未登記建物を売買することになった場合、
まずは登記記録を興すところから始める、という話はよくあります。
この登記記録を興す手続は、表題登記といって、
土地家屋調査士の先生のお仕事です。
建物の外観(広さ、構造、床面積、建築時期、等)や、
所有者(誰が建てたのか、等)について、
土地家屋調査士の先生が調査して、この表題登記を申請します。
その表題登記が完了した後に、
所有権保存登記をすることによって、
所有者に権利証(登記識別情報)が発行され、
その後、売却時にはその権利証を添付して、
売主から買主名義に所有権移転登記を行う流れとなります。
※この”所有権保存”登記や”所有権移転”登記は、司法書士の仕事です。
実務上は、所有権保存登記と所有権移転登記は、
連件で同時に申請することもあります。
さて、
所有権保存登記や所有権移転登記を申請する際には、
建物の評価額を課税価格として、登録免許税を納める必要があります。
一般的に、未登記の建物であっても、
固定資産税等は、ちゃっかり課税されているので、
通常は「評価証明書」を取得して、
(23区内の場合は都税事務所で取得します)
そこに記載された価格から登録免許税を計算して登記申請します。
表題登記が完了したばかりの建物については、
評価証明書に家屋番号が記載されていないので、
(1月1日時点で、登記記録が無い建物には家屋番号がありません)
実務上は、表題登記の申請の際に、法務局に、
評価証明書に「家屋番号を追記」してもらう運用となっています。
※土地家屋調査士の先生は、表題登記を申請するにあたり、
通常、所有権を疎明する資料として、評価証明書を添付しています。
で、先日、登記申請した案件では、
土地家屋調査士の先生から預かった評価証明書に、
「家屋番号の追記」が漏れていたのですが、そのまま登記申請してみました。
※評価証明書は、そもそも法定の添付書類ではありませんし、
建物の同一性については容易に判断できるはず、だと考えて。
(つい数日前に、表題登記を申請した案件だったので。)
申請から数日後、
法務局から電話がかかってきまして、
その際のやり取りは、こんな感じ↓でした。
法「申請された建物と、評価証明書に記載された建物と、
所有者(納税義務者)も床面積も違いますが、
いったいどういう理屈で同一建物だと判断したのでしょうか?」
私「表題登記の所有権証明で使用した評価証明書を、
そのまま土地家屋調査士の先生から預かりました。
法務局側で、表題登記の際の添付資料を確認すれば、
同一の建物かどうかは明らかですよね?」
法「通常は、家屋番号を追記してお返ししているはずなんですよ。
…調査士の先生が申出が無かったのかな…」
私「まぁ、そうなんでしょうけど…。
家屋番号の記載がなかったとしても、
司法書士側ではどうしようもないので…」
法「う~ん。そうですよね…。
でしたら、せめて、表題登記の受付番号は分かります?」
私「●月●日受付の●●●番です。」
法「では、法務局側で調べてみますね。」
どうやら、話の雰囲気からすると、
部署が異なると、確認の作業がかなり大変そうな感じでした。
※表題登記を審査する部署(表示係)と、
所有権保存登記等を審査する部署(権利係)は異なります。
ちょっと気の毒だったかな、と思いつつも、
数日後には、ちゃんと登記完了していました。
今度からは、未登記建物について、
土地家屋調査士の先生に表題登記をお願いする場合は、
「評価証明書に家屋番号を追記してもらう件」について、
念のため、事前にお願いすることにします。
※この”家屋番号を追記”してもらう作業は、
土地家屋調査士の先生から、法務局に対して、
わざわざお願いをしないと、追記してもらえないそうです。
本来なら、お願いされなくても、
法務局側で、当然に追記してくれれば済む話なのですが。
(あるいは、法務局側で、簡単に同一性を確認できるようにしてくれるか。)
※令和3年7月9日追記
⇒法務局による上記取扱(運用)は、管轄によって異なるそうです。
上記は、東京法務局の某出張所での話でした。
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司法書士 黒川雅揮
司法書士黒川雅揮事務所HP⇒http://k-legal.jp/