前回再現した40フィート転車台を参考にして、今回からラウンドハウスの転車台を作っていく。

 

 

 

単なる両端切り詰めではない

 

 ラウンドハウスの転車台が36フィートだからといって、前回再現した転車台の両端を単純に2フィートづつ切り詰めるわけにはいかない。というのもクレードルの形状が両者で大きく異なるからである。

 

 資料としてラウンドハウス建設当時のイラストが2点残されているが、2点ともクレードルの上部が、ピットを覆うよう全面板張りになっている(図1)。一方で40フィート転車台の写真をみると、機関車周辺だけが板張りでその両脇からはピット内が見えている(図2)。つまり目指す転車台のクレードルは、天板を支えるための構造が異なるのだ。

 

(図1)完成間もない頃のイラスト

 

(図2)両転車台の相違

写真は1878年頃の新橋機関庫(金田茂裕氏所有)

 

 

 全面板張りということは、その場所に人が立ち入るため、その荷重に耐えうる頑強な構造でなければならず、前回再現した転車台のブラケット(ステー)の構造では不適合だ。

 

 

 

 

実例を探す


 そこで実在した全面板張りタイプの転車台の画像を探すと、1935年撮影の画像が見つかった(図3)。撮影時期からすると、ここで再現を目指す転車台より90年ほど後のものにはなるものの、人力で回転させているのでバランスト型転車台と思われ、そうならば前回再現した転車台と同形式となる。

 

(図3)目指す転車台のイメージ

(※)写真は1935年4月に撮影されたロンドンのキャノン・ストリート駅の転車台。機関車の車種はブルーマーで、その全長は明らかではないが、車輪のサイズがわかっており、そこから換算すると44.3フィートと推定できる。先端がピットからはみ出しているように見えるので、それを考慮すればその分サイズは小さい。

 

 

 この転車台の直径は定かではないが、クレードル上の機関車から推定すると約40フィートになる(図3)。これは前回再現した転車台とほぼ同径であり、ここから目指す36フィート転車台のサイズもイメージできる。しかし肝心のブラケット部分の形状は天板で隠れているためわからず、また別の資料が必要となる。

 

 

 

 

 

視点を変える

 

 このタイプの転車台が板で覆われている以上、内部が見える画像があるとは考えにくい。そこで視点を変えて、組み立て式模型で探してみる。模型であれば制作途中の画像の中に内部構造を写したものがあるかもしれない。

 

 するとイギリスの模型メーカー、キットウッド・ヒル・モデルズの製品に、同型の転車台があるのを発見した。この商品は7mmスケールなので、併記されてていた略図の寸法表記から換算して30フィート転車台となる(図4)

 

(図4)キットウッド・ヒル・モデルズ社の製品

(※)7mmスケールはいわゆるOゲージのことで、イギリスの模型では1/43.5サイズとなる。略図によればクレードルのサイズは214.6mmなので、実物は9.34m(30.63フィート)となる。

 

 

 これをみると、ブラケットは主桁同様の頑丈なものとわかる。また桁腹にはパーフォレイト加工(穴開き)が施され、重量が軽減されていることもわかる。この模型では主桁もブラケットもベニヤの1枚板で作られているが、実際はL字鋼やT字鋼で作られているのだろう。

 

 

 

 

実物で確認

 

 念のため、実物の資料を探したところ、運よく同様の転車台を見つけた。それは1927年に建造された旧国鉄武豊港駅(愛知県)の転車台で、現在は登録有形文化財として保存展示されている(図5)。直径はわずか24.55フィート(7.5m)という小径であり、貨車用だが、天板の半分ほどが外れており、そこからブラケットが確認できる。

 

(図5)旧国鉄武豊港駅(愛知県)の転車台

 

 

 ブラケットの基本構造は先述の模型と同様なので、模型を参考にしてよいことがわかった。これで材料がそろった。

 

 

 

 

 

 

次回はCADでの再現の前に、企画を少し中断してラウンドハウスの中間柱について語る。