長江あたりからの稲作の伝播ルートに対して、男性遺伝子Y-DNA (旧表記O2)を持つ民族の分布、中国大陸南部と朝鮮半島の犬肉食文化、そして九州の豚骨、豚足、鶏足、馬肉、犬肉食(鹿児島県にエノコロ飯があった)の食文化がほぼ一致していそうだ。また、江戸時代の江戸から会津あたりの武士や町人などが犬肉を食べていたが、生類憐み令で禁じられた。インドのタミル地方については、現在の宗教的な理由によるものか、犬肉食はなさそうだ。
大野晋先生は「日本語の起源」のなかに「対応語と物の世界-稲作の始まり」という一項を設け、「農耕に関する言葉」を
として(参考)、朝鮮語との関連をも指摘している。
九州の久留米や佐賀あたりの方言(参考)と比較することにより、タミル語、日本語、朝鮮語の間にもっと多くの対応が見出せるかもしれない。また、この地域と同じく無アクセントである関東から会津あたりの方言も検討の必要がありそうだ(参考)。
ただし、大野晋先生の主張する説の言語は現在の日本語、タミル語、朝鮮語の主流にはなり得ていないようで、それぞれの主流の言語に引き込まれてしまい、稲作・農耕に関する単語が方言の中に残留した形になっている。日本語の主流は縄文時代からの男性遺伝子 Y-DNA(旧表記D2)を持った人々(縄文人や秦氏など)であった(参考)。
参考
① 「犬肉市場」、中国南部に行ってわかった実態
村田 らむ:ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター
中国国内でも玉林市の犬肉食に対しては非難が高まっているとのこと。渦中にいる地元の人たちの反応は…(筆者撮影)
旅の情報を知りたいときは、パンフレットやネットをのぞくのもいいが、やはりいちばん参考になるのは、その土地を訪ねたことがある人の経験談だろう。
丸山ゴンザレス氏などさまざまな土地に足を運ぶ旅人たちが執筆陣に並ぶ『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ【最新版】』の中から、今回は「中国南部玉林市の犬肉祭り」について一部抜粋して紹介する。著者は本サイトでも連載を持つ村田らむ氏。
中国の玉林(ユーリン)市で夏至の1週間、犬肉を食べる祭りがある。だが近年、ヨーロッパを中心とした国々からバッシングされている。僕としては非難する気はまるでなく、今のうちに見ておこう!!という気持ちで玉林市に向かった。
玉林市は中国の南部にある地域だ。緯度は沖縄より南、台湾と同じくらいの場所になる。かなり暑い地域だ。ネットで情報を調べてもほとんど出てこない。日本人はまず訪れない地域なのだ。もちろん日本からの直行便はない。
上海、桂林市経由で玉林市へ向かう
上海で乗り換えて桂林市へ行き、1泊する。桂林市は観光地として有名な場所だ。1番人気は漓江(りこう)下りだ。中国の山水画の世界そのものの風景を見ながらゆっくりと川下りする、とても優雅な船の旅だ。
中国の山水画の世界そのものの風景が楽しめる、漓江下り(写真:Yama / PIXTA)
僕は、さほど興味がなかったのだが、ガイドに「桂林に来て川下りしない。あなた初めて。絶対したほうがいいヨ」と強気で押されたので、体験した。確かに風景は雄大で気持ちよかったが、まあ10分もすると飽きてくる。
船の屋根に登って自撮り撮影をしているのは、カラフルな服を着込んだ中国のオバサマたち。日本の繁華街や観光地でもたまにお見かけする彼女たちが、やいのやいの騒ぎながら写真を撮っている。風情はあんまり感じなくなる。その間、子どもたちはどうしているかと言うと、客船のソファでつまらなそうにスマートフォンやゲームをいじっていた。どこの国も変わらないものである。
ちなみに桂林市でも犬肉は食べる。玉林市とは違い、冬の寒い時期に食べることが多いらしい。
桂林市から高速鉄道(日本で言う新幹線)に乗って玉林市に向かった。これがまたなかなか乗車するのが大変だった。ガイドに頼んでチケットを取ったのだが、かなり強面の駅員と面談しパスポートチェックをしてやっと駅構内に入れた。飛行機に乗るレベルの警戒だった。
