>オリジナルフルアルバム

>タイトル:SENSE

>アーティスト:Mr.Children

>リリース日:2010年 12月 1日

>記事作成日:2022年 5月 11日

>1回目の感想はこちら






久しぶりに聴きました!


ミスチル30周年week!

ミスチル新ベスト盤発売日!!

今週は、ミスチルに浸るのさ!!!




『I』

ぼくは、不穏な曲やひねくれた曲や妖しげな雰囲気の曲から始まるミスチルのアルバムが大好きなんだ! この曲は、その究極みたいな曲。アナログなサウンドの上で展開するのは、もはやグロいとすら言えそうな程に毒々しくてサイケデリックな歌詞とメロディ。「死にたいとか言い出す」のを「思い通りにいかない時の一発芸」と言い放つ皮肉。その狂気にあてられると同時に、心当たりがあり過ぎて恥ずかしくなる。穴があったら入りたい。

桜井さんの歌声も、『星になれたら』と同じ声帯が発しているとは信じ難い狂気(笑)

リリース当時は買えなかった、ちょっと良いヘッドフォンで今回聴き返して…音の良さと深さに、息が詰まる感覚がありました。音としても、最高峰。


『擬態』

正にトビウオのように、跳ねるような瑞々しさがある曲。でも、歌詞的にはお気楽さや能天気さとは無縁の、重厚なもの。この時代に、「障害を持つ者はそうでない者より不自由だって誰が決めんの⁉︎」という一節。ハナから批判的に捉える敵対的な人なら、確実に穿った聴き方をして的外れな批判を飛ばすんだろうなぁ。読解力を駆使すれば、むしろ“ダイバーシティ”なんてスカした横文字なんかよりもよっぽどその考え方を的確に表している一節だと思うけど。

ちなみに、本作のCMの「トビウオニギタイ」の奴は、夢に出るほど怖かった(笑)


『HOWL』

本作にはちょっと似つかわしくないくらいに、軽快で爽快な曲。実際、こんなに華やかな曲なのに今回聴き直すまでちょっと存在が薄かった気がしますもん。一般的にはキャッチーで“ホーム感”のあるこの曲も、ねっとりとした独特な空気感が漂う本作の中ではちょっとした“アウェイ感”が(笑)


『I'm talking about Lovin'』

洒脱な曲。スタイリッシュで、軽快で、垢抜けた曲。この曲もまたこのアルバムの中においてはアウェイ感…と思ったところで、「いやいや、先入観を無くして聴けば、このアルバムは実はそもそもそんなに重苦しいものではなかったのではないか?」と思い至る(笑)

Jenさんのドラムが、物凄い軽快なんですよね。この方、『I』のコッッッテリしたプレイとは真逆のこんな音も出せるから凄いんだ。家系ラーメン屋が、懐石料理も出せる感じか。


『365日』

本作随一のラブバラード。うん、今書きながら思ったけど、“ラブバラード”という形容が凄くしっくり来る曲だ。

平易な言葉を使って、特異な程に強い愛を歌っている。アレンジもボーカルもプレイも凄くさらりとしているのに、聴くとガツンとぶん殴られるような衝撃がある。幸福な衝撃。ミスチルのラブソングといえば『抱きしめたい』であり『君が好き』だけれども、抱えている愛の量で言ったらぼくはこの曲のほうが桁違いに多いと思う。

そう思える相手がいる人には最高の曲で、そう思える相手がいない人には地獄のような曲(笑) いや、ぼくも、長い事地獄だったので…。


『ロックンロールは生きている』

純度100%のラブソングのあとは、毒素100%のダークロックチューンへ。

本作アルバムのコンセプトは“Mr.ChildrenがMr.Childrenを超える事”だったんだそうですが、確かにこの曲は、それまでのミスチルの“規格”を大きく飛び越えていた…後にも先にも、ここまでMr.Childrenを逸脱した曲は他にないんじゃないかなーとぼくは思っている。

ミスチル楽曲は、どんな曲でも例外なく“キャッチーなメロディ”というのが構成要素になっていると思うのですが、この曲は、ボーカルのメロディラインなんかよりもバンドサウンドのほうが断然前面に出てる。そう、この曲は、サウンドを楽しむ曲。例えば、一歩を踏み出せない自分の勇気の無さを吹き飛ばしたいなら『終わりなき旅』や『足音〜Be Strong』。胸のモヤモヤを晴らしたいなら『I'LL BE』(シングルver)や『箒星』。余計なものを吹っ飛ばして純粋な愛を伝えたいなら『君が好き』や『抱きしめたい』…そんな感じで、特定の感情を吹き飛ばしたりモヤモヤを晴らしたりしたい時にしっくり来る曲は数多あるけれども、この『ロックンロールは生きている』という曲に関しては、シチュエーションもそこに至るまでの過程も対象者も想いも感情も喜怒哀楽もなにもかにも関係なく、ただただ全部を吹っ飛ばして“まっさら”にしてくれるエネルギーがある。全て吹っ飛ばして、「よしまたここから、ゼロから、やってみよう」みたいな。応援歌的な歌詞では一切ないし、サウンドも歪みに歪んでいるけれども、ぼくの中では、ゴチャゴチャをリセットしてくれる大切な曲。

