会社設立に強い税理士・会計事務所/神戸市中央区 -3ページ目

一般的な景気指標からは得られない独自に行う景気判断の経営メリット

☆☆ レポート概要 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

【1】“景気”とはいったい何なのか…?
【2】“統計”というものの限界認識をしておこう!
【3】自社独自の“景気感覚”をどう持つか
【4】更なる“独自の景気判断”基準作成事例
【5】独自の“景気判断基準”を持つメリット


【1】“景気”とはいったい何なのか…?


1》“景気”が回復している…?
 2005年秋以降、景気回復が“定着”したかのように、新聞などのメディアは書きたてています。しかし、それに呼応するかのように、たとえばインターネット上では、
景気回復の実感がわかない
という“経営現場感覚的”記事にあふれているのです。
 中には、政府が意図的に景気が回復したことにして“景気刺激減税策”をやめる理由を作っているのではないかとか、一部の企業が物価を上げるために景気回復を吹聴しているのではないかとか、そうした“うがった見方”もあるようです。
 いずれにしても、バブル崩壊の原因となり、その後のデフレの主因になった“大手銀行の不良債権処理が終わった”ことが、
長期不況“要因”の終わり=景気回復への確信
となっているようなのですが、以下では統計的な景気回復分析より、“景気”の経営的意味について考えてみたいと思います。

2》“景気”とは…
 景気とは本来、経済取引や商売の状況のことであり、景気がよいとは取引や商売が活発であることを意味します。
 ところが一般の景気判断では、取引や商売を具体的には捉えず、ご承知のとおり、一部の大企業から聞き出した統計から経済全体を類推する形になっているわけです。たとえば大手製造業の生産が増えれば国中の生産活動は上向き、百貨店の売上高が伸びれば国中の個人消費が好転したと“推定する”わけです。
 実際の景気判断は、20~40程度の統計対象項目を選び、それらを総合して決めているようですが、いずれにしても
中堅中小企業が統計対象になっているわけではない
ことから、中堅中小企業の実情は、統計的な経営判断に反映されるケースが少ないのかも知れません。
 
3》企業経営にふさわしい“景気感覚”の持ち方
 そのため国の景気判断と中堅中小企業の現状には、大きなズレが生じる方が自然です。しかし本レポートでは、そうしたズレ自体を問題にするのではなく、中堅中小企業経営にふさわしい景気感覚の持ち方について、改めて考えてみたいのです。


【2】“統計”というものの限界認識をしておこう!


1》統計には“当たる”部分と“外れる”部分が混在
 はじめに、統計の実態について考えておきましょう。たとえば、百貨店売上高で、特に“デパチカ”と呼ばれる地下の食品販売が“好景気”になったと想定します。
 デパチカが元気になったということは、食品を買うためにデパートに訪れる人が増えたことを意味します。ということは、たとえば“デパート近隣で評判の高いケーキ屋や喫茶店”は、デパートの集客力の波に乗って、客を増やすかも知れません。国の景気判断と企業経営実感がぴったり来る瞬間です。
 ところが、デパートと競合する商店街や住宅街の“スーパー”や“惣菜屋”は、デパートの客足が増えたメリットを受けませんし、逆に客を奪われて苦戦を強いられるかも知れません。景気判断と企業実感は一致しないのです。

2》独自性が強い事業では“統計”の影響は更に微妙
 統計はすべてを平均的にしか捉えませんから、地域や商品の独自性が強い中堅中小企業には適応し切れません。先のデパチカ近くのケーキ屋でも、デパチカにないものを売っていれば好況でしょうが、商品差別化ができていないなら、いかに店の前を通る客数が増えても、百貨店に客を奪われて不況でしょう。
 このように立地と商品性だけでも、統計結果と大きな差ができてしまうわけです。しかしこう考えるなら、統計上の景気が回復しようが、統計上不況であろうが、もともと
好況不況以外の要素で中堅中小企業の景気は決まる
と考えておいた方がよいような気さえしてくるのです。
では中堅中小企業経営に“景気判断”は不要なのでしょうか。

3》“景気判断”の経営における重要性
 一般に、取引が活発(好況)になっているなら更なる発展のために、先行投資や販売促進が必要になりますし、取引が不活発な方向(不況)に向いているなら、無理をせず防衛に努めなければなりません。つまり景気判断は経営方針そのものに直接的な影響を与えるものなのです。
そのため景気判断自体が不要なのではなく、国の統計ではない“独自の適切な基準”が必要だということだと言えるのです。


