今日はいよいよ出発の日である
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万座に向かう電車は上野乗り換えの表示があったが、YAHOO路線案内で調べると大宮で特急に乗るほうが早くつけることが分かったので大宮へと向かった。
乗り込んだ特急「草津5号」は旧式の特急電車だったが、少なくとも中の椅子は改装されていて快適に終点の万座・鹿沢口まで向かうことが出来た。
途中草津を過ぎた辺りから雪が舞い始めた。
そして終点の万座の駅はうっすらと雪が積もっていた。いよいよ雪国に来たのだと思った。
個人的な感想だが、「OO口」という駅名、地名は一種の不気味さを感じさせる。
特に今回の場合、万座口でも雪が積もっているのに山の上に言ったらさぞかし恐ろしいことになっているに違いないという恐れを抱かせた。
バスに乗り込んでその恐れは的中した。
曇っていたので怪しいなとは思っていたが、山の上に言ったら吹いていた。
下と違って粉雪なので雪が舞い上がって嵐のようになっている。
万座バスターミナルというところでいったん下ろされたが、「おいおい、こんなところで2週間缶詰になるのか」という恐れがやはり大きかった。
リゾートに対する期待はいつの間にか吹き飛んでしまっていたのだった。
雲ってしかも雪が降っていたので万座温泉地帯は不気味さが支配していた。
動くリフトは不気味な機械の一部にしか見えず、その上にある万座高原ホテルは霞んでいて恐怖の館のように感じられる。
ここでバスを乗り継いで更に小さなプリンスホテル専用のバスに乗り込んだ。
2分ほどでプリンスホテルが見えてくる。
しかし、はじめに見えてきたものはぼろぼろの居住区だった。
ああ、あれが私がこれから2週間お世話になる寮なのかと思うと恐怖が体を支配した。
バスが止まってホテルの入り口が見える。
しかし、体は入りたくないと拒み続ける。初めのこの瞬間はいつも緊張するものである。
しかしあまりぐだぐだしていても不審に思われると思ったので意を決して入り口に向かった。
「いらっしゃいませ」ではなく「お疲れ様です」と迎えられた気がするが緊張して今となっては覚えていない。
とにかくフロントのお姉さんに話しかけたのだけはおぼえている。
するとその人は説明してくれたのだが、あまりわかりやすい説明ではなかった。
どうせなら連れて行ってくれればいいのにと思ったが、派遣相手にそこまではしないのだろう。このへんの派遣ならば覚悟しなければならない。
とにかくここでは人間の扱いを受けることも出来ないかもしれないのだ。
一歩一歩たしかめるように館内を進んでいく。
そんなに広いホテルではないことはすぐにわかった。
従業員用と思しき通路を進んでいくがあっているか自信がなかったので2人ほどに聞いて一番奥の部屋をノックした。廊下は薄暗くて気味が悪い。
どうして初めて来た場所というのはこれほどネガティブにとらえられてしまうのだろう。しかし、最低2週間私はここから逃げ出すことはできないのだ。
一方でプリンスホテルの社員さんでいろいろと教えてくれた山中さんというお兄さんは感じの良い人だった。
まだ若く入社2~3年目という印象がある。
別室に案内されていろいろと説明を受けるがまだ緊張しているせいで世間話をするには至らなかった。
チェックのところを見ると制服とかシーツとかいろんな項目があった。
そうか、今回は制服を着るのかと当たり前のことなのに少し不思議な気持ちになった。
制服を着るのはこうらくえんでバイトしていた時以来だが、今回の制服のほうが明らかにかっこいいことは一目瞭然だ。
制服の色から察するに多分プリンスホテルのカラーは緑のようだ。
フロントのスタッフもこの緑色の制服に統一されている。
しかし、まとめて言えばタキモトは扱いは厳しかったが、より濃かった気がする。
食事もみんなで話をしながら一緒に食べていたし、よく会話をした。
部屋だって自分の個室が与えられて中に洗面台、ベッド、小さな机、箪笥などいろいろなものがそろっていた。風呂に至っては従業員用とかではなく、お客さんと同じものを使うことが許されて、毎日入浴を楽しんでいた。
しかし、プリンスホテルでは、営業用のスペースは限りなく豪華なものの、従業員用のエリアはカイジに出てきそうな世界である。
一部屋に4人の男が入れられ、ベッドのスペースはいつか見学したアメリカの戦艦さながらである。
自分のスペースといえばこのベッドくらいしかないのが現実だ。
なんせあまり広がりがない。
自分の目の前には服がかかっていて、頭の上には荷物が並んでいる。
本当にここ意外の場所から出ることを許されていないかのようだ。
談話室のようなものがあることを期待したがそんなものはなかった。
食事は寮の食堂でするのだが、お客さん用のものとは完全にわかれている。
まるでWID花小金井のような感じだが、WIDのほうがクウォリティは上であることはすぐに気付く。
今日のメニューは麻婆豆腐だったが、味付けが悪かった。
ラー油をかけてやっとのことで流し込む。ここに来てタキモトが懐かしくなるという奇跡が起きた。
それにあの時はトイレも一人で使えていたし・・・ もっと私を驚かせたのは風呂だ。
はじめの案内には館内風呂と書いてあったので、てっきりホテルの風呂に入ることができるのかと思っていたが、実際は「寮の館内の風呂」という意味だった。
そしてこの風呂がまたひどい。
ひどいという表現は合っているかどうか分からないが、とにかく我々が普段入るような風呂ではないのだ。
どうなのかというと湯煙で何も見えない。
しかも外気がダイレクトに入ってくるように設計されているので(これは明らかに設計ミスだと思うのだが)常に寒いという状態である。
あの風呂を満足して使っている従業員は果たしているのだろうかと疑問を持たざるを得ない。
しかし、温泉の質だけはたしかによかった。
サイトにも書いてあったとおり、「名湯中の名湯」と言われるとおりに硫黄泉で肌がすべすべになった。
面白かったのは外気が入ってくるところにつららが出来ていたことだ。
室内につららが出来るとは日本中探してもここくらいではないだろうかと早くも「ナニコレ珍百景」ノミネート候補が見つかった。
とりあえず明日からは戦いが続くだろう、こんなことだったらはじめから普通にスキーに来ればよかったと思わずに居られないだろうがとにかく頑張ろう。