・旧市内・秋根・内日)
ヤマイモ・メリケン粉を酢でねって貼る。(小月・王司・旧市内・内日・六連島)
もち米をつぶして貼る。(彦島)
《トゲ刺し》
飯のりを患部に貼る。(小月・彦島)
竹のトゲが刺さったときは、傷口にそば粉を練って貼る。(蓋井島)
(「下関の民俗知識」中西輝麿著より)(彦島のけしきより)
⑥ ゲンノショウコ(wikiより)
ドクダミ、センブリなどと共に、日本の民間薬の代表格である。江戸時代から民間薬として用いられるようになり、『本草綱目啓蒙』(1803年)にも取り上げられた。現代の日本薬局方にも「ゲンノショウコ」として見える。ただし、伝統的な漢方方剤(漢方薬)では用いない。有効成分はゲラニインなどのタンニン。根・茎・葉・花などを干し煎じて下痢止めや胃薬とし、また茶としても飲用する。飲み過ぎても便秘を引き起こしたりせず、優秀な整腸生薬であることから、イシャイラズ(医者いらず)、タチマチグサ(たちまち草)などの異名も持つ。
⑦ けし(豊橋市、参考)
セティゲルム(栽培してはいけない)
「けし」属植物には多くの種類があり、広く各国に分布して自生しています。しかし、「けし」の中でも、「ソムニフェルム種」及び「セティゲルム種」は「あへん法」により日本で栽培することが禁じられています。どちらも、4月中旬からつぼみが出始め、5月から6 月にかけて白、赤、ピンクなどのきれいな花を咲かせます。
知らずに栽培していることもあるので注意してください。
★ 日本では栽培が禁止されている種類でも、外国では観賞用に栽培することが許されている場合もあります。外国から輸入されてくる植物の種には、日本で禁止されている種類が混ざっていることもあります!
栽培してはいけないけしを発見したら、保健所までご連絡ください。