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売れないのは“伝えて”いないから…?売上拡大が行き詰まる意外な理由

☆☆ レポート概要 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

【1】せっかく“紹介”したのに失敗?
【2】届いたのは“値段表”だけだって…?

【3】顧客の“知りたい欲求”軽視は非常に危険!

【4】“伝える”かどうかが業績を左右する時代

【5】必要なのは“説明資料”の完備だった…!


【1】せっかく“紹介”したのに失敗?


1》防犯時代の画期的な“ガラス”
 住宅などの窓ガラス販売と工事を請け負うK社では、最近、
割れない防犯ガラス
が良く売れていると言います。外部からガラスを割って侵入しようとしても、なかなか割れないガラスなら泥棒もあきらめ、防犯効果があがるからです。治安が悪化する一方の今日、侵入犯への防衛も、大切なリスクマネジメントかも知れません。
 そんなK社の社長の話が頭にあったため、逆に、ちょっとしたトラブルに巻き込まれてしまいました。そんなトラブルに、
現代の中で非常に重要になりつつある“経営課題”
が潜んでいるように感じますので、ご報告したいと思います。

2》“軽い気持ち”で紹介したのだが…
 さて、K社の“割れないガラス”が、食品販売のH社で話題になりました。話題のきっかけは、H社の社長宅付近で最近泥棒が入ったということでした。泥棒は電柱から2階へ登り、ベランダのガラスを破って侵入していました。その後、特に社長夫人がパニックになって、怖くて夜も眠れないというのです。
その時、ふとK社の防犯ガラスの話を思い出し、それをそのまま食品販売のH社長に伝えました。するとH社長は、驚くほどの勢いで“乗って来られた”のです。そして、
すぐにK社を紹介してくれ、いや紹介ではなく、むしろ
見積もりを出すように依頼してくれ
という話になりました。そして自宅の図面まで送って来てくれました。見積もりには窓の大きさと数が必要だったからです。

3》ガラス店のK社の対応
 その後10日ほどして、食品販売のH社長から電話をいただきました。ところがその内容は、
ひどい会社だねえ。K社は。どういうつもりなのかねえ
とご立腹のようなのです。
 いったい何があったのでしょうか。もしも深刻なトラブルならいけないと思い、電話をいただいた日の夕刻、H社長を訪ねることにしました。するとH社長は、訪問に恐縮しながらも、1つの封書を出して来られました。


【2】届いたのは“値段表”だけだって…?


1》お見積書…
 封書の中には、株式会社Kガラスが作成した“お見積書”が入っていました。きちんと製本はされていましたが、手紙やコメントはなく、そこにはただ数値が並んでいるだけです。
 その見積書には、
防犯あわせガラス 6.5平米   589,064円
シーリング計           71,280円
既存ガラス撤去及び廃材処理費  120,000円
運搬諸経費            75,000円
計            855,344円
とあります。
 『確かに、これだけでは不親切ですよねえ』と言うと、むっとしながらH社長が話し始めました。

2》説明不足は不誠実!
 『ガラス工事屋だから営業方法を知らないのかも知れないけれど、まず“防犯あわせガラス”って何だい。パンフレットも説明書も、どこのメーカーのものかも何も書いていない。これでは、うちが、“野菜一式5万円”って売るのと同じことだ。それでは通らないでしょう』というわけです。もっともな話です。
 『しかも先生の紹介だから、まだ安心できるけれど、普通ならこのKガラスってどんな会社なのか、何をしている会社なのか、まるで分からないでしょう。商品説明だけではなく、会社の自己紹介もないのですよ』と、社長の顔は徐々に“怒りモード”に変化し始めています。

3》ホームページでもあれば…
 そして『まだ、封筒に自社ホームページのアドレスでも印刷してあれば、何も資料がなくても、色々確認の手段もあるけれど…』と言いながら、H社長は、
販売のプロとしての見識
を披露してくれました。
 それは、詳しい説明をしなければ、信用が得られないだけではなく、説明を怠れば顧客は金額に不満をぶつけることになるという、やや深い話でした。それは…。


【3】顧客の“知りたい欲求”軽視は非常に危険!


