>EP盤
>タイトル:Wix Wave
>アーティスト:Deep Sea Diving Club
>リリース日:2023年 5月 10日
>記事作成日:2023年 6月 29日
聴きました!
お初のアーティストさん。今回、物凄い不純な動機でチェックさせてもらいました(笑)。
先に、気になった理由を述べておきますね…“5月10日”に、“トイズファクトリー”から、“EP盤(≒ミニアルバム)”でのデビューなんだそうです。ぼくが愛してやまないMr.Childrenも、31年前にトイズから5/10にミニアルバムでデビューしてるんですよね。「だから何?」と言われるとそれまでなんですが(笑)、なんかこう、「もしかしたらミスチルに出会った時の衝撃を追体験させて貰えるんじゃないか?」みたいな勝手な期待を抱いてしまいまして。
別に、作風が似ててほしいとか歌声やプレイが似ててほしいとか、そういう事じゃないんですけどね。極論、ラップだろうがインストだろうが、「うぉぉぉぉっ!」と思わせてくれればそれで良いというか。
『bubbles』
シンセは“鋭角”に、バンドは滑らかに。音数は決して多くなく、だけどリズム隊を始めとする各パートは大胆に、グルーヴィに。シティポップのスタイリッシュさを持ちつつ、割とエモーショナルでもある。そのバランスが独特。
『フーリッシュサマー』
エレピがラグジュアリー…“艶めき”はありつつも、じっとりはしていなくて、タイトルにもある“夏”にとてもしっくり来る音。暑さはあるけど湿度はない、みたいな?(笑)。
メロディラインは、結構テクニカルな事をしている。でも、それをあくまでさらりと歌いこなしてるのがニクい。アツいけど暑苦しくなくて。ただ、ボーカルについては、たまに急に“コブシ”とすら言いたくなるくらいに力のこもった瞬間があって、ぶっちゃけそれは“新鮮味”というよりは“違和感”(笑)。
『Left Alone feat.土岐麻子』
急にビッグネームとのコラボ。でも確かに、近年の土岐さんのシティポップ寄りの洒脱な作風に、とても似合った曲。土岐さんソロパートも結構な割合である訳ですが、フツーに『PASSION BLUE』や『Twilight』辺りに入っててもおかしくない雰囲気ですもんね。
軽快で垢抜けた、シティポップチューン。
『リユニオン』
サビの「Sing a song with we!」のところが頭から離れなくなります。頭にこびりつくというか(笑)。初めて聴いた時から、曲の後半ではもう一緒に口ずさんでしまう感じ。
小刻みなビートのアッパー感と、ギターやボーカルのゆったりと余裕のある感じとのミスマッチが非常にマッチしていて良い。
『Miragesong』
ぼくは、この曲で作品の流れがガラリと変わる気がしています。レコードで言ったら、ここからB面の感じというか。別にアレンジの雰囲気が極端に変わるとかじゃないんですが…前半は、近年のリバイバルシティポップに強く感じるチル感というか、ガツガツやらずにあくまで涼しい顔を崩さない余裕みたいなものを感じたんですが、この曲にはある種の悲壮感とか、情念とすらいえるくらいにエモーショナルな世界がある。昭和の歌謡曲にも通じるような、こってりとした“熱さ”。例えば男女の別れを描く際に、昭和のクリエイターは「やっぱりお前が一番大事だ!」からの“結婚式で、花嫁を奪って逃げる”みたいなのが最適解的なところがある気がしていて(笑)。反対に近年のクリエイションは、“お互いのよりよい将来を願いながら、笑顔でさようなら”が最適解だと思うんです。本作の前半は後者のようなドライさがあって、でもこの曲には昭和の暑苦しいクリエイションを見た気がするんです。それが凄く良かった。
『goodenough.』
再びチル感に満ちた曲調に戻りつつ、でも前曲で焚き付けられたエモーショナルの残り香みたいなもので、この曲も結構エモーショナルでドラマチックに聴こえる。歌詞も、ユーモアもありつつ結構な事を歌ってたりもするし。「非常識な人間じゃなくちゃ 死の瞬間まで」っていうフレーズが、なんか耳に残るんですよね。なんか、このフレーズがやたら魅力的に聴こえる(笑)。
『ゴースト』
音が、本作随一って程に洒脱。都会的で、スタイリッシュで、非常にクール。クラブミュージックをバンドに落とし込んだような音。
一方で、歌詞は物凄くじっとりしとる(笑)。冒頭が「君のゴーストを見た」なのだけれども、ゴーストはどっちだ?ちゅう話ですよね。サウンドのクールさと歌詞のじっとり感の、その組み合わせがとても良い。
ラップのアプローチも、クールでかっこいいっす。
そんな、計7曲。
ざっくりと言っちゃうと、“イマ風のバンド”ですね。シティポップを、R&Bテイストのシャープな音で構築する作風。ちょっとトラップの要素もあるのかな。
一方で、『ゴースト』や『Miragesong』のところで触れたような、ある種の“暑苦しさ”を感じる歌詞が凄く印象的でした。そこがなければ、正直「イマ風の人たちだなぁ」で終わっちゃってた可能性があるけど、そのギャップのおかげでなんか凄く気になる人たちになっています(笑)。死語に近いかもしれませんが、「あなた方は、“草食系”なの?“肉食系”なの??」という…そこが全然見えなくて、凄く面白い。
“メジャー”デビュー盤は本作ですが、インディーズでもリリースがあるようなので、ちょっとそっちも聴いてみたいなぁと思いました。
…あと、ミスチルに準えちゃったせいで、ハードル上げて聴き過ぎました。ごめんなさい(笑)。
お気に入りは、
#01 『bubbles』
#05 『Miragesong』
#07 『ゴースト』
この作品が好きなら、
・『DIVE』/DATS
・『夜とアルバム』/YONA YONA WEEKENDERS
・『Emulsification』/FIVE NEW OLD
などもいかがでしょうか。
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