今世界中で大きなニュースとなって「プーチン批判」の理由付けにされているのが アレクセイ・ナワルヌイ氏の突然死ですが、これについては私のブログの過去記事で2回取り上げています。

 

 

 

 

 

今回は2020年のナワルヌイ氏のノビチョク殺人未遂事件にスポットを当てて面白い情報をご紹介したいと思います。

 

この事件をざっと振り返ると、2020年8月20日にナワルヌイ氏がシベリアのトムスクから旅客機でモスクワに向かう途中で、体調不良を引き起こして苦しみだし、旅客機はオムスクで緊急着陸し、オムスク市第1臨床救急病院にいったん収容されるも、家族やNGOの強い希望でドイツのベルリンの病院へと移送され、ドイツ政府が「ノビチョク」の使用を裏付ける証拠が得られた と発表した というものです。

 

まずはこの「ノビチョク」についてですが、旧ソ連で開発された化学兵器ですが、非常に危険すぎて取り扱いが難しい為、実用化には至らなかったとのことです。

下の写真はスイス情報局の元参謀本部大佐であったジャック・ボー氏が書かれた書籍の”The NAVALNY CASE Conspiracy to serve foreign policy”という本の中に書かれている一部の抜粋です。(私はこの本は読んでいないのですが、ビデオでとても良い本だと紹介されていたので、今回ご紹介させていただきます。)

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

上の和訳を読んでいただければ分かる通り、毒性が高すぎて戦場での取り扱いが困難なので実用化は断念された とあります。これを化学兵器として使おうとしても相手が中毒になる前にそれを撒く過程で自分が中毒になってしまうとのことです。また、一度中毒になると、「回復は不可能」だと、このビデオで言っています。

 

少しでも皮膚に触れると死亡するので、当然、この毒物に触れた被害者はもちろん、周囲にいる人たちも全員、全身化学防護服を着ていなければなりません。

 

しかし、ナワルヌイ氏が2020年に救急車で移送された時の状況はどうだったでしょうか。下に写真がありました。↓

 

 

  ↑

移送するスタッフが全く防護服等着用していないばかりか、半袖を着ています。

 

もちろん、救急車も病院も 急な体調不良を起こしたナワルヌイ氏が危険な化学物質に暴露されている等とは想定もしていませんでしたので、誰も防護服を着ていませんでした。

 

そして、「ノビチョク」についてですが、ロシアだけがこの危険な化学兵器を持っているわけではありません。下の本からの抜粋をお読み下さい。

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

そして、この体調急変の事件が発生する何年も前から、ナワルヌイ氏はすでに詐欺や横領等の様々な罪で有罪で仮釈放中の身となっていたので、本来はロシアから出国できないはずでした。しかし、ドイツで治療させろ、と主張するNGO(米CIAが活動支援しているNGO)の強い働きかけで、寛大にもロシアは出国を許可したのです。

 

 ↓(日本語変換したもの)

 

下は移送された先でのドイツ、ドイツから検査を委託されたスウェーデン、フランス、いずれも血液のサンプルから、ナワルヌイ氏が中毒であることを確認できなかったようです。
 

 ↓(日本語変換したもの)

 

ナワルヌイ氏がノビチョク中毒になっていた という証拠をドイツ、スウェーデン、フランスともに ナワルヌイ氏の血液と尿の検体から見つけられなかったにも関わらず、「”XXXX”という軍事機密で秘密にしなければならない化学物質」が見つかった と「ノビチョク」を匂わせるような発表を行いました。↓

 

 ↓

 

上の写真の最後の方のGoogleでの日本語変換が違和感のある翻訳になっていますが、「ニルス・メルツァーの報告書によれば、スウェーデン政府が政治的な興味の為にジュリアン・アサンジの(レイプ)事件でレイプというホラーのフィクションを作り上げたように、「レイプの捏造告発」をやったことを私達は知っています。」

と書いてあります。(つまりスウェーデンには事件捏造の他の事例がある ということ)

 

それが本当にノビチョクによる中毒なのだったら「化学物質”XXXX"」、「軍事機密に該当する」などと匂わせるようなことを言わずに、堂々と発表して、ロシアが求めていたように、その血液や尿の検体をロシアにも提供すればよかったのではないでしょうか? 検体を公開することもせず、上のような匂わせ発表を行った ということです。

 

その後、医学雑誌の「ランセット」が次の記事を発表しました。

 

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このランセットの記事では 明らかにナワルヌイ氏のケースが取り上げられ、禁止化学物質としてしていされているノビチョク類による中毒であるとドイツ政府が発表した となっています。