1》私ならこうする
 食品販売のH社なら、まず①1枚の手紙をつけ“弊社は○○市で昭和○○年からガラス工事をしています”と簡単な自己紹介をするそうです。これだけで、受け手の安心感が違います。
 更に、②防犯ガラスのパンフレットを入れ、たとえば、
③通常ガラスなら35万円、防犯ガラスは59万円
と、既存の商品との比較を明記するのだそうです。顧客は、突然59万円と言われることには抵抗がありますが、既存商品との比較から解説すると、その価値を理解しやすいからだそうです。
 更に既存ガラス撤去や運搬諸経費など、ユーザーに分からない項目は記載せず、
当日工事4人(一人当たり○万円)、
工事代○万円、廃材処理費○万円
などと“④ユーザーの常識で分かる用語”を使い、コメントとして、4人出なければ一日で終わらないこと、廃材処理には処理業者への支払いが発生することなどを伝えるのだそうです。

2》古い時代の名残
 まだ経済が右肩上がりに成長していた頃には、モノや作業には“定価”がありました。またガラス屋と言えば、とにかくガラスを入れてくれるプロとして任せておけばよく、今日のように防犯やデザインガラスなど、それほど多様に考える必要はなかったのです。そして、地域の企業なら、信用を害するようなことをするはずがない、という“暗黙の了解”もあり、手紙やコメントをつけたり、パンフレットを入れたりすると、逆に、
営業熱心な企業で、うさんくさいなあ
などと思われたものなのだそうです。
 それでKガラスも、今までどおりのやり方をしたのでしょう。

3》“時代変化”に気付くべき時
 しかし、ゼネコンからの仕事が減って、経営不振の一歩手前にあるK社と、この時期に勢いに乗って成長している食品販売のH社では、商品や販売に関する“説明の丁寧さ”について、大きな意識差があり、その意識差が、どうやら現実の業績差にもつながっているようなのです。


【4】“伝える”かどうかが業績を左右する時代


1》正確な“情報”なしには“納得しない”時代
 以前の“ガラスはガラスでしかない”時代とは異なり、今は防犯ガラスや紫外線カットガラス、あるいは防火ガラスなど、様々に商品が複雑化しています。そのため、
ユーザーは商品に関して詳しい説明を求める
のが普通になりつつあるのです。
 買い物をする前に、インターネットで綿密に商品情報を入手する人も増えて来ていますし、“価格相場”までも事前におさえているユーザーも少なくありません。
 この傾向は、購買意欲の強い富裕層に顕著で、“複雑化”は研究熱心な富裕層を非常に際立たせているのです。逆に、情報に無関心な層は購買意欲も乏しく、なかなか顧客になりません。

2》“信用”を“説明力”ではかる
 しかも、企業規模やブランドなどの“安心材料”が、必ずしも絶対でなくなった現代では、『この売り手を信用してよいのか』という“証拠”のようなものを求める傾向を生みます。きちんとしたホームページや会社案内、あるいは信用できる先からの紹介などが、益々求められるようになったのです。
 つまり、Kガラス社に欠けていたのは、
①商品の内容を詳しく顧客に伝える
②自社の信頼性を顧客に感じさせる
③高額でも価値があると分からせる
という3つの“努力”だったと言えそうなのです。
 H社の社長は、『商品の魅力』『自社の信用』『価格正当性』を伝えられなければ、売れないのは当たり前だとも言っています。

3》思い切ってK社の社長に話してみた…
 H社長の話には納得性の高い部分が少なくありませんでした。その上“K社を紹介”した手前もあり、思案のあげくではありますが、翌日Kガラス社の社長に、電話ですべてを伝えました。
 その際、H社が最近どんなに成長しているか、H社長がどんな人物かなども詳細にお話し、できるだけ真意が理解されるように努めたのです。『伝える努力』を幣事務所もしてみました。
 しかし、その日はK社から何の反応もありませんでした。


【5】必要なのは“説明資料”の完備だった…!


