複数管轄にまたがる不動産を共同担保とする抵当権設定登記において、2箇所目以降の管轄に申請する登記申請については、登録免許税法第13条第2項(以下、「13条2項」とします)に定められている証明書を添付すれば、登録免許税が軽減されます。

 

本来の抵当権設定登記の登録免許税は、債権額の0.4%(債権額が1,000万円なら、登録免許税は40,000円)なのですが、この13条2項を適用すれば1筆1,500円の定額制になります。実務上、2箇所目以降の登記で13条2項を適用しないケースはほぼ無いと思います。

 

※13条2項は既存の抵当権に担保物件を追加する登記申請(抵当権の追加設定登記)の場合も適用できます。

 

 

 

では、13条2項の証明書とは具体的になんなのかといいますと、例えば以下のものが該当します。

 

 A:「登記事項証明書」(最初の抵当権設定登記の完了後に取得したもの)

 B:「前登記証明書」(不動産登記事務取扱手続準則第125条第2項)

 

※Aの「登記事項証明書」の代わりに「照会番号付の登記情報(登記情報提供サービスにより取得)」が使えるかどうかは、管轄によって取扱いが異なるようです。(条文上は、登記情報でもOKとは記載されていないため、とのこと。)

 

 

 

実務上は、Aの「登記事項証明書」が最も利用されていると思います。

まず最初の管轄での抵当権設定が完了したら、登記された内容を確認するために「登記事項証明書」は必ず取得するので、これをそのまま2箇所目以降の管轄の登記申請に添付するだけです。

 

ただ、全ての管轄の登記申請に「登記事項証明書」を添付する必要があるので、管轄が3箇所以上になってくると「登記事項証明書」を取得する費用と手間が気になってきます。

 

 

先日ご依頼いただいた案件では、申請すべき管轄が●箇所(3箇所以上)ありまして、これらに「登記事項証明書」で対応するのはちょっと…ということで、Bの「前登記証明書」を利用してみることにしました。

 

※実は…複数管轄の抵当権設定といっても、実際にご依頼いただくケースでは、申請すべき管轄は2~3箇所であることがほとんどです。私は、Bの「前登記証明書」なるモノの存在は知っていても、利用したこともなければ実物を見たこともありませんでした。(何人か同業者に聞いてみたのですが、実際に利用したことがある人は●人中1人だけだったので、私だけが未経験だったわけでもなさそうです。)

 

 

該当の条文は以下のとおりです。

 

(前登記証明書)

第125条 同一債権を担保する抵当権等に係る登記を既に受けた旨の記載のある登記事項証明書は、これを税法施行規則第11条の書類として取り扱うものとする。

2 抵当権等の設定等の登記を最初に申請した登記所に、その登記の申請と同時に申請人から別記第90号様式による申出書の提出があった場合には、登記官は、税法施行規則第11条の書類として、登記証明書を交付するものとする。

3 前項の登記証明書の作成は、申出書の末尾に、証明する旨及び証明の年月日を記載し、登記官がこれに記名し、職印を押印してするものとする。

 

別記第90号様式はこちら↓

 

この様式の「申出書」に必要事項を記入して(2件目以降に申請する管轄分の枚数を準備します)、最初の抵当権設定登記の申請と同時に法務局に提出するだけです。登記が完了したら、完了書類と一緒に郵送してくれました。

 

はじめて利用してみましたが、これは便利ですね。

 

 

※この「前登記証明書」は、あくまでも13条2項の証明書として利用できるものです。複数管轄にまたがる共同根抵当権設定登記の場合は、”最初の管轄で登記された内容の証明”まで必要なので、この「前登記証明書」だけでは足りません。ご注意ください。

 

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司法書士 黒川雅揮

司法書士黒川雅揮事務所HP⇒https://k-legal.jp/

 

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