【3】自社独自の“景気感覚”をどう持つか


1》以前は有効だった“売り上げ昨年対比”
 もちろん、企業は成長するのが常識だった時代には、企業の景気判断は、
昨年より多く売ったかどうか(売り上げの昨年対比)
で捉えれば十分でした。しかし、今日、市場(顧客)に元気がなくなるとともに、同業者との競争が増えています。更には“冷静な目で商品やサービスを選ぶ”高齢者が取引活動の中核を占めるようになってきて、顧客の欲求も厳しくなりました。
そのため、昨年より多く売ってもコストの増え方が大きくて、利益は減っているというケースや、
状況の変化対応のため、商品構成や値引き条件などを
柔軟に変えるため、昨年実績との比較がしにくくなる
ような状況も出てしまうのが、現代の特徴ではないでしょうか。
 
2》企業独自の“景況感”例
 従いまして、独自の景況感覚を形成するには、単に売り上げを昨年実績と比較するだけでは不足なのです。
 たとえば製造業のA社では、こんな基準作りをしたそうです。まず、基準とする人員数を“事業を遂行するのに絶対に不可欠な人材”だけに絞ります。その際、副業用の人材や将来のための要員はカウントしません。もちろん“計算上”だけですが…。
 そして、売り上げから原料や材料などの仕入れを引き、まだ経費等を差し引いていない“売上総利益”が、
人件費の3倍以上なら好況、それ未満は不況
と捉えるのだそうです。3倍は大きいと考えられるかも知れませんが、社長の報酬は含んでいませんので、それがA社には“必要最低限”の利益なのです。

3》自社景気の判断基準を持つメリット
 そして『売上総利益が3倍を超えそうだと攻めの経営を考え、確保が難しくなると徹底防衛姿勢をとる』らしいのです。
『景気判断は企業経営の姿勢を決めるためのものだから、判断しやすい基準を持つと、迷いが少なくなり経営姿勢が安定する』と、A社の社長はおっしゃっています。つまり経営姿勢を明確にする効果が、景気判断のメリットだというわけです。


【4】更なる“独自の景気判断”基準作成事例


1》経営の“リズム”に着目したB社
 もっとシンプルな指標を持っているのはB社です。B社では単純に、
“企業利益”対“経営者の報酬”
を指標化しているそうです。そして両者の適正比を50対50とし、利益の方が大きくなればやはり、当面の景気はOKと見て長期的な戦略を考え、報酬の方が大きくなってしまえば、当面のコストダウンに没頭し、更に先行きが不安なら報酬を下げることにしていると言います。今後は企業規模の拡大に伴い、他の役員の報酬も加えて基準にし、利益拡大に対応するそうです。
 『目先を心配しながら長期的課題に取り組んだり、長期的な心配をしたりしながら目先の商売に集中しようとしても、どうしても検討が中途半端になる』ことが多かったため、経営のリズムとして自社景気の判断基準を作ったのだそうです。
 『100%割り切った気持ちになれるわけではありませんが、まあ、漠然とした重い気落ちになって迷い続ける時間は減りました』と社長は言っておられます。

2》目に見えないものを基準にしたC社
 しかし、連続的な景況ではなく、たとえば
近所に競合ができたために突然売れなくなる
ような構造的な変化には、どう対処すればよいのでしょうか。
 その点では、C社の事例が適切かも知れません。

3》それは“顧客の声”?
 C社では、毎週土曜日に、その一週間の
顧客の声
をパソコンに打ち込んで整理しています。もちろん、満足の声も不満の声も、激しいクレームも簡単に記録します。
 記載内容は非常に簡潔です。『たくさん書くと続かない』からだそうです。そして、その記載の“件数”が、大きな競合先の警報になると言うのです。
 競合先ができて店選びの関心が高まると、不満も共感も増え、競合先がないと、顧客の興味が薄れて反応がなくなるという“法則”があるからだそうです。


【5】独自の“景気判断基準”を持つメリット


1》最大の効果は“一手早い対策”
 以前なら、近所をこまめに歩いていれば、競合先の出現はすぐに分かったのですが、今ではインターネット通販で買うという強敵が突然出現するため、近所探索だけでは不十分なのです。
 しかし、C社のように
先見性の持ち方を教えてくれる指標
を発見すると、今の景気だけではなく、今後の構造変化を予測して、益々一手早い対応が打ちやすくなるのかも知れません。
 C社ほどの先見性は出なくとも、B社やA社の利益指標でも、
漠然と悩みを抱くケースよりも素早い行動を促進する
効果があることは、疑う余地もありません。
 