1》お礼の電話
 数日後、Kガラスの社長から、お礼の電話が入りました。『あれから早速H社長に電話をしたら、訪問するより資料をくれ、と言われたので、言われるままに資料を整理しました。整理していて“なるほどなあ”と思いました』と言うのです。
 KガラスがH社長のために資料をまとめるうちに、
なんだ“顧客”はこんなことを知りたいのか
と気付いたからです。資料と言っても特別なものではなく、商品や料金体系を“素人向けに説明”したものに過ぎないのです。
 Kガラスの社長は『今まで顧客にきちんと説明しようという意識がなかった。ゼネコンに言われるままに仕事をしていた。それではダメだし、説明の資料さえ揃えれば、自社でも十分顧客開拓ができることに気付いた』と言っておられました。

2》情報化時代は“伝える”べき時代
 現在、元気な企業は、そのほとんどが、
ホームページやパンフレット、
提案書やダイレクト・メール
など、様々な形で自社の商品や信用力を顧客に“理解させる”努力に挑戦しているようです。
 もちろんそれが“過度の宣伝(つまり嘘や誇張)”になってしまったのでは、逆に信用を失いますが、
伝えるべきことを伝えなければ、顧客はかえって怒る
ことが少なくないのです。
 今回のH社長も、紹介という形がなかったならば『この会社はダメだ』という烙印を押して、K社と取引をしていなかったでしょう。そうなれば、K社は理由も分からぬまま、良質顧客を失っていたことになります。

3》幣事務所の反省
 ただ、こう申し上げる幣事務所も、私たちが何をしているか、私たちの業務にどんな意味があるかを、皆様にきちんとお伝えできていたかどうか問題かも知れません。これを機会に、幣事務所も“適切にお伝えする”努力を、更に重ねてまいりたいと考えています。


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“明日”の答は“昨日”にある?過去をどれだけ“数値”化したか!

☆☆ レポート概要 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

【1】名物“ゲタ履き先生”が遠い過去に教えたこと
【2】3つの種類の“先読み”視点

【3】“ゲタ履き先生”の見解は今も通用するか?
【4】“観察・分析”だけでは失敗するケースも…
【5】“過去分析”が万能なわけではないのだが…


【1】名物“ゲタ履き先生”が遠い過去に教えたこと


1》“ゲタ”先生の講演
 まだ日本経済が高度成長を始めたばかりの頃、ゲタ履きで講演をする経営コンサルタントがいたそうです。その先生は、姿ばかりではなく話の内容もかなりとっぴで、公演中にいきなりゲタを放り出して、
『おい、明日の天気を言ってみろ!』
などと受講者に迫るのです。
 受講者がざわざわしていると、『なにを騒いでいるか。君たちこそ毎日こんなことをしておるんじゃ!』と叱ります。

2》“ゲタ”を放り出す真意
 ゲタ先生の真意は“天気予報”と“あ~した天気になあれ!”という、天候のゲタ占い?の比較にありました。
 当時の天気予報は今ほど当たりませんでしたが、それでもゲタ占いよりはるかに確率は高く、更には台風予想や大雨警報などの情報を提供する重要な役割を果たしていました。
 ゲタ先生によれば、その天気予報のほとんどが、
過去の気象や現象の徹底した分析=過去分析
をベースにしていると言うのです。そして、『それにひきかえ、あなた方は成功しても失敗しても、その経緯や過程をすぐに忘れて明日に向かう。そして、明日が見えないから、今度は神頼み新聞頼みで外部から情報を集めようとする。ゲタで天気を占うのと同じだ…』という説教が続きます。

3》自分の過去を徹底して分析しろ!
 その説教は『今まで自分の会社がしてきたこと、自分自身がしてきたことを徹底的に分析しろ。明日はその分析から見えてくる』という言葉に続きます。
 天気予報が過去のデータをとり、それを徹底的に分析した上で、現在の状況と類似する“過去”を見つけ出し、その過去がどう展開したかを観察して、
明日の天気を推察する
ように、経営の次の一手を見つけ出すべきであって、次の一手の答えを誰かが教えてくれると思って探してはいけないと、ゲタ履き先生は言うわけです。今日はこのテーマをとりあげます。

【2】3つの種類の“先読み”視点


1》第一の先読み:近々の先読みは過去分析で十分
 ゲタ履き先生は、まず天気予報と同じように、
毎日経営観察して記録して行けば明日の事業は予測がつく
と言いました。気象が決してある日突然に変わるものでないように、経営の成果、つまり活動の蓄積も、日々の日常の積み重ねから生じるものだからです。
 先生の持論では、四半期つまり三ヵ月程度の先行きなら、過去の分析だけで分かる、のだそうです。天気予報の明日は、経営では3ヵ月に相当するというわけです。
 それは逆に、今必死になっても、その効果が出るのは四ヵ月先以降ということと同じで、経営がいかに“長期的視点に立つ”べき活動であるかを認識させるものでもありました。

