【主桁部】
(図1-1)
左右2つの桁からできており、各桁の上方にレールが位置する。桁を構成する鉄材は、L字鋼を背中合わせにして鉄板を挟み込むことで、複合型のH字鋼の構造をしている。つまりL字鋼をフランジ、鉄板をウェブとする形である(図1-1)。
この工法は当時よく用いられたものだが、特にこの転車台で特徴的なのは、桁腹の縦材として用いられるスティフナー(stiffener)の形状である(図1-2)。ここではフランジのL字鋼や桁板との段差にぴったり沿うよう、巧みに曲げ加工が行われている。
(図1-2)スティフナー
通常こうした場合には、スティフナーを曲げず、桁板との隙間に鉄板を挟むことで対応する(図1-3)。想像するに、使用鉄材を減らしコスト削減するためか、あるいは重量軽減のためだろう。全28本すべてこの曲げ加工がされているのには脱帽である。
(図1-3)スティフナーの独自性
3Dモデリングに関していえば、クレードルで最も苦労したのがスティフナーである。中央の1本だけであれば一気に作ることができ、T字の断面をスケッチして、それをスイープ機能で接線に沿わせるだけだが、それ以外の6本はその方法では作れない。というのも下桁が斜めだからだ(図1-4)。
そこで、残るスティフナーは2つの立体に分けて作ることになる。1つ目の立体は桁板と接する部分、2つ目の立体が外側に張り出す部分で、それらをロフト機能で立体化した後、ブーリアン結合で一体化するしかない(図1-4)。
(図1-4)
この方法で厄介なのは、あらかじめ下桁とスティフナーとの交点の座標を調べる必要があることだ。そのためだけに新たなスケッチを描いて、交点の座標をメモするという手間がかかる。これが現在のFreeCADの限界だろう(※)。
(※)FreeCADにも複雑な形状を作る機能はなくはない。そのためにはアドオンという、カスタムで独自にプログラミングした機能を追加する必要がある。これにはプログラミング(Python)の技術が要求される。
【車框部】
(図2-1)
車框は計4個が主桁に取り付けられており、ピット内の円周レールに沿うよう角度が10.5°傾けてある。
3Dモデルでは、どの箇所も単純な形状のため簡単に作れるが、主桁に設置する際、10.5°傾けるため、正確に配置するのに手間がかかる。また図面のとおりに作ると車輪が線路からわずかに浮いてしまうが、これはバランスト型転車台では欠陥とはいえない(※)ので、このままでも間違いではないだろう。
(※)バランスト型転車台における荷重は、基本的に中央支承だけにかかる設計で、車輪にはほぼかからない。実際の動画では片輪もが回転しないままクレードルが動く様子が確認できる。もし片側に荷重がかかりすぎるとクレードルは人力では動かなくなる。
【中央部】
(図3-1)
中央支承にかぶさる円錐状カバー部とその補強材で構成される。補強材はX字型の縦壁材と上下2つの横材で構成されている。X材の両端は、桁との接合のため縦平面が広く設計されており、そこに計4箇所に8本のボルトで桁が固定される。横材2つは桁の上下フランジ内側に潜り込む形で固定される。横材の上部には中央支承のキャップ部(ベアリング)と接続するため、6つのボルト穴が開いている。
全体的な形状はやや複雑にみえるが、単純形状の複合なので3Dモデリングは簡単。押し出し機能と回転機能で各部を作り、ブーリアン機能で結合する。
【路面部】
(図4-1)
ほぼ木材だけでできており、両端には金属製の手すりが設けられている。床の両端は下からブラケットで支えられ、ブラケットの逆端はクレードルの桁板に固定されている。
3Dモデリングでは、最も作りやすく単純な形状をしており、ほぼ押し出し機能だけで作ることができる。設計図では単純に長い板材だけが横に並べられているが、実際にはそれらを繋げる横材(根太)が下側に使われるだろう。
次回は、再現した転車台を見ながら、ラウンドハウスの36フィート転車台に改造するポイントを探る。