2》経営に必要な“緩急”
 また、常にがんばっていたり、常に余裕があったりする企業は、意外に大きな変化に弱いものです。逆に当面のがんばりに集中する時と、ゆとりを持って長期を考える時を、うまく分けている企業は、徐々に対外対応力を強化して行きます。
 大企業経営では、そのリズムを景況感から作り出しています。つまり、不況時は当面の利益に徹底してこだわり、好況期には長期的なプランを立てるということです。そのため、大きな企業は“景気判断”にこだわるのかも知れません。
 しかし、本レポートでご紹介した3例では、必ずしも中堅中小企業の経営実態を反映しない景気判断ではなく、
独自の景況判断
を作り上げて、大企業と同じように、緩急のリズムを経営に持ち込んでいるわけです。景気と企業経営の関係を考える上で、非常に示唆に富む例ではないかと思います。

3》正しい判断は正確な管理から…
 いずれにしましても、独自に持つ景況判断も、計算上正しいものでなければなりません。間違ったデータや伝票から得た数値では、緩急のリズムどころか、適切な判断ができるはずもないからです。
正しい業績管理…、まずその基本を見据えた上で、様々な工夫に挑戦されることをお勧め致します。

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会社の“富”が流出している…?“節税”是非論の裏側

☆☆ レポート概要 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

【1】“社員旅行はムダ”からその議論が始まった…!
【2】事業の“損得”は“経営感覚”で違う?
【3】社内に残すべき会社の“富”重視の時代
【4】ただし“富”の形成は決して単純ではない!
【5】節税にこそ必要な“専門性”と“総合視点”


【1】“社員旅行はムダ”からその議論が始まった…!


1》社員は誰も喜んでいない…?
 製造拠点と営業拠点を異なる地域に持つA社では、毎年決算月のはじめに両拠点を合流させる社員旅行をするのが慣わしでした。全社の交流を深め、仕事の効率を上げるためです。
 ところが、社内のイベントにあまり興味を示さない後継経営者が実際の経営を行うようになって、
社員旅行が存亡の危機
に陥ったのです。しかも、社員旅行是非論は、いつの間にか“節税”是非論にまで及び、一時は後継者と先代の間で、険悪なムードさえ立ちこめたと言います。
 そこで、以下にその概要をご紹介し、会社の富と節税の“関係”について、ご一緒に考えたいと思います。

2》事件は“アンケート”から始まった…
 社員旅行の是非論は、後継者がとった社内アンケートから始まりました。強烈な個性で組織を率いる先代とは異なり、後継者は社員の意向を重視する経営を心がけようとしたのです。
 ただ、アンケート結果は大変暗いものでした。要約すると、
期末の忙しい時期に、しかも土日を利用して
(面白くもない)社員旅行に参加する意味を感じない
という意見が圧倒的な大勢を占めたのです。忙しい時期で、結局中途半端な旅行になってしまうことや、土日がつぶれることなどに社員の不満がたまっている様子なのです。

3》感謝と節税
 そのアンケート結果を持ち、後継者は先代と“談判”することにしました。むしろ社員旅行のような不要なものは止めてしまおうと、後継者は考えていたのです。
 それを聞いた先代は非常に不機嫌でした。先代は、
『この旅行は創業から続いている。皆で1年間の利益が出たことを感謝し、期末に旅行をするのが慣わしだ。期末に福利厚生で社員に利益を分配(旅費の損金計上)すれば節税にもなるし、業績上のメリットも大きい』
と考えていたからです。しかも“年度末に旅行をするのは、安心して経費を使えるようにするためだ”と言うのです。


【2】事業の“損得”は“経営感覚”で違う?