2》第二の先読み:中期的な読みにはセンスが必要
 しかし気象で週間予報がよく外れるように、一年先を見通すのは過去の観察だけでは果たせません。過去を観察して、それを一週間先に適用する“分析力”や“応用センス”が必要になるのです。
 こうした応用センスは、ゲタ履き先生によれば、体験的に身に付けていくしかないのだそうです。毎年、行動計画を作り、それを実行しながら、何があたり、何が外れたかをきちんと分析する、あるいは誰かに分析させることを繰り返して、はじめて身に付く力だと言うわけです。
 当時現役だった野球の長嶋茂雄選手を引き合いに出し、
『長嶋でもいまだに練習を怠らないのに、なぜ研鑽を積まずに経営できると思うのか…!』
と、ゲタ履き先生は叱ったものです。

3》第三の先読み:長期的な読みには独特の研究が必要
 更に長期的には、気象でエルニーニョ現象とか偏西風の蛇行など、専門的な見識がなければ分からないことがあるように、経営でも独特の研究が必要になるのだそうです。
 ゲタ履き先生は、まず上記の年間の業績を読むことから始めれば、経営基盤形成が可能だとし、経営上のエルニーショ現象的な話などには多くの時間をさいてはくれませんでした。


【3】“ゲタ履き先生”の見解は今も通用するか?


1》広告代理店のF社の自信
 確かにゲタ先生の指摘は、今もあてはまる部分があるようです。まさに広告代理店のF社の事例が、それを物語っています。
 F社は、あるピザチェーンから依頼を受け、葉書やポスティングによる顧客集客を引き受けました。『とにかく売上を2割アップしたい』というのがチェーン店の願いだったのです。
 F社の企画員は、まず
ピザの日々の販売記録を徹底して調べること
から始めました。ピザ販売の経験がなかったからです。しかし調査の結果、いくつかの法則のようなものを見つけ出します。

2》ピザの売れ行き法則
 法則の詳細は申し上げられませんが、たとえば“初めて注文をした月に、もう一度注文する客は、2ヵ月から3ヵ月はコンスタントに注文して、いわゆるリピーターになる。しかし3ヵ月経過して注文をしなくなったリピーターは、その後半年以上注文しない”ということや、“金曜日の夜にピザの割引券を配布すると、土日の売上が伸びる”などの“傾向”があるわけです。
 過去を分析して“傾向”をつかみ出せば、
顧客の行動を先読みできる
のです。そして顧客の行動パターンに先手を打って広告すれば、リピーターが増えるとともに、3ヵ月で去りかけるリピーターに特別な広告を出し、再び活性化することもできたそうです。
 確実に売上が伸びて行きます。

3》何をすればよいかが分かるのは“喜び”?
 ピザチェーン店の店長会議では、
売上が伸びたこともさることながら、何をすれば売上が伸びるかが分かって、店の経営自体が楽しくなった
という声が増えました。
 ただがんばれがんばれという精神論ではなく、何をするかの戦略感覚が生まれるし、今月のDMがどのように成功したかを観察して分析すると、ゲーム感覚で取り組める上に、様々な新しい発見があり、その発見がまた新しい戦略をイメージさせてくれる、と非常に評判がよかったそうです。


【4】“観察・分析”だけでは失敗するケースも…


1》逆の現象が経営現場で頻繁に起こる?
 一方J社では、毎月決まったように資金ショートが発生していました。いつも月末に資金繰りの精査をするのですが、給料支払い期日の25日には、
想像以上の不足感
が出てしまうのです。なぜそんなことになるのか、J社の社長は頭を抱えていました。
 しかし、その原因は、J社の社長が“笑い話”と言い切るほど、初歩的な勘違いだったそうです。