中国の高速鉄道は速いので乗ってしまえば、すぐ近くと言われていたが、それでも4時間ほどかかる。ちなみに、中国の高速鉄道は、基本的に日本の新幹線よりも速い。時速300キロ以上の速度で移動する路線が多いのだが、南部は山が多いため日本と同じくらいのスピードだという。
新幹線だと東京―広島くらいの距離感だ。さすが大陸である。「中国の高速鉄道の車内はマナーがなっていなくて、ゴミだらけでぐちゃぐちゃだ」という動画を見たことがあったので、期待していたのだが、とてもキレイだった。
大声でしゃべったり、電話や音声チャットをしたり、パソコンの画面で大音量で映画を見たりゲームをしたりしている人はいたが、誰も気にしていないようだった。それらの行為は中国ではマナー違反にはならないようだ。多少騒々しいが、気軽でいい。
犬肉は日本で言えば「うなぎ」のようなもの
お昼頃に玉林に到着した。外に出ると、強烈な日差しに出迎えられた。緯度で言えば、沖縄よりも南なのだ。僕は帽子をかぶって街に出た。
玉林市は広西チワン族自治区という少数民族の現住地の1つだ。少数民族と言っても、玉林市の人口は500万人を超える。日本で言えば、福岡県レベルの都市だ。
ガイドと共に街に出た。玉林市は、亜熱帯地域であり、歩いているだけで汗がしたたり落ちる。いかにも南国なゆるい雰囲気が漂っている。街には信号はほとんどない。交差点でも自動車が好き勝手に曲がっている。バイクはノーヘルメットで、3~4人乗りが当たり前だ。バイクはほとんどが電動式になっていて、スーッとほとんど音を立てないで走る。ただみんな、ひっきりなしにクラクションを鳴らしているので、エンジン音が静かだというメリットは生かされていない。当然、渋滞になっているし、頭から血を流して泣いているオバサンもいた。
なかなかアジアンで良い風景だが、「犬肉祭り」が開催されている様子はない。イメージでは派手な看板が出て、犬の頭をガンガンかち割りながらバーベキューをしているイメージだったが、全然そんなことはなかった。
買い物をしていた中年のオジサンに話を聞いてみる。「犬肉祭りというのは開催されていないよ。夏至のシーズンには、犬肉を食べようって慣例があるだけだよ」とのこと。日本でいう、土用の丑の日にウナギを食べるようなものだという。ちょっとガッカリするが、実際、犬肉レストランはこの時期、大繁盛するらしい。
「普段から1〜2週間に一度は食べるよ。別に珍しい料理じゃない。長年の風習だったのに、急にインターネットでたたかれて困っているんだ」
インターネットにたたかれたせいで、犬の生体販売(生きた犬をオリに入れて売る)は政府からの要請で中止になってしまったそうだ。ちなみに韓国の犬肉市場も次々に閉鎖に追い込まれている。「犬肉を売るのも厳しくなっている。みんなピリピリしているから気をつけなよ」と言われた。
市場を歩いていると丸焼きになった犬肉を調理しているオバサンがいた。カメラを構えると、オバサン、鬼の形相で包丁を持って飛び出してきた。「また来たのか!! いいかげんにしないとたたき切るよ!!」と怒鳴る。切り包丁片手に怒鳴られるのはかなり迫力がある。料理されてしまってはたまらないので、ほうほうのていで逃げ出した。
気になる「犬肉レストラン」の実態
犬肉を調理している市場や屋台はたくさんあったが、どこもけんもほろろに断られた。動物愛護系の人たちが直に、そうとう嫌がらせをしたらしい。こっちは話を聞きたいだけなのに、残念である。屋台では、看板がわりにヤギやブタの頭を台に載せている。犬だけないのはむしろ差別じゃないかって思う。
ガイドに、「夜になったらいちばんにぎわっているレストランに行きましょう。写真もたぶん撮れるよ。それまでは観光しましょう」と言われた。観光といっても、玉林は見るべきものは特にない。台湾人が造ったという、やたらとでかい金ピカの大仏があるくらいだった。ただ、観光地でない普通の町並みというのも楽しかった。全体的にはのんきなアジアの都市だが、裏路地に入ると赤いペンキで国のスローガンが書いてある。
