日本に帰って2週間。
僕は、東京メトロの車両に乗っていた。
日本にいる時には何度となく乗った電車。友人と飲んだ後、電車の中にも飲み会を終えて家路を急ぐ人が大勢いる。
帰国後、東京でアパートを借りたのは、池袋にほど近いある駅だ。
やはり、学生時代から池袋周辺を拠点としていただけに、全く新しい場所ではなく近場を選びたくなるというのが人の常だ。
7月上旬の空気は蒸し暑く、電車の中も冷房が効ききらず、もわりとしている。
駅に到着すると何人もの乗客に混じって夜の東京へと吐き出された。
珍しく晴れた空には月が出ており、高層ビル群を照らしている。ああ、日本に帰って来たのだと改めて実感する。2年いなかっただけなのに、この日常がひどく異質なものに感じられる。
僕は少し酔った頭を抱えつつ、駅の階段を上っていく。一段、一段と東京の夜に向かって上がっていく。
あれ?何故だ?
他の人はみんな上に上がっていくのに、自分だけは上がっていけない。いや、それどころかだんだんと出口が遠ざかっていくではないか!
見えていたはずの月や高層ビル群は、上へ上へと小さくなっていき、自分はだんだんと地下に向かって沈んでいく。
東京の夜が視界から消失するのと同時に、ふと見慣れた景色が頭上に浮かんだ。
連なるいくつもの丘に、からりと乾いた乾季の青空。揺れるバナナの木の間に浮かんでいたのは、いくつもの同僚の笑顔だった。
その絵画のようなワンシーンがルワンダの景色だと気付くのに時間はかからなかった。
一体、自分が抜けた日常は、どのように流れているのだろう、同僚たちは元気に日々を過ごしているのだろうか・・・
ここでまた意識が飛ぶと、次は自分の部屋だった。
1年半以上住み続けたルワンダのアパートの部屋。そして、カーテンの隙間からわずかに差し込む5月の日差し。
離任まで1か月を切り、どうもこんな夢ばかりを見る。