2》日々管理をしていない
 J社の経理担当者は大のパソコン好きで、資金繰り管理にも独自の計算式を作っていました。そして、月初の報告時に、
パソコンから印刷したシートで資金繰りを報告
していたのです。
 ところが、その“パソコン計算式”は、やや乱暴で、
10日の取引先への支払い(負債)
25日の従業員への給与支払い(負債)
月末の売掛金回収(資産)
を、日付を無視して差し引き計算していました。
 仮に、10日の支払いを300万円、従業員給与総額を500万円、月末の売掛金回収を900万円だったとすると、パソコンシステムでは、当月の必要資金を、
300万円+500万円-900万円=-100万円(100万円余剰)
と計算していたということです。
 これでは確かに、毎月月末に900万円が入るまで、800万円の資金ショートが発生することになるでしょう。

3》笑えない笑い話
 もちろんJ社のような“明らかなミス”は、深く考えるまでもなく発見できますが、『昔のどんぶり勘定だったら気付かなかっただろうね』と社長は笑っておられました。
 そして今でも、十分に管理の目が行き届いていないところでは、同じような“笑えない笑い話”が残っているのではないかと、厳しいチェックに乗り出しているところだそうです。


【5】“過去分析”が万能なわけではないのだが…


1》“ゲタ履き”先生の限界
 私たちに様々な教訓を残した“ゲタ履き”先生も、オイルショックからバブル崩壊にかけての
経済全体の大きな構造的変化
自体を、過去の分析から予測することはできませんでした。そして徐々に、忘れ去られていったのです。
 もちろん先生も『過去分析からだけでは大変革時には役立たない』と繰り返していましたが、こんなに急速に世の中が変化するとは思わなかったようです。
 しかし大変革?も徐々に落ち着きを見せはじめ、どちらかと言うと再び日常的な日々が始まった現代、“ゲタ履き先生”の復活があってもよいのかも知れません。

2》今先生が復活したら…
 そしてもし今“ゲタ履き先生”が復活したら、3つの経営方針の話をすると思います。
 その第一はやはり“①日々の事業観察や記録を怠らないこと”でしょう。記帳や業務日誌は決して形式だけのものではありません。そして第二は“②あたっても外れても、短くとも向こう1年くらいの先読みの習慣をつける”ということだと思います。
 先々を読む習慣を持つケースとそうでないケースでは、経営の確かさに差が生まれてしまいます。しかし、最も重要なのは第三の方針かもしれません。

3》“反省”を繰り返せ!
 ゲタ履き先生は、強い囲碁士や将棋士が、自分の勝負を何度も何度も反省して、どうすべきだったかを考え続けるように、①の業務観察の上に立った②の予測を“反省”し、何があたり何が外れたか、その原因は何かを徹底的に追究することを勧めていました。それが“経営勘”を磨く最良の方法だというのです。強い勝負師が徹底した反省から生まれるように③打った手の適切性の反省蓄積が、強い経営者を作り上げるというわけです。
 先行き不安が拡大する今こそ、“過去分析”のパワーを見直すべき時期なのかもしれません。


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アウトソーシング流行の裏に潜む現代経営に不可欠な3つの“自問”

☆☆ レポート概要 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

【1】アウトソーシングとは本当のところ何なのか
【2】部品外注から“システム・ソフト”の外注へ
【3】“自前”にこだわって倒産したA社
【4】A社が痛感した3つの“もしも”
【5】現代経営に不可欠な3つの“自問”


【1】アウトソーシングとは本当のところ何なのか


1》なぜ“アウトソーシング”が注目されるのか?
 アウトソーシングとは、ご承知のとおり『業務の外部委託』です。たとえばデパートが買い物客に商品を届けるような際、自社内に運送部門を持たず、外部の大手運送企業と提携をするようなケースで、
運送部門をアウトソーシングした
ということになる訳です。
 しかしそんな外部委託であれば、遠い昔から誰もが考えていたことであるような気がします。ホテル業はその初期から、リネン洗濯などの業務をアウトソーシングしていました。それなのになぜ、今、アウトソーシングが注目されるのでしょうか。
2》注目の発端はパーソナル・コンピュータだった…?
 1980年代からコンピュータは小型化し、マイコンとかパソコンとか呼ばれながら、家庭やオフィスで普及を始めました。そして当初は1台あたり数百万円したものが、2005年現在では数万円まで低下し、しかもその機能アップもあって、
パソコンの普及はわずかの間に目覚しい展開を見せた
と言えます。
 そのパソコンの歩みと、アウトソーシングは双子の兄弟でした。アメリカのパソコンメーカーは、機械の心臓部とも言える重要部品を自社で製造せず、他社に任せます。そして、その心臓部を製造するメーカーも、その部品は東南アジアなど広く世界に外注したわけです。そんな世界の多数企業を巻き込んだ活動が、急速な機能アップとコストダウンを実現したのです。
そのためその後、重要部品の外部調達戦略が奇跡を生んだという形で“アウトソーシング”が注目の的になりました。

