エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて -30ページ目

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『ハラがコレなんで』


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粋に生きることをモットーとする妊婦の光子が、自分のことはさておき、他人のために奔走する姿と、その彼女を取り巻く人々の悲喜こもごもを描いた人情コメディ。


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‘粋’と‘義理人情’を何よりも大切にする24歳の妊婦・原光子。
八方ふさがりの自分の状況なんかそっちのけで、泰然自若にドーンと構え、他人の幸せばかりを考えている。

そんなヒロイン像は、先行き不安で落ち込んでいる今の日本を元気づける……理想の‘ヒーロー’像!?


他人のために泣き、他人のために笑い、他人のために奮闘する光子。

決まり文句は、
「OK!」
「昼寝しよ!気楽に待てば、きっといい風が吹くから」
「ドーンと行こう!」

何の根拠もない勢いだけの言葉なのに、なぜだか妙な説得力があるから不思議。


光子の判断基準は「粋か、粋でないか」と単純そのもの。
義理人情を解し、細かいことは気にせず、ひたすら真っ直ぐ突っ走るのだ。


石井作品の主人公の共通点は~『君と歩こう』の女教師、『川の底からこんにちは』のOL、『あぜ道のダンディ』のオヤジと、世間からはちょっと(かなり?)ズレている変な人格ばかりで、超ポジティブシンキングな人物。

自分は正しいことをしていると信じ込み、よかれと思って行動に移すも……やることなすことタガが微妙にハズれているため、その度に周りの人たちは右往左往。
しかし、その‘勘違い思い込みパワー’と‘異常なほどのポジティブ’さで、いつしか周りの人たちに元気とやる気、小さな幸せをもたらしてゆくと同時に、観客にも元気と勇気を与えてくれる。


『ハラコレ』の主人公・光子も(主人公らしからぬ平凡な名前というあたりも逆にいい)同様のキャラ。
超ポジティブシンキングで、常に周りの人たちを引っ張ってゆく。
すべての判断基準は「粋か、粋でないか」と分かりやすいし、義理人情にあついのもそういった生き方が粋だと思っているから。(ある意味、勘違い?)

では、なぜ光子は‘粋な生き方’に、あれほど執着するのか?

その理由は、合間合間に光子の子供時代の回想シーンが挿入され、その生い立ちと彼女の一風変わった人格が形成されていく過程を描くことにより、明らかにされています。


光子は何か問題が起こると「OK!一旦、昼寝しよ。風向きが変わったらそん時ドーンと行けばいいんだから」と、こればかりで、昼寝して少し経つとその通りに流れが変わって揉め事もいい方向に進み……と基本的にこのエピソードの繰り返し。

だが観ているうちに飽きるどころか、‘くるぞ、くるぞ、そろそろあの台詞がくるぞ!’とワクワクしながら待ち望み、光子が「OK!~~」と言った瞬間に‘出たーー!’と何とも言えないカタルシスすら感じてしまう。


自分自身を犠牲にしてでも他人を助けるなんて生き方は、現代の人間が忘れているものであり、その光子の‘粋’に触れて慕うようになった人たちが長屋に引っ越してきて、錆びれていた長屋に昔の活気も戻ってくる。

このくだりは、お伽話のようであり、または落語の人情噺の舞台のようでもある。



引っ越して来たお隣りさんの部屋に勝手に上がり込んで、お近づきの印にタクアンをお裾分けしようとしたり、脚が悪くて寝たきりの清を「大丈夫だから!」と無理矢理に立たせようとしたり、食堂のお客が増えても光子が「OK!驕り!」ばっかりだから、結局は売上は以前と変わらないなど……光子の強引すぎるくらいの人情の押し付けは下手すると傲慢に映らなくもないのだが、光子のキャラがとても魅力的なので、それは全く気にならないし、観ている側は「全然OK!」と受け入れることができるでしょう。



ラストも興味深い。
「福島へ行こう!」
と陣痛に耐えながら光子が運転する車で福島へと向かう一向。

が、福島に着いて間もなく光子の陣痛がピークに達し……広い高原のど真ん中で、みんなが見守る中での出産となる。
(映画は、子供が生まれる直前の光子のアップで幕を閉じるのだが)

