エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて -29ページ目

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

ぴあ初日出口調査によると~『ハラがコレなんで』(11/5シネクイント調べ)の満足度平均点は84.3点。


ランキングは以下のとおり。


「ぴあ初日満足度ランキング」

1.『サラリーマンNEO 劇場版(笑)』89点
2.『僕たちのアフタースクール』88.7点
3.『カイジ2 ~人生奪回ゲーム~』87.2点
4.『ラビット・ホール』86.2点
5.『僕たちのバイシクル・ロード~7大陸900日~』85点
6.『ハラがコレなんで』84.3点
7.『家族の庭』81.4点
8.『パラノーマル・アクティビティ3』79.2点
9.『1911』79点




初日にメイン劇場に行くと、ぴあの出口調査にぶつかる時がたまにありますね。

感想と点数だけでなく、名前、年齢、職業も聞かれて、最後に写真も撮るみたいな。


一度、それがぴあに掲載されてしまい、慌てたことがある(笑)。

『あばよダチ公』


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【出演】
松田優作、大門正明、河原崎建三、佐藤蛾次郎、加藤小夜子、山本麟一、郷英治、砂塚秀夫、下川辰平、榎木兵衛、山西道広、初井言栄、悠木千帆


【監督】
澤田幸弘




“銭がほしい!女がほしい!くたばれ青春”




3年ぶりに刑務所から帰って来た‘もーさん’こと夏木猛夫。


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かつての漁村・浦安も今では見る影もない……コンビナート群の威容、汚れた海。

「変わっちまったな……この街も」


その死んだ海で釣りをしている頭の少々弱い若者・梅、トラックの運転手・雅、パチプロの竜。
夏木の仲間たちである。


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3年ぶりの再会で元気の出た4人は、出所祝いと称して乱痴気騒ぎの末、警察のお世話になってしまった。


翌日、釈放されてからも、彼らは目的のない欲望のみで行動する毎日が続く。


そんなある日、竜の親戚で家出娘のシン子が訪ねて来た。
彼女の父親が補償金つり上げのためにダム工事立ち退きを拒否し、立て篭もっており、その補償を合法的に奪いたい……というのである。

相談の結果、夏木がシン子の婿養子となり、一同はシン子の実家へと向かう。


ダイナマイトを腰に巻き着けて籠城している父・源太郎に夏木とシン子は結婚を報告するや、源太郎を小屋から追い出した。


夏木とシン子の初夜、むさぼりあう全裸の二人。
だが、竜、雅、梅は悶々として寝つけない。

刺激のない毎日が続き、彼らの苛立ちは日増しに高まっていく。


そんな時、猟に来ていたハンターから夏木が銃を奪い取った。

このことがきっかけで、水源開発公団もようやく動き出す。


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町の暴力団・半田に5人を叩き出す事を条件に、ダム工事の下請けを優先的に依頼するという。

半田の挑発が始まった!
配下の鉄砲玉と女との青姦セックスによる挑発……それは女に飢えている竜たちには効果満点だった。

おさまらない竜たちのために夏木はホステス3人を強引に連れて来て、小屋の中はセックスの饗宴となる。

だが数日後、そのホステスに梅が呼び出され、半田に捕われてしまった。

「4人がこの土地から出て行くのなら梅を帰す」

梅の命にはかえられないと決心した夏木は、シン子と源太郎に補償金問題を託し、町を出ることに。


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しかし、歩き続けるうちに持ち前の野放図な陽気さが甦って来た4人は、反撃を決意!


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「太く短く、やけくそでやってみっか」

殴り込みをかけ、半田を人質に立て篭もる!

廻りを取り巻く警官たち、飛び込んで来る催涙弾に、次第に疲労と焦燥が襲う。
折角、半田から取り上げた金が奪われるのは目に見えている。

「ヤギだ、ヤギ!ヤギになって札を食っちまえ!」

4人は必死に札を貪り食う!
とその時、建築用クレーンがまるで怪獣の首のように壁を崩し始めた。
彼らはクレーンに飛びつき、空中に吊り上げられ……何か喚き散らしながら次々と落下していく。

川の方に逃れ、泳いで渡り、ほうほうの体で向こう岸にたどり着く。
結局、金は手に入らなかったが……。


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「ゼニはたらふく食ったわけだし、行けるとこまで行ってみようや」




はみだし野郎のチンピラ4人組が、欲望のおもむくままにアナーキーな行動をする姿を描いた青春ワイルドアクション。



1974年公開の松田優作の記念すべき‘初主演’映画!