3》それが最も“効率的”だった!
 もしパソコンメーカーが、あくまで“内作”にこだわっていたら、パソコン開発が遅れただけではなく、コスト・パフォーマンスも悪く、こんなに急速な普及は望めなかったでしょう。
 そして人類史上最速で普及した商品となったパソコンの市場展開をささえた手法として、アウトソーシングが経営の重要テーマの一つに組み入れられるのは必然的なことだったのです。


【2】部品外注から“システム・ソフト”の外部委託へ


1》社内開発はむしろ“愚策”?
 パソコンの部品外注は、そのままソフト外注へもつながります。先に普及させた者が勝つパソコン業界では、機械(ハード)であれプログラム(ソフト)であれ、
低価格で急速に良品を作る企業に受注が集中する
のは当然で、社内に技術開発部門を持つのは、むしろ愚策だったのです。たとえば、どこの会社からパソコンを買っても、その心臓部にはインテル社の機械が入っており、その基本ソフトはマイクロソフト社のWindowsに集約されているのは、その二社が普及競争に(今のところ)勝利しているからです。
 こうした流れは、当然更にユーザーに近いところでも生じます。それは、システム運用関係のアウトソーシングでした。

2》システム運用のアウトソーシング?
 たとえば運送業の配送システムや在庫管理システムなどは、本来部外者に任せるものではありません。銀行のオンラインシステムも、止まってしまえば銀行業務が止まるわけですから、そんな大事なことを部外者には任せないでしょう。
しかし、
大事な部分を外注したからこそ急成長したパソコン業界
の記憶は新しく、様々な業界が、
それがなくては商売にならないシステム部門を外注
し始めます。経営常識が変わってしまったかのようでした。
 その傾向は中堅中小企業にも伝播し、社内システムやサーバーの管理をシステム会社に委ねるのは当たり前になっています。20年前の経営者が現在にタイムスリップしたら、“心臓部を外注するなんて信じられない”と叫ぶかも知れません。

3》アウトソーシング競争へ
 コンピュータから始まり、システム設計や運営に飛び火したアウトソーシングの流行は、その後も留まることを知りません。現在では、ありとあらゆる業種が『ぜひわが社にアウトソーシングしてください』と宣伝し、様々なメディアがアウトソーシングを活用できない企業は競争に遅れると言います。
 しかし、それは具体的にはどういうことなのでしょうか。


【3】“自前”にこだわって倒産したA社


1》ベンチャー企業の倒産
 資本金28億円を集めたベンチャー企業のA社では、システム関連機器を自社開発しました。アメリカですでに普及が始まった機器も、1990年代後半時点では、まだ日本市場に現れていなかったのです。
 英語が堪能で貿易業務をしていたA社の社長は、その機器に目をつけ、日本での販売を画策します。そして、技術者を募集し、社内で開発体制を敷いたのです。
 『一時は韓国企業へのアウトソーシングを考えたが、完成度が低く、自前で取り組む以外になかった』と、A社社長は言われていました。
 ところが、その自前策が致命傷になるのです。

2》それじゃあ“原価割れ”じゃないか…
 それは、インターネットを利用した通信機器だったのですが、社内技術者が開発した商品は未熟で、採算がとれるものではありませんでした。6万円で売り出した商品には、その製作に、
売値以上の原価がかかっていた
のです。つまり売れば売るほど赤字になるわけです。
 しかし、計算に弱かった社長は、市場の情勢で価格を決めて、先に新聞発表をしてしまっていたため、赤字でも売り続けなければならない状況に追い詰められてしまいました。
 毎日のように技術部門の生産技術改善(コストダウン)を促す社長に、ある日とんでもない情報が入ります。それは、
大企業の○○社なら同じものを半額で作るそうです!
という営業部門からの報告でした。