福島で(ただ実際のロケ地は富士山の麓あたりらしい)まさにいま子供が生まれようとしているその時、光子は言う。
「何があってもあんたを守るからね」


この映画がクランクアップした約一ヶ月後に、あの東日本大震災が起こり、福島も甚大な被害に遭った……ということを考えると、もちろんこれは偶然ではあるのだけれど、このラストシーンは非常に強くて重い意味をもってくる!
(その前の陽一と次郎との深い絆を描いたシーンも含めて)


ラストの舞台・福島で、明るい未来を感じさせる爽やかなハッピーエンドとなるのは、予期していなかったとはいえ、とても象徴的で忘れられないシーンとなった。



主人公の光子を演じる仲里依紗は、抜群の存在感と演技力で、完全に光子に成り切っている。(カメレオン女優の面目躍如!)


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石井監督の独特の世界観を真正面からドーンと受け止めての熱演。


髪の毛を後ろで無造作に縛り(前髪パッツンが可愛い)化粧っ気もなし、野暮ったい妊婦服でドタドタと不格好なガニ股歩き。
笑顔はほとんど見せず、ずっと眉間にシワを寄せたかのような仏頂面。
この光子のキャラがとにかく文句なしに面白く、且つ愛らしい。

かなり難しい役柄を仲さんは完璧に演じきっています。

特筆すべきは表情の素晴らしさ。
冒頭でテレビを見ている時のメチャ真剣な表情から、ラストの出産シーンで顔を真っ赤にして息む渾身の表情まで、全編に渡って魅せに魅せる!

それからちょっとした仕草も秀逸。
隣人の部屋の前にタクアンを置いて立ち去る前にタッパーを指で‘トントン’とするとことか、リストラ男の座るベンチに小銭を置いてこれまた指で‘トントン’。
何てことない仕草なんだけど、これが妙に可笑しい。
『時かけ』では足の指の演技が見事だった仲さん、今作では手の指の演技がお見事(笑)。

あと映画を観終えた後も、ずっと耳から離れない……
「OK!」
真似したくてもできないくらい独特な言い方なんですよね~この「OK!」が(笑)。


仲さんには、メジャー系作品に助演で出るよりも、『ハラコレ』みたいな小規模な作品でもいいから、これからも主演作中心でいってもらいたいですね。
仲さんの天才的演技力をじっくり堪能するには、やっぱ主演じゃないと~。
主演でこそ一番ドーンと輝く女優です、仲さんは!OK!



光子を取り巻く長屋の住人たちを演じる役者陣も好演。


ずっと光子に想いを寄せていた陽一役の中村蒼。
『行け!男子高校演劇部』のハジケまくりの演技から一転、朴訥とした雰囲気の青年を飄々と演じていました。


石橋凌は、これまでの役柄のイメージを180度覆し、どこにでもいるようなフツーのオッサン・次郎役。
喫茶店のママになかなか告白出来ずウジウジグダグダする様は、本当にじれったい(笑)。
でも、甥っ子の陽一を実の子供のように可愛がっていて(陽一を育てるために独身を貫いている)母親的存在の清を慕い、親身に面倒をみているというメチャメチャ‘いい人’なのです。

次郎の心からの叫び……「ママ!ママ!ママー!」を心して聞け!

それから‘石橋凌ファン’として衝撃的だったのが、光子が次郎の頭をおもいっきりパシンと叩くシーンだ!
いくら演技とはいえ、あの凌さんの頭を何の躊躇もなく叩くとは……仲さん、恐れを知らなすぎる(笑)。
でもこのシーンは大爆笑ものです。

また、凌さんにとってこの作品は新境地を開く記念すべき一本となった?
なぜなら、これまで多数の映画に出演してきた凌さんですが……なんとコメディ映画初出演なのだ。

かつてはヤクザ、現在は逆に刑事や判事などのシリアスな役ばかりだった凌さんが、55歳にして初めて演じたコミカルチックな役。これが見事にハマっていた。
これを機に、コメディにもどんどん挑戦してもらいたい。


あと忘れてならないのが、助演女優賞もののインパクトを残した清役の稲川実代子。
『川底』でのおばちゃん役も強烈でしたが、今回は出番も増えて目立ちに目立っています。

口は悪いし無愛想そのものだけど、人情味あふれる清。

「あたしはね、夫が死んでからこの歳まで‘いやらしいこと’は、全然してないんだよ!」
は、名台詞だ(笑)。


あと石井作品には欠かせない森岡龍と目黒真希が、出演しているのも(ワンシーンのみだが)嬉しい。



ちなみに、仲さん(長崎)、凌さん&蒼君(福岡)、斉藤慶子(宮崎)と、主要キャストはなぜか九州出身者で固められてるんですね~~ま、偶然なんだろうけど(笑)。



ところで、映画を観終えてからふとこう思った……光子はまるで‘女版・寅さん’じゃないか!