『太陽にほえろ!』でのジーパン殉職直後にクランクインしたというこの作品。
まだ25歳の優作は当たり前ながら若い!そしてその髪型のせいもあるのだろうが、眉間にシワを寄せた時の表情が驚くくらい『ドン・キホーテ』の時の松田翔太に激似!(あ、この場合は逆か)

これが優作がもっと歳を重ねてくると、今度は松田龍平に激似に(だから逆だってあせる)なってくるんですね。



当時、ロマンポルノ体制を敷いていた日活が、同時に一般向けの青春&アクション路線も確立させようという意図の下で製作されたらしいが、低予算での典型的なプログラムピクチャーという感じ。
しかし日活黄金時代を観て育った優作にとって、既に衰退していたとはいえ‘日活映画主演’は待ち望んでいたことだったようだ。
ちなみに、この作品から数年後に澤田監督の撮ったポルノ映画にも特別出演するなど、日活の雰囲気が非常に気に入っていたとも云われている。



作品としては……一攫千金を狙うチンピラたちのグダグダとした顛末が、アクション&エロを挟みつつ綴られてゆくものの、内容はあってないようなもの。

ただ優作をはじめとするチンピラたちのキャスティングが個性的で面白く、70年代を反映させていると思しきシラケ世代によるアナーキーな彷徨は、逆に今の目で観ると凄く新鮮。

4人のダチ公が青春の欲望のままに行動するというストーリーは、後に優作が主演する『俺たちに墓はない』とも共通する骨子を持っている。


仲間を強く思う気持ちや、一緒にバカをやったりする優作の若くて活き活きした感じが超カッコよく、トレードマークのサングラスにくわえタバコもイカしてます。
ダボシャツにスーツ、雪駄履きという寅さん風ファッション(?)もメチャメチャ似合っている。



笑ってしまったのが、夏木らが警察に留置されたシーン。
取り調べをする刑事がなんと下川辰平なのだ!
つまり、チョーさんに取り調べを受けているのがジーパンなんですね(笑)。
(当時の観客は、ここで大爆笑になったのでは?)
優作が『太陽にほえろ!』を降りた直後に撮影されただけに、これは遊び心的演出か!?
しかも優作の恋人役の名前も、これまた『太陽』を意識したかのように、‘シン子’だしあせるあせる

そのシン子を演じる加藤小夜子が、かなりエロい。
何とも淫靡な雰囲気を醸し出している女優なのですが、撮影当時はまだ二十歳だったらしい。(二十歳であの色気は尋常ではない?)


それから樹木希林(この頃は旧名の悠木千帆)のヌード(後ろ姿だけど)にもビックリ!



ちなみに……11月6日は優作の命日でした。


『ハラがコレなんで』の後に上映された短編『ウチの女房がコレなんで』&『娘の彼氏がコレなんで』。


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【出演】
石橋凌、竹内都子、森岡龍、岡本玲


【監督・脚本】
石井裕也




“3LDKで繰り広げられる粋な世界”


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第一部
『ウチの女房がコレなんで』


最近、何だか元気がない夫を心配している妻。

「確かにあなたは、うだつの上がらないサラリーマンだけどさぁ、もっと元気出しなさいよ」
「うだつの上がらないなんて言うな!」
「あなたのお得意の決まり文句‘粋だねぇ’が聞きたいわ」
「そんなこと言える気分じゃないよ」


実はこれから娘が彼氏を家に連れて来ることになっている。

「どこの馬の骨だか分からん奴に、娘は渡さん」
と、威勢だけはいいものの……実際に彼氏を前にしても強気でいけるのかと、不安でいっぱいの夫。

そんな夫に妻は、こう提案する。
「じゃあ、シミュレーションしましょ?実際に目の前にしても慌てふためかないように」
「シミュレーションかぁ、よし!」


こうして二人は、とんちんかんなシミュレーションを始めるが……。



第二部
『娘の彼氏がコレなんで』


遂に娘が彼氏を連れて来た!

