神奈川県立がんセンター問題から その1 | 不可能をかのうにする かのう重雄 オフィシャルブログ「一つ、ひとつを重ねて」 Powered by Ameba

神奈川県立がんセンター問題から その1

神奈川県立がんセンター問題から その1

 

年末より神奈川県立がんセンターから放射線科医師が退職し、がん重粒子線治療の新規患者が激減しているという事態が報道されてきた。

 

以前、神奈川県立がんセンターでは放射線腫瘍科部長として、東海大学医学部放射線科准教授であった中山優子医師が紹介されていた。

 

1219日の新聞には、放射線科医師の6名のうち4名が退職意向を示したとあった。

https://mainichi.jp/articles/20171219/ddl/k14/040/260000c

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201801/CK2018012502000117.html

https://www.tbsradio.jp/217509

 

退職の理由はパワハラに対する対応不信が原因とあったが、医師同士の対立という報道もある。2月3日、土屋了介神奈川県立病院機構の理事長は、大川伸一がんセンター病院長を更迭するとした。

 

大川院長は、土屋氏がパワハラをしていると主張し、土屋氏は「(辞めると言っている4人の医師とは)ヒアリングだけで、直接接したことがない」として、全く身に覚えがないと説明している。(大川氏は横浜市立大学医学部出身)

https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/583918/

http://kcch.kanagawa-pho.jp/general/outline.html

https://www.asahi.com/articles/ASL232VXRL23UBQU004.html

 

さらに、神奈川県の調査が事実と異なるとして、土屋理事長は反発し記者会見を行っている。

 

土屋理事長の主張だが、2014年に神奈川県立病院機構に就任した後、厚労省が重粒子線治療の施設基準としている施設責任者としての療養期間を中山医師が満たしていなかったことを知り、中山医師が資格をとれるように放医研の研修を命じたという。

 

一方、中山医師はこれに納得せずに退職したと説明している。報道によると、土屋理事長は「14年に神奈川県立病院機構に赴任した時、横浜市大幹部から『いろいろと経緯があって、先生には協力できない』と言われた」とあった。

https://www.asahi.com/articles/ASL232VXRL23UBQU004.html

http://news.livedoor.com/article/detail/14263480/

 

2003年、横浜市立脳血管医療センターでは、横浜市立大学医学部出身の脳外科医により内視鏡的血腫除去術が施行され、50歳の女性が重度の障害を起こし死亡した。

 

彼らがこの手術を行うには、以下のような重大な問題点があった。

1.執刀医達は院内の倫理委員会に新しい手術方法(内視鏡手術)を行うことを通さなかった。②インフォームドコンセントが不十分であった。③執刀医達は経験がゼロだった。

 

横浜市は、その深刻な問題点を指摘した 脳卒中診療部(当時)の医師らをチーム医療ができないなどと批判。

 

また、内部抗争があるなどと話をすり替え、結局、医療事故を起こした横浜市大医学部脳外科の元教授をセンターのトップにし、指摘した医師らをセンターから追い出している。

 

横浜市の事務職幹部が、 “最高の医療を目指す” と言ったところで、それは無理な話だ。医療を行うのは医療従事者であり医療の質を判断するのは患者である。

 

これが、病院側に軸足を置き続けてきた横浜市医療政策の事例の一つである。

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12002018365.htm

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-11849489894.html

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-12270336271.html

 

2月5日には、康井制洋副理事長らが県庁で記者会見を行い、土屋氏の解任を求める声明文を発表。

 

2月9日の県定例会、黒岩祐治知事は本会議の説明で、放射線専門医が相次いで退職の意向を示した県立がんセンターを運営する県立病院機構の土屋了介理事長について、解任手続きを進めていると報告した。

https://mainichi.jp/articles/20180206/ddl/k14/040/246000c

https://mainichi.jp/articles/20180210/ddl/k14/010/198000c

 

土屋理事長はその後、神奈川県立病院のずさんな経営実態をメデイアで発信している。驚いたことに、ここにも横浜市や横浜市大のことが言及されていた。

http://news.livedoor.com/article/detail/14304495/

 

3月7日、県は土屋理事長を解任したと発表。一方、土屋理事長は9日に記者会見を開き、県を相手取り解任処分の取り消しを求め提訴する考えを明らかにした。機構幹部ら6人に対しても名誉毀損などにあたるとして訴える方針を発表した。

 

しかし、解任した県も、解任声明を行った副理事長らも、パワハラを主張した大川がんセンター病院長も、県民が納得できる正当な理由を示すことができないならば、それなりの評価を将来的に受けることになる。

 

特に経営がずさんでないことを県民に数字で示さなければならないから大変であろう。理事長が提訴に踏み切った以上、影響は大きい。

https://mainichi.jp/articles/20180308/ddl/k14/010/016000c

https://mainichi.jp/articles/20180310/ddl/k14/040/301000c

http://medg.jp/mt/?p=3210

 

さて、土屋了介医師といえば、元国立がんセンター中央病院の院長で、横浜市立大学医学部長黒岩義之医師(東京大学医学部出身)の不可解な解任騒動の原因の一端としてその名前は記憶にあり、私のブログでも言及させて頂いたことがある。

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-10874422551.html

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-11240895367.html

 

横浜市側の解任の理由として、本多常高理事長(元横浜市副市長)への背信行為や大学への信用失墜行為があったと主張しているものの、市側の主張の具体性が極めて欠落していたことは印象的であった。

http://www.kanaloco.jp/article/31088

 

一方、黒岩義之氏の言及は極めて具体的であったと思う。以下、参照。

“私は今年の128日、本多常高理事長と布施勉学長に突然呼び出され、「医学部長を辞任してほしい。応じなければ解任する」と告げられました。

 

その理由は、「理事長後任人事をあちこちで話していることが調査の結果、分かった」というものでした。「全く身に覚えがない」と反論しましたが、学長は証拠を示さないまま、「私たちはあらゆる証拠をつかんでいる」とただ主張するばかりでした。

https://ameblo.jp/shigeo-kanou/entry-11240895367.html

 

また、一連の報道をみていると、12年前の横浜市立脳血管医療センターの医師退職を思い出す。興味深いのは記事に言及されていた大川伸一がんセンター病院長の報告である。

 

「医師派遣を求めた群馬大と東京大学から『土屋理事長が怖いので、辞めないと人は出せない』と言われた」とあった。群馬大側はこれを否定したという。

 

これは、横浜市立脳血管医療センター医師退職時に、横浜市病院経営局が脳卒中診療部の医師らを批判していた内容に非常に酷似している。

 

具体的な事例を正確に示さず “怖い” という表現を安易に使用して、人を批判するという稚拙な手法が、神奈川県でも行われていることは非常に残念である。

 

神奈川県立がんセンターの騒動は、暫らくおさまりそうもないようだ。