1》その趣旨なら年度始めに旅行すべきだ!
 こうした先代の考え方に対し、後継者は、
結局誰も楽しみにしていない旅行を続けるのは、
期末の節税対策に過ぎないではないか
と反論しました。この反論に対し『節税のどこが悪い!』と先代が怒鳴りつけたために、議論は“旅行論”ではなく、“節税論”になったのです。
 この分野では、大学で経済学や財政学を学んだ後継者に“言いたいこと”があったそうです。その内容の是非については、後でご一緒に考えることとし、ちょっと後継者の話の内容に耳を傾けてみましょう。

2》後継者の目で見る“節税”の実際
 後継者はまず『企業が節税して国は損をするだろうか』と問いかけます。たとえばA社の今期の利益が1千万円だったとし、そのまま法人税などを支払うとすると、実効税率が40%なら、
1千万円×40%=400万円
の納税額になります。
 ところが期末に200万円の社員旅行費を損金計上すると、1千万円の利益は200万円減るため、納税額も
(1千万円-200万円=800万円)×40%=320万円
となり、最終的に納税額は
400万円-320万円=80万円
減るのです。国や地方公共団体は、A社から獲得すべき税金を80万円も減らされたことになります。しかし、それで国や公共団体は“損”をしているのでしょうか。

3》旅行代理店から税金をとる
 A社が旅行代金として支払った200万円は、そのまま旅行代理店の売上に立ちます。それがそのまま旅行代理店の“利益拡大”につながれば、国や地方公共団体はA社で失った納税額を、旅行代理店から取り戻すことができるのです。
 利益に単純に一定率を掛ける納税額決定方式には、こうした利点があり、公的機関は決して損をしません。ただ、そのことで後継者は何を言いたいのでしょうか。


【3】社内に残すべき会社の“富”重視の時代


1》失われた120万円
 本来、国も公共団体も決して“損”をしないのに、節税と言えば公的機関の収入、つまり納税額だけしか計算しない、まさにそのことが後継者の不満でした。それは、
『会長(先代)。200万円出費して、80万円しか税金が減らない。残りの120万円はどこへ行ったのですか…』
ということです。
 社員旅行などしなければ、税金を支払っても会社に残るはずだった“120万円の富”が社外に流出している、その流出先は旅行代理店だ、というのが後継者の“感覚”でした。
 そして、それは確かに現代の時代感覚にはマッチしているかのようでした。

2》現代は“富をためこむ”企業が評価される?
 “富の流出”型の節税をしていたのでは、長年の間には会社に残る“会社所有財産(内部留保の蓄積)”に差が出ます。そしてその差は、取引先や金融機関等が見る“企業の成績の差”そのものなのです。それが社会的信用の基礎になります。
 たとえば、かつては成長事業に甘かった金融機関も、今では内部留保が薄ければ融資に応じないか、応じても高い金利を求めるようになりました。取引先も強引な成長より、堅実な経営をしている先と付き合おうとします。バブル崩壊後の不良債権で、皆痛い目にあったからです。
 以前のように、どんどん経費を使って宣伝・拡販したり、販売価格を下げて、利益より成長の方をとろうとしたりしても、
以前のような成長力を持たない市場では効果がない
今日、成長よりも利益が重んじられるのは当然なのです。

3》“富=利益蓄積”を考えよ!
『社員旅行と言う経費を使って、たとえ社員が元気になっても、市場が拡大しないなら売上は増えない。もう昔の成長時代とは違う。だから、むやみに経費を使うのではなく、利益にもっと関心を持って欲しい』と後継者は訴えたかったのです。
しばらく考えて、今度は先代が“反撃”に出ました。それは、やさしい言葉ながら、かなり考えさせられるものでした。


【4】ただし“富”の形成は決して単純ではない!


1》大切なのはカネではない?
『難しいことは分からんが、“カネ”では事業はできないよ』というのが先代の“感覚”です。カネがカネを生むという発想は、むしろバブル期のもので、今は、
カネを生む人材や商品・サービスを大切にする
ことが何より必要だというのです。会社の財務体質を整えても、人材にやる気がなく、商品やサービスに競争力がなければ、どうしようもないだろうと言うわけです。
 『お前は旅行代理店に富が流出していると言うが、長年の付き合いで旅行費用は安くなっているし、何よりあの旅行代理店は、うちの得意先の一つではないか』と先代は語ります。

2》しかし意味のない旅行だとすれば…
 “富の流出論”が互角?になり始めて、ふたたび社員旅行が問題になりました。正しいのが先代であるにせよ、後継者であるにせよ、
社員旅行がムダなものなら、たとえ節税ができても“損”
ですから止めた方がよいし、有益なものなら特に期末に実行しなくてもよいからです。
 すべての発端になった“社員旅行”の是非論は、結局結論が出ず、今年も例年通り実行し、来期にもう一度社員の意向もくんで、実施の是非や実施方法を根本的に見直すことにしたそうです。