ふらりと故郷に帰ってきて、おいちゃんとおばちゃん、心優しき妹に迎えられ(この場合は、次郎と清、さくら的存在なのが陽一ですね)こうと決めたら一直線、よかれと思って周りの人間のために一肌脱ぐも、結局は振り回す形となり迷惑のかけっぱなし。
いい加減な性格で浮き世離れしてもいるけれど、でもどこか憎めず、みんなから慕われ愛されてもいる。

生きるのは不器用ながら義理と人情に熱く、粋な名言の連発……これはまさに‘寅さん的世界’だと、感じてしまったのです。(寅さんフリークの自分には、完璧ツボの世界)

寅さんお得意の口上の如く、光子の口からポンポン飛び出る数々の名言は、心に刻み込まれるでしょう。



ただ観る前の期待が高すぎてハードルを目一杯上げてしまい……『川の底からこんにちは』『あぜ道のダンディ』と比べると、ちょっと落ちるかなぁという感も無きにしもあらず。

いや、前2作と(特に『川底』と)比較さえしなければ、十分に面白い内容なんです!

ネットのレビューを見ても賛否両論に分かれてましたが、やはり『川底』と比べると……という書き込みが目立った。

もちろん、比べること自体がナンセンスではあるのだけれど……でも、どうしてもねあせるあせる
『川底』があまりにも凄い作品だったから、あれを越えるのは石井監督でも並大抵ではいかないのだろうなぁ……。


ユナイテッドシネマ浦和にて『ハラがコレなんで』を鑑賞。


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【出演】
仲里依紗、中村蒼、石橋凌、斉藤慶子、稲川実代子、並樹史朗、竹内都子、大野百花、近藤芳正、螢雪次朗、森岡龍、大石吾朗、目黒真希


【監督・脚本】
石井裕也




“「自分のことより、他人のこと」 周りのみんなを元気にする、粋な妊婦ヒーローの誕生!”


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「何もやる気が起こらないんですよ」
と泣くリストラされたサラリーマンのインタビューをテレビで見て、同情してもらい泣きの女……妊娠9ヶ月の原光子。

だが、そんな光子の方こそ、切羽詰まった状況にいた。


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お腹の子の父親はアメリカ人の元カレで、今はどこにいるのか分からず、お金も底をつき、完全に限界に達していたのだ。
しかもパチンコ店を営む両親には、「アメリカに住んでいる」と嘘までついている始末。

そんな両親に電話をするも……
「おお、光子!元気でやってるか?どうだ、アメリカは?How are you?」
「あ、あいむふぁいんさんきゅう」
「すっかりアメリカ人じゃないか~」
「……また電話するわ」


そんな光子は、イマドキの若者には珍しく義理人情に厚く、根拠のない自信に満ちており、至ってマイペース。
‘粋に生きる’ことが人生において最も大切だと考える彼女にとっては、多少の困難なんか全て「OK!」なのだ!


隣に引っ越してきた女の部屋に勝手に上がり込み……
「タクアン食べます?」
「何なんですか!勝手に人のウチに入ってきて!」
「あ、大丈夫です。あたし、そういうの気にしないんで。あたしのウチにも勝手に入ってもらっちゃって構いませんから」
「はあ?何言ってるんですか!」
「タクアン食べます?タクアン」


いよいよ行くあてがなくなった光子は、アパートを引き払うことにし、調度品やら何やらをリサイクル業者に買い取ってもらうも……
「たいしたモンがないので、逆にお金かかっちゃいますけど」

光子は6000円を渡し、
「OK!お釣りはいらない」

そして無言でタクアンを差し出すのだった。

遂に財布の中身は小銭のみ。光子はカートを引きずってアパートを出る……隣の部屋の前にタクアンをそっと置いて……。


公園にたどり着いた光子は、そこでテレビでインタビューを受けていたリストラ男と遭遇し……黙って全財産の小銭を手渡す。

「え?あの……」
「いい風吹いてない時は、昼寝が一番。焦ったり、慌てたり、しみったれた顔してんのは、粋じゃない。大丈夫!風向きが変わったら、その時ドーンと行けばいいんだから」
とベンチにゴロン。


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すると……風向きが変わった!

