近い将来、絶滅してしまうかもしれない絶品メシを「絶メシ」と言うのだそうです。
実は近年、冬になると昔を思い出したかのように、時々、なぜか猛烈に飲みたいと思うものがありました。
子供の頃、一緒によく遊んだ昔の友達なんかを急に思い出す感覚に似ているのかな
そういえば、もう何年・・・、いや。ウン10年単位で飲むどころか目撃すらしていないことに気が付いて、更にその思いは募るばかり。
その飲み物とは「オレンジエード」
ご存知無い方も多いと思いますので、ザックリご説明させて頂きますと、つぶつぶオレンジのホットバージョンとでも言えば解りやすいのでしょうかね
見た目的には、ガラス製の細長いグラスに銀色のステンレス製の取っ手の付いた容器で提供され、提供後の時間経過によるオレンジの粒の沈殿を上手く飲みやすくするためのパフェでも食べるかのような柄の長いスプーンが添えられていました。
モーニングサービスの文化が昔から根付いている尾張地区と名古屋市内には、昔から、街の至る所に喫茶店がございまして、私が昔から住んでいる北名古屋市(旧・西春町)にもかつては、昔ながらの喫茶店が数多く存在しておりました。
80年代の古き良き昭和の時代の風情が残る喫茶店(あえてカフェではなく、喫茶店)には、冬になると、どこのお店にもこのオレンジエードがあったものです。
メニュー表に「オレンジエード(冬季限定)」とか書かれていたりしてね。
恐らく、オレンジまたはミカンを搾った果汁をお湯で割って作ったであろうベースに甘さを足すべく蜂蜜がいきなり入っているお店もあれば、提供されてから好みで、砂糖を足すスタイルのお店もありました。
オレンジジュースをホットにするなんてキショイとおっしゃる方も少なくないと思いますが、コレがなかなかクセになる味なんですよ。
ところが、気付くとこの「オレンジエード」、令和の現代では、今どきなちょっとオシャレなカフェでは、どこにも提供されておらず、冷静になって考えてみると、私自身、ここ30年以上、口にしていないことが判明。
そこで、お店に無いなら、家で作って飲もうと思い立ち、カミさんに作ってくれと頼んだところ、まさかの、そういった飲み物があったということすら知らないことが発覚。
気になって、色んな地方の方にお聞きしたところ、たまたまかも知れませんが、どうやら、名古屋市内と名古屋に隣接した尾張地区、三河地区の一部の出身者には馴染みがあった模様で、他県の方はご存知無いという方にしかお会いできませんでした。
ウチのカミさんは尾張北部の江南市出身のため、どうやら、その飲み物に馴染みが無かったということなのか、それともたまたま知らなかっただけなのか・・・
よくよく考えてみれば、私も恐らく90年代以降は、その「オレンジエード」を口にすることなく、この歳になってしまいました。
無い物ねだりとはよく言ったもので、なんだか急に「オレンジエード」が恋しくなった私
しかしながら、こうも考えられるのです
もしかしたら、自分は、とんでもないことに気付いてしまったのかも知れない。
そもそも「オレンジエード」って、この辺だけのマイナー「名古屋メシ」だったかもしれないってことなのか
そんでもって「オレンジエード」って、人知れず絶滅してしまった「名古屋メシ」で、だとしたら、コレは愛知県民にとって、ものすごく大きな損失だぞ
こりゃ、何がなんでも「オレンジエード」を探さねば
そう思うと居ても立っても居られなくなり、ヘッドクォーターのグループラインで、ウチのメンバー様方にこの飲み物について聞いてみると、いくつかの有力情報が集まってまいりました。
それによると、どうやら、岐阜県民の方は、全く知らない未知の飲み物であるということ。
また、業務用問屋スーパーの「アミカ」様では、現在も「オレンジエード」の原液となる商品が販売されているものの、在庫が無くなり次第、販売終了となること。
・・・しかしながら、その商品、画像を送ってもらったけど、ちょっと違う感じ。
私が知っている昔の「オレンジエード」は、やはり、絶滅してしまったんでしょうか
そんな中で、最も希望が持てたのは、愛西市の「バンビ」様という喫茶店でまだ生存しているという超有力情報
しかも、その「バンビ」様は、なんと、スネークヘッドコンペの会場にほど近い場所で、よくよく考えてみれば、大会の際、私もお邪魔したことのあるお店じゃないですか
そうと解れば、善は急げ、思い立ったが吉日と同志を募り、いまだ存在しているのかどうかすら怪しい、もはやニホンカワウソのような存在の「オレンジエード」に会いに行きました。
古き良き昭和の佇まいを残す店内に入り、メニュー表を見ると確かにあった「オレンジエード」の文字。
お値段、450円也。
他のメニューには目もくれず、懐かしの「オレンジエード」をオーダーし待つこと数分・・・。
数十年の時を経て、運ばれてきたのがコチラ
数十年ぶりの対面に、あまりの嬉しさから、しばし放心状態・・・。
昔、幼き頃に見たようなウン十年選手とも言える銀色の取っ手の付いたガラスの容器に入れられ、柄の長いスプーンと共に提供されるあの頃と同じ風景。
私が思い描いていた「オレンジエード」像を構成するそのすべてに無駄が無い、昭和を感じさせるTHE・純喫茶のバンビ様の「オレンジエード」。
もはや、単なる喫茶店のいちメニューという存在を超越し、その神々しい貴重なお姿をついに拝むことが許された至極の瞬間です
そして、その興奮冷めやらぬままに、長い柄のついたスプーンで、ガラスの容器に中をかき混ぜ、ついに「オレンジエード」を口にした私・・・・・。
・・・・・ん
・・・・・なんか違うような
・・・・・もしや、コレって
・・・・・例の「アミカ」のヤツをお湯で割っただけ~
そうです。
明らかにインスタントテイスト全開の「オレンジエード」。
そこには、私が大好きだったあの頃の「オレンジエード」ではない、作業効率を最優先させた飲み物が「オレンジエード」として存在していたのでした。
う~ん、ちょっとショックだけど・・・。
でもね。もしかしたら「バンビ」様では、昔からコレが「オレンジエード」だったのかも知れないし、別にこれだって美味しいっちゃあ美味しい・・・そう思うことにしました。
思い出は美化されるものだし、何十年もいつまでも変わらず同じものっていうのも可笑しな話で、80年代に喫茶店で「オレンジエード」を喜んで飲んでいた子供だった私も今じゃ白髪交じりの50を過ぎたいい歳したオジサン。
たぶん、今となっては、多くの人が頼まないであろう「オレンジエード」というメニューを残してくれていることに、とりあえず感謝しないとだね・・・。
温かいオレンジテイストの甘~い飲み物であることには変わりないし、冬の冷えた体にじんわりと「オレンジエード」が優しく染み渡る。
コレはコレで、他のお店のメニューにあれば、きっと頼んじゃうだろうな。
「オレンジエード」という飲み物が、全国の喫茶店から、本当に無くなってしまったら、悲しいし絶対後悔すると思うので、また必ず来させて頂きます。
いつまでも長く続けて下さいね。有難う御座いました。
そんなことを思いながら、店を出て、次の目的地へと車を走らせました。
~後編に続く~