3》両者の反省
 その後、先代と後継者の方が別々に来訪され、それぞれ“自己反省”をして行かれました。
 先代は『今まで、利益が出たら何かしなければならないという強迫観念のようなものがあって、納税しても内部留保を厚くするという発想はとれなかった。勉強になった』と言われますし、後継者は『成果としての利益ばかりに目が行き、その利益を作る要因である人材や商品・サービス、あるいは顧客のことを、先代ほどには考えていなかった』と言われるのです。
 そしてお二方とも、両方の視点をバランスよく持つ経営はできないものか、と相談されるのです。


【5】節税にこそ必要な“専門性”と“総合視点”


1》まず“真の節税”を理解しよう
 経営を云々する前に“節税に対する誤解”があることをお伝えしました。そもそも“節税”は、税制上の優遇措置やそうした措置を活用する手法を使って、“富”を減らさずに必要外の納税を削減することです。決して自社に損を出して税金を減らす“苦肉の策(自分を苦しめて相手に勝つ)”ではないのです。
 そのため税務に関する“専門見識”が求められ、単純な思いつきでできるものではないわけです。特に、売り込み時に素人考えで“節税”をアピールする業者がいたら、迷わずご相談ください。専門的見地から、本当にメリットがあるかどうか検証しなければなりません。

2》特に“キャッシュ・フロー”との関係が大事
 更に節税には、資金(キャッシュ・フロー)管理をも含めた総合的な視点が大切です。納税は現金ですが、利益は必ずしも現金で得るわけではないからです。
 たとえば200万円の旅行をして、仮に全額損金計上ができ、80万円の納税額削減ができたとします。80万円、納税資金が減りました。しかし200万円の現金は、旅行代理店に支払ってしまっているのです。納税額を80万円減らしても、200万円のキャッシュはすでに流出しています。120万円は戻りません。
 一方200万円の旅行をしないなら、旅行する時に比べ80万円納税額が多いままですが、対外的な資金流失は200万円ではなく80万円だけなのです。資金繰りは、その分楽になるでしょう。
 こうした資金繰りを含め、その期待効果をも加えて、総合的に捉えなければ、社員旅行の是非を論じることはできません。

3》旅行が“宴会”に替わった
 資金計画を作る習慣を得て、A社の先代は社員旅行を辞めました。期末に200万円の資金を使うことは、決して軽くはないからです。ただし、旅行の代わりに“合同宴会”は実施したそうです。創業精神を伝え続けるためです。
 しかし資金計画が面白くなった先代と後継者は『宴会代を付け(買掛金)にできないか』と、お二人仲良く考えておられました。実現したかどうかは存じません。

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ビジネスは“人の健康”と同じ?限界を感じたら弱点を直すための余裕を持とう!

☆☆ レポート概要 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

【1】健康食品販売F社が出合った“意外な結果”
【2】今まで“プラス思考”が強すぎた…?
【3】現代は“余裕”が業績を生む時代!
【4】現実問題として“余裕”を持つのは難しい

【5】考える“余裕”を習慣的に持つための視点


【1】健康食品販売F社が出合った“意外な結果”


1》勇気ある後退…?
 健康食品を売るF社は、ここ数年の健康ブームで予想外の業績拡大を果たしました。特に有機野菜関連の商品の勢いはすごく、一時は“バブル再開”のような雰囲気さえあったそうです。
 しかし、最近ではそれが一巡してしまったようです。有機野菜のファン層を取り尽くしたのでしょう。もはや限界が見え始めたと言えなくもありません。
 ただ、何とかしなければならないと感じていたF社のA社長にも、なかなか次の一手が見えませんでした。それは、
どんどん売らなければ業績は獲得できない反面
無理な拡大を続けることは、資金面でリスクが大きい
からです。ところが、拡大か現状維持か迷った社長に実に意外な結果があらわれたと言います。その意外な結果とは…。