そして、この曲の再生ボタンを押すたびに、ヘッドフォンのボリュームを自然にMAXにしてしまう曲でもある(今日もした)。


『ロザリータ』

この曲も、前曲とはまったく別のベクトルで個性的。ねっとりとした、オトナの魅力に溢れている。キケンなモノ程魅力的…そういう感じか?(どういう感じだ!)。

何語なんだろうか。何て意味なんだろうか。今もって分からん(笑) でも、その意味のわからなさすらも、このオルバムは“個性”な気がします。ヤンキーも、オバケも、UFOも、宗教も…曖昧でよく分からない側面があるからこそ惹かれる。その感じに近い。

よく分からんけど耳と頭に残るタイトルは、ちょっとセンスがポルノグラフィティっぼく感じたかも(曲の中身の話では一切ないですよ!)。


『蒼』

まぁ、正直アルバムリリース当時に聴いた印象としては、「地味だな」でました(笑) ところがどっこい、数年前のライブで聴いたこの曲は、映えに映えておりました。演奏が力強く音数は少ないからこそ、真に迫ってくる。この曲はライブで真価を発揮すると思ってます。

とになく美しいミドルバラードなんだけど、美しいだけででは当然ない。歌詞の中にはドラマがあり、そして聴き手の頭の中にあるドラマのBGMとしても流れ出す。優男がふいに見せた腕っ節の強さみたいなもので、こら一瞬で恋に落ちますね(笑)


『fanfare』

終盤戦、一気にテンションぶち上げ。『ロックンロールはー』はダークポップス的な匂いをそこらじゅうにらばら撒いて居ましたが、こちらはもっと健全な(笑)方面でどんちゃん騒ぎが起こっている。

冒頭のギターソロが空気を割いて、一気にボルテージ最高潮。聴くというより、かみしめるというより、食らうというのが正解な、そんなロックチューン!! 


『ハル』

これも、ライブで化けた曲という認識。しかも、『SENSE Tour』ではなく『重力と呼吸 Tour』での、あの演出込みのこの曲が、だいぶ印象的だったなぁ。それまでは、ぶっちゃけ、「地味な曲」くらいの印象しかなかったんだけど(笑) でもよく考えたら、あれだけ煽りに煽られまくった前曲のテンションを、このたった一曲でここまで落ち着かせるだなんて…“単なる地味な曲”なハズがないですよね。

聴く時々のこちらの状態で、印象が変わる曲。とにかくぽつねんとしていて寂しげな印象を持つ時もあれば、凛とした強さみたいなものを感じる時もあって。自分の状態チェッカーとして使える曲かもしれない。


『Prelude』

プレリュード(前奏曲)を、アルバム終盤に。でも、この流れで聴こえてくるこの曲のしっくり感が半端ない。

この曲なんかは、のちの作品『未完』とかの源流になってそうな印象。無邪気で、衝動的で、そして凄く楽しそう。勝手な推測だけど、この時期にはもう、小林武史Pを離れてセルフプロデュースに向かう流れが始まりつつあったのかもしれない。そんな気がする、アップテンポナンバー。


『Forever』

ラストは、何とも切ないバラード。歌もアレンジも淡々としていて、淡々としているからこそそこにある感情が立体的に感じられる。大切な人との別れというのは、よくあるヒットチューンのように“寂しい、悲しい”のシングルイシューではあり得ない事が、この曲を聴くとよく分かる。怒りというか、相手への反発的な気持ちも芽生えるだろうし、反対に、もうどうでも良くなってただただ脱力&思考停止してしまう場合だってあるでしょう。この曲は、感情的な心の動きを極力止めて、理屈で俯瞰で第三者的に“考える”事でメンタル的な危機を乗り越えようとしているように感じられるし、そうだとするとなんかもうこの主人公がいじらしくて可哀想でなんか泣けてくる。淡々としている事に泣けてくる。そして、そんな内容で曲タイトルが『Forever』な事が、凄く痛々しい…。

アルバムラストがこういうテイストの“お別れバラード”…なんかちょっと、『Atomic Heart』における『Over』を思い出しました。




そんな、計12曲。


前2作とは全く異なる、硬質で異質な作品。でも、『HOME』や『SUPERMARKET FANTASY』と“全く別物”というよりは、表裏一体のオモテとウラみたいなイメージのある作品です。


いわゆるフィジカルシングルが一曲も収録されてなくて、リリースのアナウンスも実際の発売日の間際で。ぼくはそんな本作の異質さをもって、「あぁ、日本の音楽産業もいよいよ転換期を迎えたんだな」という事を覚悟した記憶があります。CDそのものが、とりわけシングルCDというフォーマットが売れる時代は終了したんだなぁと。シングルなんて“握手券のオマケ”に成り下がった状況で、でもタレント性でではなく音で勝負したい人たちが、どういう音とどういうプロモーションでやっていくべきなのか…そういう事を試したアルバムなんじゃないかなぁと、ぼくは思っています。うん、ぼくはいつだって、ミスチルの変化を通して日本の音楽産業の変化を見ている気がするな。本作のリリースと、あとはミスチルのサブスク解禁が、二大転換点だと思ってます。「新譜を店頭に買いに行く、その道中の景色や匂いなんかも含めた記憶を提供したい」的な事を言っていた人たちがサブスクを解禁するって、かなりの転換点ですよ…。






お気に入りは、

#01 『I』

#02 『擬態』

#05 『365日』

#06 『ロックンロールは生きている』

#09 『fanfare』

#12 『Forever』






この作品が好きなら、

•『ライフ』/エレファントカシマシ

•『9999』/THE YELLOW MONKEY

•『WORLDILLIA』/ポルノグラフィティ

などもいかがでしょうか。






CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/


















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