「ほーら、変わった!OK!行くか!」


無一文のくせにタクシーに乗り込んだ光子は、
「あの雲が流れる方向へ行ってください。OK!」


風に吹かれるままのように、小さい頃に住んでいた長屋へと赴いていた……無賃乗車で!?


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その長屋は、開発が進む周りから取り残されたような‘昭和’の雰囲気。
光子が子供時代に、パチンコ店の経営に失敗して夜逃げした両親と暮らしていた場所なのである。


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迷惑なくらい元気で毒舌だった大家のおばちゃん・清は寝たきりになっていて、「戦死した夫の元へ行きたい」と、床下にあるはずの不発弾が爆発する日を待っている。


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「光子、光子じゃないか!何しに戻ってきたんだい!?」
「あたしはただ、浮き雲について来ただけだから。強いて言うなら、風に聞いて」
「あんた、妊娠してんのかい?誰の子だい?」
「なんかジャックっていう黒人のアメリカ人が……あれ?アフリカなのかな、ホントは。まあ、とにかく黒くてデッカいんだけど、そいつが日本で困ってたから助けてあげたんだよね。それが粋だと思ったから。そのあと流れでアメリカまでついて行ったんだけど、流れで妊娠してさ、それで流れで別れて。でも、あたし別に泣いてないし、風の向くまま流れで帰国したんだよね。ま、人間なんて大なり小なりそんなもんでしょ。流れ次第、風次第みたいなところあるよね。いいじゃん、そんな細かいことは」
「それでこの先どうするんだい?」
「ここでドーンと産むよ。ま、おばちゃんには迷惑かけると思うよ。でもその代わり、おばちゃんの迷惑は全部あたしが引き受けるから……それって粋」
「あんたね、何でもかんでも‘粋か、粋じゃないか’で判断するのおやめよ」
「それ、教えてくれたの、おばちゃんじゃん。とりあえずさ、お金貸してくんない?OK!」

こうして光子は、清の面倒を見ながら、長屋で出産することを決意する!


貧乏人ばかりだったが、賑やかで義理と人情に溢れていた長屋も今では閑散とし、残っているのは……光子の幼なじみの児玉陽一とその叔父・次郎だけ。

二人は客がほとんど来ないレストラン(というより大衆食堂)の‘YOICHI'S RESTAURANT’を昔と変わらず営んでいる。


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そこにふらりと現れる光子。

15年前に「大きくなったら結婚してくれ。お前が一番好きだから」と告白して以来、その言葉にずっと責任を持ち、光子を思い続けていた陽一は、心の中では再会を喜ぶも、動揺を隠せない。

「店は汚いけど相変わらず旨いなぁ、レバニラ炒め」


陽一は両親に捨てられた自分を男手一つで育ててくれた次郎に対し、「自分だけが幸せになってはいけない」と感じている。


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その次郎も、喫茶店‘べる’のママに長年想いを寄せながらも、お世話になった清を残して、ママに想いを伝えることなんてできないと思っていた。


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「妊婦は鼻が敏感になってるからさぁ……やっぱ白いお米はNG!」
「そう言いながらモリモリ食ってんじゃねえかよ!」

そんな二人のところに、いつものように清に夕食を届けにきた陽一は、光子に預金通帳を渡し、
「お腹の子供の面倒は俺がみる!15年前だけど、俺はお前に好きだと言ったからその責任がある」
「粋だねぇ!好きだなんて言葉、屁よりも軽い時代にねぇ」
と通帳の残高を見て、
「ハ~、あすこも経営大変なんだね。こんな額じゃ、人の子供はおろか、メダカの面倒さえみれないよ。そりゃそうだよね。店汚いし、店員無愛想だし。OK!あたしがあの店、面倒みる!」
「え!?いや……あの……」
「ま、あたしもハラがコレなんで、たいしたこと出来ないかもしんないけどさ、任せて。OK!」


昔から相変わらずの貧乏な住人たちが待っていたが、皆優しさが裏目に出て元気のない大人たちばかり。


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出産間近&父親なし&お金なしのかなりの限界であるはずの光子だが、それでも自分のことを棚にあげて、他人を助けようとするのだった。


