さわやかな9月の風のなかを空飛ぶフライパンに乗って、宇宙クジラが棲む遙かな銀河へ、巨人族が暮らす深い海の洞へと、冒険の旅に出かけてみませんか?それとも、辺境惑星一帯を爆笑の渦に巻きこんだ「愛しのメアリ・ルー」を上演中の宇宙船劇場のほうがよいですか?アメリカSF界でブラッドベリ、スタージョンと並び称される詩人ロバート・F・ヤングが、愛に渇き、倦怠に沈むあなたに贈る、心温まる珠玉の名品集。
内容「BOOK」データベースより
ロバート・F(フランクリン)・ヤングはアメリカSF作家、40歳を超えてパートタイム・ライターとして執筆するも文壇での交流は希薄、彼の死の直前になり鉄鋼会社を定年退職した後、学校校務員を10年勤めていた事が解ったという異色の作家。本書は表題作品『ジョナサンと宇宙クジラ』を含む計10の短編集である。彼の代表作と名高い「たんぽぽ娘」は版権の関係上収録されていない事を訳者が残念がっている・・・
ロバート・F・ヤングが描くSFは、ファンタジー色が強く印象的には非科学的でお伽噺に近い。複雑な世界観が構築されていたり難解な心理描写や登場人物の背景なんてものは存在せず、むしろ純粋で単純な設定が多い気がする、SF界でビックネームとは言えない彼だが密かに熱烈なファンを生み、一度体験した読者は感動の涙をもって強く印象に刻まれる彼の魅力はなんなのだろうか?シンプルイズベストを褒め言葉として使うと最適かもしれない、ロマンチックで叙事詩が奏でるような愛の言葉がストレートに綴られた作品は爽快感を伴って読者の胸に届く、これぞイノセンスと言っても過言ではないぐらいに何事にも妥協し納得して生きている大人が読めば、どこか後ろめたい気分になり気恥ずかしくなってしまう程に純粋な価値観が描かれている、とても美しい。まさに純粋(ピュア)な物語が並ぶ。
ロバート・F・ヤングに関しては、ビブリア古書堂シリーズに作中「たんぽぽ娘」が登場する事からその名を知った人が多いのではないだろうか?私はあまり記憶力が良い方ではないためにすっかりと忘れて後から名前を思い出したのだが・・・ビブリア古書堂派生で読んで虜になった読者も多いのではないかなと思う作家です。最後にオススメの短編を、表題作「ジョナサンと宇宙クジラ」も捨てがたいのですがイチオシは「リトル・ドッグ・ゴーン」ですね、人間と動物の友愛を描く作品は数あれど空想上の動物を使ってここまで心を揺さ振られるのはそうはないような気がします、感情移入型で読書をするタイプの人は号泣してしまうかもしれませんね。
愛玩無垢な動物に対して、純粋な程に欲求や欲望に身を委ねる主人公も対照的で光る存在!不思議と彼を憎む人はいないのではないでしょうか?日本昔話の腹黒いんだけど天罰を受けちゃって相殺されてしまう人物ってイメージでしょうか・・・なんにせよヤングの描く人物で後味の悪い人が少ないのも彼の作風の一つかもしれませんね。殺伐とした世の中を憂う~と荒んだ気持ちの人は是非ヤングワールドにお越しくださいませ。誰かに薦めたくなる一冊。
早川書房
売り上げランキング: 309,313