3》精神面から崩れ去ったA社
 その後まもなくA社は倒産します。社長自身も破産宣告を受け、全てを失います。その際、最後の役員会でこんな言葉が交わされました。その社長の言葉は、
『世間ではアウトソーシングの効果を、業務の効率化とかコスト削減とか、そんな軽い言葉で捉えるけれど、経営の視点では、本当に深い死活問題だと痛感する』
というものでした。


【4】A社が“痛感”した3つの“もしも”


1》3つの“もしも”とは…?
 A社社長が“痛感”した死活問題の本質は、“3つのもしも”で集約されると思います。
 その第一の“もしも”は、もし当初から機器製作を外注していたら、失敗のリスクをもっと小さく抑えられたということです。契約で『機器1台に付きいくらで引き取る』という形にしておけば、その製作原価にかかわるリスクは全部他社に転嫁できたでしょう。アウトソーシングの①リスク転嫁効果です。
 第二は、もしもアウトソーシングの検討を続けていたら、日進月歩の技術情報がもっと容易に入っていたということです。採用した技術者は優秀でしたが、そのためかえって外部情報に耳を貸さない欠点を持っていました。つまり、二つ目の“もしも”は、アウトソーシングの②継続的情報獲得効果なのです。

2》組織をもっと“独特”にできた
 第三の“もしも”は、もし技術者を内部に持たないと決めれば、もっと有効に営業部門の強化ができたということです。もちろんアウトソーシングをしても、外部委託先をコントロールする技術者は必要ですが、その陣容を非常に小さくできるため、
技術者を減らして営業や企画部門の人材層を厚くできた
というわけです。
 A社は、その通信機器にこだわっていたわけではなく、インターネット関連ビジネスの入り口として、機器開発に着手しただけでした。そのため先端分野で次々に商売ネタ情報を獲得する営業部門や、それを現実のビジネスに変える企画部門に人材をシフトしていれば、第三の“もしも”が有効に機能したことでしょう。アウトソーシングの③強み特化促進効果です。

3》経営者から見たアウトソーシング
 A社の例を見るだけでも、企業マネジメントとしてアウトソーシングを考える際のポイントが見えてくると思います。
それは、すでに上記のとおり、①リスク転嫁効果、②継続的情報獲得効果、③強み特化促進効果の3つなのですが、現実的な検討視点を更に明確にする意味で、最後にもう少し具体化して、取りまとめておきます。


【5】現代経営に不可欠な“3つの自問”


1》アウトソーシング効果の逆は“経営危機把握”視点
 アウトソーシングの3つの効果は、逆に考えれば企業やビジネスを危うくする3つの危機につながります。特に現代のように変化の激しい状況下では、経営上常に検討すべきテーマになるかも知れません。
 そんな危機発見視点を“自問”の形にするなら、
自問①:このリスクを自社で全て負うことができるか
自問②:継続的情報を提供しない取引先と付き合うべきか
自問③:内部に弱み部門をかかえたままで勝ち残れるか
だと思います。様々な意思決定をされる際、3つの自問を繰り返しながら具体的な検討を進められると、A社のような大きなミスを避けることができるはずです。

2》大切なのはアウトソーシング自体ではなく…
 アウトソーシング、つまり業務の外部委託は、パソコンが世に出る前から経営上の常識の一つでした。それが昨今、非常に注目されるようになったのは、激動の中で競争に打ち勝つため、リスク分散、情報入手、強み特化の経営三原則の重要性をパソコン業界の成功ストーリーが実証したからに他なりません。
 つまり、激動の中で大切なのは、アウトソーシングをすること自体ではなく、上記3つの自問が満足されているかどうかなのだと考えるべきなのかも知れないのです。

3》その前に大切な“正確”な計算をする習慣
 特に、激動の中で、変化に対応できるのは“優秀な人的資源”だけです。そのため従来業務は外部に任せ、変化に対応できる社内の優秀な人材を重要な仕事に集中させるのが、今、アウトソーシングの最大の狙いになってきているのです。
 しかし社内業務を分割し、一部を外部に一部を内部に委ねるためには、その業務の流れがきちんと整理されていなければなりません。どんぶり勘定的発想では、アウトソーシングで効果が出ているのかどうかも分からないからです。最近では、内部管理ができないから業務の大半を外注するという経営者も増えつつありますが、それでも経営の基本は“正確な計算”であることだけは、忘れるべきではないのです。


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