〈ONE GOSHO この一節とともに!〉 男子部教学室編
高橋殿御返事(米穀御書)
地域広布の主体者は自分!
「青年・凱歌の年」がいよいよ開幕する。広宣流布大誓堂完成10周年の佳節に向かい、わが地域こそ、広宣流布の舞台であることを学び、使命の天地に勝利の凱歌を轟かせていきたい。
御文
その国の仏法は貴辺にまかせたてまつり候ぞ。「仏種は縁より起こる。この故に一乗を説く」なるべし。
(新1953・全1467)
通解
その国の仏法流布は、あなたにお任せする。「仏種は縁によって起こる。その故に一乗(法華経)を説く」のである。
背景
本抄は、駿河国(静岡県中央部)の富士方面で、門下の中心的な役割を担っていた弟子に与えられたお手紙の一部(断簡)と考えられている。そこからの推定により、高橋六郎兵衛に宛てられた御消息文とされているが、詳細は不明である。
本抄は別名を「米穀御書」という。その理由は本抄の冒頭に「同じ米穀なれども、謗法の者をやしなうは、仏種をたつ命をついで、いよいよ強盛の敵人となる。また、命をたすけて終に法華経を引き入るべき故か。また、法華の行者をやしなうは、慈悲の中の大慈悲の米穀なるべし」(新1953・全1467)とつづられ、法華経の行者を供養する功徳について教えられているからである。
解説
今回学ぶ御文にある、「その国」とは、本抄をいただいた門下が住む地域一帯との意味である。現代でいえば、住んでいる地域や、職場、家庭など、自身の関わるあらゆる場所と拝することができる。
日蓮大聖人は、弟子への限りない信頼を込めて“その地域の仏法流布は、あなたにお任せします”と仰せになられた。師匠からの期待に応えようと奮い立つ、門下一人一人の姿が、目に浮かぶようである。
“地域の広宣流布を成し遂げよう。その主体者は私だ!”。この自覚に立つ時、“今いる場所”が、師から託された“使命の天地”となる。
大聖人は、続いて「仏種は縁より起こる」と記され、一人一人に具わる仏の生命が、妙法に縁することによって現れるとの道理を示されている。私たちの、日々の実践に即していえば、折伏や訪問・激励など、「人に会う」活動そのものが一人一人の仏性を呼び起こす仏縁となるのだ。
旧友との絆を大切にしつつ、新たな友好を広げることにも挑戦したい。たとえば、毎朝すれ違う人に笑顔であいさつする。そういった、一つ一つの行動から仏縁が広がっていったエピソードは、枚挙にいとまがない。“近隣の方を大切にしよう”。その心で友好を結んでいくことが周囲の仏種を呼び起こし、地域に信頼を広げる第一歩である。
次に、「この故に一乗を説く」と記されている。「一乗」とは万人成仏の南無妙法蓮華経であり、「一乗を説く」とは、仏種を触発する妙法を語っていくことともいえる。
もちろん、なかには信心に無理解な人もいるだろう。しかし、相手の幸せを祈りながら粘り強く語り抜いていく。そこにこそ、自身の宿命転換があり、地域の三変土田(自分の一念の転換が、国土の宿命をも転換していくことを説いた法理)が現実のものとなる。
池田先生は、「一人一人の仏の生命を触発する人間主義の対話こそ、私たちが大聖人から直接、託された大聖業であるとの大確信で進んでいきたい。わが使命を晴れやかに自覚し、地域の人々の繁栄を願って、勇んで足を運んでいきたい。地味なようでも、私たちの一対一の『対話の拡大』こそが、『幸福の拡大』を実現し、『民衆勝利の拡大』を築きあげていく確かな道だからです」とつづっている。
目の前の一人を大切にすることが、広宣流布につながっていく――。さあ、「青年・凱歌の年」も新たな人材と共に、わが使命の天地を舞台に、大きく仏縁を拡大していこう。