“明日”の答は“昨日”にある?過去をどれだけ“数値”化したか! | 会社設立に強い税理士・会計事務所/神戸市中央区

“明日”の答は“昨日”にある?過去をどれだけ“数値”化したか!

☆☆ レポート概要 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

【1】名物“ゲタ履き先生”が遠い過去に教えたこと
【2】3つの種類の“先読み”視点

【3】“ゲタ履き先生”の見解は今も通用するか?
【4】“観察・分析”だけでは失敗するケースも…
【5】“過去分析”が万能なわけではないのだが…


【1】名物“ゲタ履き先生”が遠い過去に教えたこと


1》“ゲタ”先生の講演
 まだ日本経済が高度成長を始めたばかりの頃、ゲタ履きで講演をする経営コンサルタントがいたそうです。その先生は、姿ばかりではなく話の内容もかなりとっぴで、公演中にいきなりゲタを放り出して、
『おい、明日の天気を言ってみろ!』
などと受講者に迫るのです。
 受講者がざわざわしていると、『なにを騒いでいるか。君たちこそ毎日こんなことをしておるんじゃ!』と叱ります。

2》“ゲタ”を放り出す真意
 ゲタ先生の真意は“天気予報”と“あ~した天気になあれ!”という、天候のゲタ占い?の比較にありました。
 当時の天気予報は今ほど当たりませんでしたが、それでもゲタ占いよりはるかに確率は高く、更には台風予想や大雨警報などの情報を提供する重要な役割を果たしていました。
 ゲタ先生によれば、その天気予報のほとんどが、
過去の気象や現象の徹底した分析=過去分析
をベースにしていると言うのです。そして、『それにひきかえ、あなた方は成功しても失敗しても、その経緯や過程をすぐに忘れて明日に向かう。そして、明日が見えないから、今度は神頼み新聞頼みで外部から情報を集めようとする。ゲタで天気を占うのと同じだ…』という説教が続きます。

3》自分の過去を徹底して分析しろ!
 その説教は『今まで自分の会社がしてきたこと、自分自身がしてきたことを徹底的に分析しろ。明日はその分析から見えてくる』という言葉に続きます。
 天気予報が過去のデータをとり、それを徹底的に分析した上で、現在の状況と類似する“過去”を見つけ出し、その過去がどう展開したかを観察して、
明日の天気を推察する
ように、経営の次の一手を見つけ出すべきであって、次の一手の答えを誰かが教えてくれると思って探してはいけないと、ゲタ履き先生は言うわけです。今日はこのテーマをとりあげます。

【2】3つの種類の“先読み”視点


1》第一の先読み:近々の先読みは過去分析で十分
 ゲタ履き先生は、まず天気予報と同じように、
毎日経営観察して記録して行けば明日の事業は予測がつく
と言いました。気象が決してある日突然に変わるものでないように、経営の成果、つまり活動の蓄積も、日々の日常の積み重ねから生じるものだからです。
 先生の持論では、四半期つまり三ヵ月程度の先行きなら、過去の分析だけで分かる、のだそうです。天気予報の明日は、経営では3ヵ月に相当するというわけです。
 それは逆に、今必死になっても、その効果が出るのは四ヵ月先以降ということと同じで、経営がいかに“長期的視点に立つ”べき活動であるかを認識させるものでもありました。

2》第二の先読み:中期的な読みにはセンスが必要
 しかし気象で週間予報がよく外れるように、一年先を見通すのは過去の観察だけでは果たせません。過去を観察して、それを一週間先に適用する“分析力”や“応用センス”が必要になるのです。
 こうした応用センスは、ゲタ履き先生によれば、体験的に身に付けていくしかないのだそうです。毎年、行動計画を作り、それを実行しながら、何があたり、何が外れたかをきちんと分析する、あるいは誰かに分析させることを繰り返して、はじめて身に付く力だと言うわけです。
 当時現役だった野球の長嶋茂雄選手を引き合いに出し、
『長嶋でもいまだに練習を怠らないのに、なぜ研鑽を積まずに経営できると思うのか…!』
と、ゲタ履き先生は叱ったものです。

3》第三の先読み:長期的な読みには独特の研究が必要
 更に長期的には、気象でエルニーニョ現象とか偏西風の蛇行など、専門的な見識がなければ分からないことがあるように、経営でも独特の研究が必要になるのだそうです。
 ゲタ履き先生は、まず上記の年間の業績を読むことから始めれば、経営基盤形成が可能だとし、経営上のエルニーショ現象的な話などには多くの時間をさいてはくれませんでした。


【3】“ゲタ履き先生”の見解は今も通用するか?