ところがその彼氏……タトゥー&ピアスだらけのパンク野郎で、どう贔屓目に見てもまともな人間ではない。

「お父さん、よろしくです!」
「……よろしくお願いしますって言え……」
「はい?」
「いや、何でもない……」


こんなとんでもない格好をした非常識な男に娘を渡してたまるか……と思うも、どうしてもピシャリと言うことが出来ず、グダグダの父親に……母親は「シミュレーション通りにやれば大丈夫」と助け船を出すが……事態は思わぬ方向へと転がっていき……。




一人娘が、家に彼氏を連れてくる!その時、母は!そして父は?!
3LDKの密室で繰り広げられる超心理サスペンス(?)コメディ。


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二部構成の30分の短編で、石井監督曰く、
「落語の持つ世界観を表現したかった」


確かに、落語の小咄に出てきそうなシチュエーションです。


『ハラがコレなんで』との連動企画で、この短編のテーマは‘映画を通じてもっと元気に、もっと粋に!’。


夫が上機嫌の時に言う決まり文句、
「粋だねぇ~~」

しかし彼は、その言葉を封印してしまっている。

夫に「粋だねぇ~~」と言わせようと、そして娘と彼氏との交際を認めさせようとあの手この手を尽くす妻の姿がコミカルに綴られていくのです。


第一部は、娘が彼氏を連れてくるという事態を前に、父親は気持ちの整理ができず、全く元気がなく意気消沈する姿が描かれる。

へこむ彼をコントロールしようとある作戦を考えだす母親。

「シミュレーションしましょう。わたしがブロックサインを出しますから、あなたはそのサイン通りの言葉を言えばいいのよ」
「なるほど~それ、いいな!」

このちょっとオマヌケなやり取りが絶妙!



第二部は、いよいよやって来た彼氏を交えての食卓を囲む4人のお話。

タトゥー彫りまくりのパンクスの彼氏に、おもいっきり戸惑う父親。

しかし彼氏は父親の戸惑いなんかどこ吹く風で、いきなり、
「お父さん、ファイト!」
なんて声をかけてくる始末。

‘いったい何なんだ、こいつは!’
気分を落ち着かせようとタバコをくわえれば……
「あ、タバコやめてもらえます?俺、バンドのボーカルなんで煙が喉によくないっすから」

‘タバコも吸わせてもらえないのか……’

会話は全く噛み合わず、彼氏の言ってることはちんぷんかんぷん。


ところが、母親の出すブロックサインで遂に意思の疎通がはかれて……!?



この映画の父親は、うだつの上がらないサラリーマンで、たぶん会社では窓際族なのだろう?

そんな彼は妻にこう愚痴る。
「放射能の問題も、年間自殺者が多いのも、タバコが値上がりしたのも、ぜーんぶ政府のせいだ!」

父親に言わせれば、「世の中の理不尽さは、結局は政府が悪いからだ」となる。

(このあたりは『川の底からこんにちは』での‘政府を倒せ!’という社歌の政府批判とも重なるものが)


でも母親は気付いているんですね。
家でも会社でもうだつが上がらず、何でもかんでも政府のせいにして悪口をグジクジ言っているだけの父親も、そんな政府と似たり寄ったりだと。

目の前の母親を思いやることもできず、子供とのコミュニケーションもろくに取れない父親が、本来家族が持つべき温かさを希薄にさせていると。
(これを政府に置き換えれば、国民を思いやることもできず、国民とのコミュニケーションをろくに取ろうともしない……となるのでしょう)


家の中で家族を相手に、政府の悪口を愚痴ってる暇があるくらいなら、他にもっと大切なことがあるでしょ?
母親は、優しい視線を送りつつも、なにげに父親にとっての痛いところをズバッと指摘してくる。


かといって父親を‘嫌な人間’と描いてはおらず、あくまでも温かい視点から見つめています。

突き放すことなく、何やかんやありつつも、ともかくは家庭にちゃんと居場所がある父親。

うだつが上がらなくたって、家族揃って幸せに食卓を囲める!

これは、いま元気がない中年男性たちへ元気を送る、石井監督からのエールなのだ!

形を変えた『あぜ道のダンディ』なのだ!



主演の石橋凌が好演。
映画で初めて演じたフツーのお父さん役ですが、普段の強面はどこへやら、強がってはいても内心は気が弱く、自信なさ気な表情やオドオドした仕草が秀逸!

最後に嬉しそうに言う台詞「粋だねぇ~~」は、サイコーです。


それにしてもロッカーの凌さんが、彼氏のパンクファッションとタトゥーに目を丸くして驚くシーンは可笑しかった。
こんな格好、イヤってほど見慣れてるはずなのに(笑)。


バリバリのタトゥーにタンクトップ姿の彼氏……この格好って、ほとんどキースのパロディみたいなんですけど(笑)。 (石井監督、別に狙ったわけではない……ですよね?あせるあせる

ARBファンだったら、思わず大爆笑間違いなし!?


それから彼氏役の森岡君のハジケまくった演技もかなり笑えます。