 

そして、ナワルヌイ氏の血液の検体について、以下のように論文では述べられています。

 

 ↓

 

上の論文を読む限り、血液からノビチョクやその代謝物質が検出されたというわけではなく、まるで健康診断のような血液検査(アルブミンや乳酸脱水素酵素(LDH)等)を行って何かの値が正常値よりも低いとか高いとかに言及しているところに注目すべきと思います。

 

ですから、これらの数値が異常=ノビチョク中毒 と結び付けられるものは1つもなく、他の病気でもこれらの数値が異常になることが十分にあるわけです。

また、ナワルヌイ氏はこの突然の体調不良事件以前から、健康体とは言えない状況でした。

 

下の記事にはナワルヌイ氏に糖尿病やアレルギーの既往歴があることが書いてあります。昨年2月22日付のものです。オスカーにノミネートされたナワルヌイ氏に関するドキュメンタリー映画は「偽情報」だとの記事です。

“Navalny,” documentary nominated for March 12 Oscar, is crude disinformation

(3月12日のオスカー候補にノミネートされたドキュメンタリー「ナワリヌイ」は粗雑な偽情報である)

 

この記事はとても長いので今回ご紹介はしませんが、要点だけご紹介すると、非常におかしいのは ノビチョクとされる毒物が入れられたのは最初はナワルヌイ氏が泊まっていたホテルから持ち帰った水筒と言っていたのが、4ヶ月後になぜか下着のパンツへ塗られた と変わりました。

 

それはナワルヌイ氏のトムスクの空港の荷物検査時のビデオをチェックしたら、ナワルヌイ氏のバッグのどこにも「水筒のボトル」は見つからなかったからです。

それで今度は「下着のパンツに毒物が塗られた」と言い分を変えたのですが、これがまた結果的に墓穴を掘りました。ナワルヌイ氏の服を脱がせた医療スタッフが誰も化学防護服を着ていなかっただけでなく、「ノビチョク」が塗られたという下着を 当初、何も知らなかった病院スタッフや警察官が素手で触っていたことです。触ったうちの誰も中毒症状を訴えていません。

 

(上の写真:映画「ナワルヌイ」の1シーン)

 

これは ノビチョクは取り扱いが難しすぎて、それに触れた人全員が死亡してしまう(ロシアの化学者によれば、いったん中毒になれば、回復することは不可能との話)ので開発を断念した物質という事実と大きく矛盾するものです。

 

そして、ドイツがナワルヌイ氏が「ノビチョク中毒」だと断定したのは 血液サンプルのからノビチョクが検出、分離されたというものではなく、あくまで 私達が健康診断の際に採血で測定するような血液検査項目でいくつか異常値が出たので、そう想定して言っているだけなのです。

 

しかも、ロシアが分析のために血液サンプルの提供をドイツに要請していたにも関わらず、それを断っている というのもやましいことがあるからなのでしょう。(医学雑誌の”ランセット”の記事でも 他の病気や薬物摂取でも同様の血液検査値異常は出るとも言っている

 

そして、パンツに塗られたというストーリーだと、水筒以上にさらにおかしくなるのが 彼が飛行機の中のトイレに入ってから体に異常が発生するまでに1時間以上を要していることです。(最初の症状は数時間後に現れた と上のURLの記事にあります。)

 

そして、この本を書いたジャック・ボー氏が結論付けているのは下のようなことです。

ボー氏はナワルヌイ氏のことを ”極右の反民族的少数人種差別主義者であり、「ロシアを転覆させるためのより大きなプロジェクトの小さな歯車」であり、「国際社会でロシアの信用を失墜させ、最終的にはロシアを孤立させるための包括的な取り組みの一環”である」と述べています。

同氏(ジャック・ボー氏)は、ナワリヌイ氏に対するノビチョク中毒という西側の主張が虚偽であるという証拠も含めて次のように述べている。「神経剤の兆候が 見つからなかったので、我々のメディアはそれを報道しなかっただけなのです!」

 

なお、このナワルヌイ・ノビチョク事件のことを インチキだと断言したNATOにも関わっていたスイス軍の参謀本部の元大佐、ジャック・ボー氏についてですが、彼はウクライナとロシアの戦争についても、非常に優れた記事を書いています。

 

私が過去記事で紹介したジャック・ボー氏が2年前に書かれた下の記事は 現在のウクライナとロシアの戦争を理解するには必読の論文だと思います。全員に読んでいただきたいという位、素晴らしい内容です。