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翌日から、光子の気合いの入った客引きが始まる。
外に出て行ったかと思うとどこからか客を連れて来て……‘顎’をしゃくって店内に誘導し、なぜか厳しい表情で……
「いらっしゃいませっ!」

そしてリストラされた客の身の上話に本気で涙し、励まし……
「焦ったり、慌てたり、しみったれた顔してんのは粋じゃない。大丈夫、風向きが変ったら、そん時ドーンと行けばいいんだから。今は気楽に待っとこうよ」

時には……
「OK!今日は全員、あたしの奢り!」
「おーーーーーー!」
「OK!」

やがて光子を慕う客で、店は繁盛し始める。

「最近、光子のお蔭でお客さんが増えたよ。でも、売上は全然変わってないけど……」



産婦人科の定期検診では、
「逆子だから難産になるかも。安定期がなかったんだね」


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「大丈夫!今までもこれからも、あたしの人生に安定期なんてないんですよ、先生。でもそれでいいんです。自信、ありますから」


「子供のために安静にしてろ」
と心配する陽一には、
「子供のため子供のためって、大人が粋じゃなかったら、子供だって生まれてきたいと思うわけないでしょ。大人がしっかりしなきゃ、何やっても子供のためになんかならないんだからね」


次に光子が取り組んだのは、陽一と次郎の‘結婚問題’。

光子に「俺が面倒みる」と言いつつも、自分だけが結婚するわけにはいかない陽一。
ママが店を閉めて病気の母親がいる福島に帰ろうとしているのに、引き留めることもできない次郎。

「いなくなってもいいんですか?」
「…………」


じれったく思った光子は、孤軍奮闘し、一気に問題を解決しようと考え……
「OK!福島に行こう!」
「はあ?」
「みんなで福島に行こう!」


と、そんなところへまたしても夜逃げしてきた光子の両親がやって来る!
「お前、何でここにいるんだ?アメリカじゃなかったのか?どういうことだ、光子!」
「しかもあんた妊娠してるの?どうなってんのよ?」
「OK!それ、風に聞いて。あたしはお父さんに聞かないよ。なんでここにいるのとか聞かないよ。だって、それ、粋じゃないじゃん……聞いたり聞かれたり。雲に聞いてごらん。なんでフラフラ流れてるんですかって。そしたらこう言うよ。風に聞いてごらんって」


光子のお腹に驚く両親、次郎を叱り付ける光子、結婚はしないと宣言する次郎、早く死にたいと嘆く清……長屋は大混乱に陥る!

「OK!一旦、昼寝しよう!気楽に待ってれば、そのうちきっといい風が吹くから」

その光子の号令で、昼寝を始めると……そこにあっと驚く一陣の風が吹く!

「OK!行くよ、福島!」


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「お母さん、フラフラしてたから、あんたにいろいろ迷惑かけたね。でも、これからはもっとかけるよ。でもいいじゃない。あんたもお母さんに迷惑かければ。お母さんの準備はOK!ドーンと行くよ!」


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スポーツ紙に掲載されていた『ハラがコレなんで』初日舞台挨拶の記事。


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見出しは‘10代ラストキス奪ったおっさん・石橋凌’。

凌さんのことをおっさんて……(-_-;

凌さんが話した「中村蒼君の10代最後のキスの相手が……」は、各劇場での鉄板ネタだったみたいですね(笑)。


どっちかというと寡黙なイメージの強い凌さんですが、実はよく喋る。
舞台挨拶でも一番多く話していたのは凌さんでした。しかも「ここ笑うとこだぞ」的な雰囲気を醸し出しながら(笑)。

「次郎が男らしく堂々と告白をするシーンがありまして……」

ホントは全然男らしくないグダグダの告白だから、ここで笑いが起きるのを期待したのでしょうが……ところが客席はクスリともせず。

「あ……男らしくはなかったですかね……あれ?」

お客さん
「………………」


凌さんがジョークを飛ばしてもあの強面だから、笑っていいのかどうか客席が戸惑っている空気がありありで(笑)。
(しかも隣で仲さんと石井監督は苦笑してるしあせるあせる


そんな凌さん、退場する際に出口の前で客席に振り返ってから、深々と頭を下げたところが印象的でした。
いかにも凌さんらしい!
ちなみに仲さんは……客席を振り返りもせずに退場。
いかにも仲さんらしい(笑)。