「富強、民主、文明、和諧・自由、平等、公正、法治・愛国、敬業、誠信、友善」と中国共産党が2012年以降広く宣言している「社会主義核心価値観」がでかでかと貼られている場所もある。ザ・共産国家!!という香りがしてよい。その横に、「淋病、梅毒治せます」なんてポスターなどが貼られているのもまた楽しい。
夜になって、玉林市でいちばんにぎわっているという犬肉レストランに行った。「第一家脆皮肉館」というお店だった。
玉林市で1番人気の犬肉料理店(筆者撮影)
昔は店名に“狗(犬)”の文字が入っていたのだが、時流にそって消したそうだ。夜といっても、南国なので夏至の18時くらいは昼間のように明るい。そのお店は交差点沿いに数店舗並んでいた。
確かにすごくにぎわっている。お店の前には、丸焼きになった犬肉が何体も吊るされ、何人もの職人が、でかい肉切り包丁でバンバン、肉をたたき切っている。
店内店外には100人以上のお客さんがいて、皆鍋をガツガツと食べている。小さな子どもを連れた家族、若いカップル、会社の仲間たち、と客層はそれぞれ。とても楽しそうだった。
メニューを聞くと、「汁あり鍋」と「汁なし鍋」の2種類だけと、とてもシンプルだった。ぶつ切りにした犬肉を甘辛いタレで絡めてある。スパイシーでおいしかった。ガイドも一緒に食べる。「う〜ん。桂林のがおいしいね。玉林は固いよ。あ、ここの部分おいしいよ」と言って、ひょいと肉片を渡してくれた。足の肉球だった。確かにコリコリしてうまい。現地の人に混じって犬肉料理を食べていると「ああ、地元に根づいた文化なんだな〜」と実感した。
レストランで話を聞くと、中国国内でも玉林市の犬肉食に対しては非難が高まっているらしい。
「季節ごとにいろいろな肉を食べる。犬はスタミナがつくって言われているから、夏や冬に食べる。もうずっと前から。ヨーロッパ人に文句言われる筋合いはないね。牛や豚だってかわいいし、かわいそうだしね。北京や上海の奴らは犬肉を食べる文化がないから、勝手に文句ばかり言うんだ。そして、愛護団体を名乗る奴らが、犬を運ぶトラックを襲って、犬を盗んでいった。それってもうボランティアじゃなくて、盗賊だよな?」
ボランティアたちは、犬を解放して育てるとして飼い始めたが、すぐに資金が尽きてしまったらしい。全頭、餓死してしまったと笑いながら教えてくれた。
夏の時期は牧場で育てた犬だけでは数が足りず、ペットの犬を盗んできて食べることもあると聞いた。その話も聞いてみた。
「最初はペット泥棒はよくないと批判が出た。だけど、犬を飼っている人たちは大体マナーが悪い。鳴かせるし、ふんもさせる。だからペット泥棒がさらってくれて、静かになってよかったとみんな喜んでいる。だから今は文句出ない」とのこと。めちゃくちゃな話ではあるが、クールな中国人っぽい考え方だとも思った。
② 日本と朝鮮半島の犬肉食文化(参考)
日本の犬肉食文化は無くなったが、かつて鹿児島にエノコロ飯(子犬の腹に飯を詰める)があった。現在の九州の豚骨ラーメン、豚足、鶏足そして馬肉などの料理はこれに似た文化か!
これに対し、朝鮮半島には犬肉食文化が健在である。
かつて江戸では武家も町方も、下々の食べ物として犬にまさるものはなく、とくに冬場は犬をみかけしだいに殺して食べたという(大道寺友山『落穂集』)。会津藩の江戸屋敷で、奉公人たちが犬喰いをしていた話も残っている。これら犬喰いの事例は、いずれも生類憐み令以前のことで、元禄時代以降、今日まで犬喰いの習慣は日本にはない。社会の価値観変化の一例である。
長江あたりから日本に渡来した稲作農耕民のルーツとして、男性遺伝子Y-DNA(ハプログループ、旧分類のO2)であった(厳密には呉系弥生人がO2b、越系弥生人はO2aである)。新分類ではO1b
これに対し、大野晋の日本語起源の一つとしてのタミル語を喋るタミル人も、旧分類ではハプログループO2であった。