1》広告代理店のF社の自信
 確かにゲタ先生の指摘は、今もあてはまる部分があるようです。まさに広告代理店のF社の事例が、それを物語っています。
 F社は、あるピザチェーンから依頼を受け、葉書やポスティングによる顧客集客を引き受けました。『とにかく売上を2割アップしたい』というのがチェーン店の願いだったのです。
 F社の企画員は、まず
ピザの日々の販売記録を徹底して調べること
から始めました。ピザ販売の経験がなかったからです。しかし調査の結果、いくつかの法則のようなものを見つけ出します。

2》ピザの売れ行き法則
 法則の詳細は申し上げられませんが、たとえば“初めて注文をした月に、もう一度注文する客は、2ヵ月から3ヵ月はコンスタントに注文して、いわゆるリピーターになる。しかし3ヵ月経過して注文をしなくなったリピーターは、その後半年以上注文しない”ということや、“金曜日の夜にピザの割引券を配布すると、土日の売上が伸びる”などの“傾向”があるわけです。
 過去を分析して“傾向”をつかみ出せば、
顧客の行動を先読みできる
のです。そして顧客の行動パターンに先手を打って広告すれば、リピーターが増えるとともに、3ヵ月で去りかけるリピーターに特別な広告を出し、再び活性化することもできたそうです。
 確実に売上が伸びて行きます。

3》何をすればよいかが分かるのは“喜び”?
 ピザチェーン店の店長会議では、
売上が伸びたこともさることながら、何をすれば売上が伸びるかが分かって、店の経営自体が楽しくなった
という声が増えました。
 ただがんばれがんばれという精神論ではなく、何をするかの戦略感覚が生まれるし、今月のDMがどのように成功したかを観察して分析すると、ゲーム感覚で取り組める上に、様々な新しい発見があり、その発見がまた新しい戦略をイメージさせてくれる、と非常に評判がよかったそうです。


【4】“観察・分析”だけでは失敗するケースも…


1》逆の現象が経営現場で頻繁に起こる?
 一方J社では、毎月決まったように資金ショートが発生していました。いつも月末に資金繰りの精査をするのですが、給料支払い期日の25日には、
想像以上の不足感
が出てしまうのです。なぜそんなことになるのか、J社の社長は頭を抱えていました。
 しかし、その原因は、J社の社長が“笑い話”と言い切るほど、初歩的な勘違いだったそうです。

2》日々管理をしていない
 J社の経理担当者は大のパソコン好きで、資金繰り管理にも独自の計算式を作っていました。そして、月初の報告時に、
パソコンから印刷したシートで資金繰りを報告
していたのです。
 ところが、その“パソコン計算式”は、やや乱暴で、
10日の取引先への支払い(負債)
25日の従業員への給与支払い(負債)
月末の売掛金回収(資産)
を、日付を無視して差し引き計算していました。
 仮に、10日の支払いを300万円、従業員給与総額を500万円、月末の売掛金回収を900万円だったとすると、パソコンシステムでは、当月の必要資金を、
300万円+500万円-900万円=-100万円(100万円余剰)
と計算していたということです。
 これでは確かに、毎月月末に900万円が入るまで、800万円の資金ショートが発生することになるでしょう。

3》笑えない笑い話
 もちろんJ社のような“明らかなミス”は、深く考えるまでもなく発見できますが、『昔のどんぶり勘定だったら気付かなかっただろうね』と社長は笑っておられました。
 そして今でも、十分に管理の目が行き届いていないところでは、同じような“笑えない笑い話”が残っているのではないかと、厳しいチェックに乗り出しているところだそうです。


【5】“過去分析”が万能なわけではないのだが…


1》“ゲタ履き”先生の限界
 私たちに様々な教訓を残した“ゲタ履き”先生も、オイルショックからバブル崩壊にかけての
経済全体の大きな構造的変化
自体を、過去の分析から予測することはできませんでした。そして徐々に、忘れ去られていったのです。
 もちろん先生も『過去分析からだけでは大変革時には役立たない』と繰り返していましたが、こんなに急速に世の中が変化するとは思わなかったようです。
 しかし大変革?も徐々に落ち着きを見せはじめ、どちらかと言うと再び日常的な日々が始まった現代、“ゲタ履き先生”の復活があってもよいのかも知れません。

2》今先生が復活したら…
 そしてもし今“ゲタ履き先生”が復活したら、3つの経営方針の話をすると思います。
 その第一はやはり“①日々の事業観察や記録を怠らないこと”でしょう。記帳や業務日誌は決して形式だけのものではありません。そして第二は“②あたっても外れても、短くとも向こう1年くらいの先読みの習慣をつける”ということだと思います。
 先々を読む習慣を持つケースとそうでないケースでは、経営の確かさに差が生まれてしまいます。しかし、最も重要なのは第三の方針かもしれません。

3》“反省”を繰り返せ!
 ゲタ履き先生は、強い囲碁士や将棋士が、自分の勝負を何度も何度も反省して、どうすべきだったかを考え続けるように、①の業務観察の上に立った②の予測を“反省”し、何があたり何が外れたか、その原因は何かを徹底的に追究することを勧めていました。それが“経営勘”を磨く最良の方法だというのです。強い勝負師が徹底した反省から生まれるように③打った手の適切性の反省蓄積が、強い経営者を作り上げるというわけです。
 先行き不安が拡大する今こそ、“過去分析”のパワーを見直すべき時期なのかもしれません。


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