2》むしろ現状維持でよいと割り切ったのに…
 従来、前向きの姿勢が強かったA社長も、今回はさすがに、
とりあえず現状維持をしよう。それでいい!
と決められたのだそうです。そして、新しい顧客開拓のための宣伝やダイレクトメールを一切やめ、既存の顧客への丁寧な対応に焦点を絞りました。
 店に来るリピート顧客には積極的に話しかけ、時には採算が悪くても、その客が欲しがった商品を特別に仕入れしたりもしました。また、顧客の要望にそって、少量パッケージを作ったり、おいしい料理法などのコピーをつけたり、とにかく顧客とのコミュニケーションに努めたのです。
 通販で買う顧客にも、丁寧な対応をしました。

3》通販で買う顧客にこそ…
 通販で買う顧客は店を知りませんから、運送のための箱や食品の詰め方でしか店の“質”を理解できません。そこで出荷現場に通い、社長自らパート作業員を徹底的に指導しました。
 『意外に当たり前のことを当たり前にできていない。“ありがとうございました”というカードを1枚入れるだけでも、顧客の気持ちは違うのに…』と、A社長は“現場”作業の粗雑さに驚いたそうです。こうした行動が意外な結果を生んだのです。


【2】今まで“プラス思考”が強すぎた…?


1》聞いたこともない名の人からの引き合い
 その意外な結果とは、既存客に対象を絞ったにもかかわらず、
逆に店には見かけない客が増えたし、通販では
“これ誰?”という人から問い合わせがある
ということです。『もしや』と思い、何人かの客に聞いてみると、やはり“知人から聞いて来た”“紹介を受けた”という返事が返って来ました。既存客が新規客を呼んでくれているのです。
 しかしなぜ、突然のように新しい顧客が増えたのでしょうか。もちろんその直接的な要因は、F社長が顧客に丁寧に接し始めたことにあるのですが、そのことで逆に、今までの弱点が明確になったのです。

2》商品はいいけれどきちんとしていない店
 通販現場に入ってA社長が感じたことは、荷の間違いが多いということでした。箱に乱雑に詰めるために、詰めた後のチェックが難しく、小さな商品を入れ忘れたり、二重に入れたりするのです。
 また、何度も入れ直すせいか、新品の箱が出荷時にはくたびれています。それが“ありがとうございました”というカードと、出荷商品リストを入れることで、現場の意識が変わり始め、出荷現場にプライドが生まれて、“モノはいいけどきちんとしていない”というF社の風評が一変します。
 店頭でも、営業拡大ばかりを考えていたA社長の心の文化が従業員に伝承したのか、既存客ではなく新規客ばかりに注目するという傾向がありました。リピート客をファンにまでしてしまうという活動をおろそかにしていたのです。

3》拡大ばかりを考えていた時には限界が見えたのに…
 A社長は『プラス思考が大事だと思い、営業拡大ばかりを考えていた。現状維持とか縮小とかは、負け犬みたいで嫌だった。しかし、逆に本当に限界を感じて、負け犬でもいいから…、と考え始めたら、むしろ新規客が増えた』と不思議がられます。
 確かに不思議なことですが、そこには現代環境でのビジネス基本原則のようなものがあるのだそうです。そしてそれは、A社長との対話の中で、順々に明らかになって来たことでした。


【3】現代は“余裕”が業績を生む時代!


1》余裕を持つ努力をしなかったのが問題
 A社長との対話を簡潔に要約すると、第一の問題は、
従来『部分的なことに必死になりすぎていた』こと
だと言えそうです。一見変な言い方ですが、たとえば新規顧客獲得では、宣伝ばかりに必死になり、買ってくれた顧客への対応にまで手が回らなかった、ということです。
 営業力のあるA社長の拡大路線に、現場がついて行けず、サービスが粗雑になって客離れを起こすという現象を食い止めるには“全体のバランスを見ながら社長自身がブレーキを踏む”必要があったわけです。
 成長の時代には時間を惜しんで、とにかく前に進むことが必要でしたが、現代のような停滞の時代には、全体を見渡す余裕が非常に大事になります。これが第一の基本原則です。

2》第二の基本原則
 次の問題はもっと重要です。それは『出荷作業を見直すだけで売上が伸びた』とA社長が言われることから分かります。F社では全体を見渡してみて、特に問題が大きいと分かった“出荷作業”に集中して、徹底的に改善したのです。
全体を見渡しながら、見つけた弱点を徹底修復する…、その効果は計り知れません。時には、
『漠然と前向きに考えるより、問題発見・改善という“後ろ向き”に感じる課題に“徹底的”に取り組んだ方が、業績効果は大きい』(社長談)
という現象さえも起きるのです。これが第二の基本原則です。

3》ビジネスは人の健康と同じ?
 私たちの身体も、特に健康増進を考えなくても、
弱ったところをいたわる
だけで、身体全体がバランスを取り戻し、自然に健康になることが少なくありません。
 ビジネスでもF社のように、問題を発見しそれを解決することで、全体のバランスが回復して、健全路線に戻ることが多いのです。F社の場合は、それは単なる健全路線を越えて、新規開拓効果へもつながりました。しかし、まだ問題が残ります。


【4】現実問題として“余裕”を持つのは難しい


1》全部を一人でやるのか
 なかなか成長が難しくなった現代では、
第一原則:ビジネスの全体バランスを考える
第二原則:弱点を見つけて丁寧に補強する
のが大切になったということはよしとしても、『いつもいつも、そんな活動に集中できるわけではないし、適切に問題を見つけ続ける自信もない』とA社長は言われます。
 そして、
『ビジネスがバランスを失った時や、弱点が見つかった時に、アラームを鳴らしてくれるような仕組みはないものか』
と問われるのです。しかも『月次の決算や年度の決算に、そんな機能を織り込めないか』とも言われました。

2》私たち会計事務所の反省
 実は、企業決算を行う最大の目的は、
企業のビジネスを健全に保つ
ことにあります。もちろん、決算だけで健全さを確保することはできませんが、
企業決算=人の健康カルテ
として、企業のアンバランスと弱点を浮き彫りにするという形で、間接的に健全化に貢献しようとするのが決算の本来の目的なのです。
 しかし、それが経済成長期には“昨年対比”を何が何でも上回るという数値目標にのみ活用されたり、節税対策のような手法が必要以上に強調されたりして、本来の役割から遠ざかる傾向があったかも知れません。私たちも反省すべき点でしょう。

3》決算を経営に生かす視点:“①正確性”
 ただし、ビジネスの健全化のための“決算”には、それなりの視点が必要になります。ただ計算していたのでは、決算が企業健康カルテにはならないのです。
まず必要なことは、月次決算であれ年度決算であれ、それが“①正確”でなければ意味がありません。もちろん納税額適正化(節税)は当然必要ですが、それも正確な数値の上になされなければならないということです。


【5】考える“余裕”を習慣的に持つための視点


1》決算を経営に生かす視点:“②どんぶり勘定の排除”
 たとえば同じ1億円の売上を毎年実現しても、毎年新規の顧客に売り上げているのと、既存顧客に継続的に売っているのとでは意味が変わります。あるいは顧客は同じでも、顧客が変われば、ビジネスの様子は変わってくるでしょう。
 同じ金額の1億円でも、その構成要素が変われば意味が変わるのです。筋肉質で80kgの体重なら健康でも、それが脂肪のかたまりなら不健康なのと同じです。
 従いまして、合計した結果の数値ではなく、合計前の個々の数値をきちんと管理する視点を持つ必要があるのです。それは売上に限らず、同じ5千万円のコストでも、それが人件費なのか外注費なのかなど、コストの色分けでも同じ考えが必要です。
 どんぶり勘定では弱点が見えませんが、合計を部分に分解する習慣をつければ、弱点のアラームに気づきやすくなるのです。

2》決算を経営に生かす視点:“③見通しをたてる習慣”
 2つ目の工夫は、今期に限らず、2年後3年後の業績見通しを、とにもかくにも立ててみることです。先のことは分からないのは確かに事実なのですが、見通しは決して先々のために行うだけのものではないとも言えます。
 たとえば、今年の業績をベースに、2年後3年後を見通してみると、今年の計算だけでは見えなかった“今の問題”が浮き彫りになります。F社では、宣伝しなければ売れない今の体質を3年後まで引き伸ばして計算すると、『3年目のはじめに宣伝過剰で資金ショートする』ことが分かりました。A社長が宣伝主義から方向転換をしたのは、そのためだったのです。つまり見通しをたてると、現在隠れている問題が明らかになるため今どうすべきかが分かりやすくなるわけです。

3》もっと実践的に決算を考えませんか?
 決算は決して済んだことの後処理ではありません。人間ドックのように企業の健康を管理し、次の方針を決める材料を得るためのマネジメントです。もちろん、行うべき工夫はまだまだありますが、今できるところから一つずつ、“決算”についてもう一度考えてみませんか。   


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