In Effect Mode/Al B. Sure! | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 最近興味深かったのはNewjeansの新曲を、やれSMAPだ!SPEEDだ!と騒いでいらっしゃる方々。まるでコンソメ味のポテトチップスを普段ポリポリやってるお子様が夏休みに両親に連れられて行ったAubergeでTerrine de Consommé de Crevettesを口にして、ポテチだ、ポテチみたいだ!とはしゃぐ初めてのフレンチ・デビューみたいで微笑ましいものがあった。確かにTerrine de Consommé de Crevettesは伝統のConsommé Doubleを使っているがTomatoとShrimpにWhite WineとBrandyが豊饒で絶妙の風味を醸し出している。どこか似た一部分を見つけて、それを切り取り同一視したくなる気持ちは、よくわかるけれど、Newjeansの楽曲もダンスもMelodyの譜割りも、何よりVocal、Ensembleが全然別物なのである。90年代の日本では確かに当時の米国R&Bの要素を取り入れようと頑張っていたのがSMAPであり、SPEEDであろう。そして当時流行していたTLCSWVのようなStreet Fashionを取り入れて日本でメジャーな存在になったSPEEDやNiteflyteの“You areのサビを引用したりNew Jack Swingを取り入れたSMAPの活躍がしっかり目と耳に焼き付いた中高年世代の中には、それらが彼らのオリジナルだと勘違いされている方もいるに違いない。そして、New Jack SwingもD'n'Bも2-Step GarageもAtlanta BassもNewjeansにとっては素材のひとつでしかないということが重要。Beatだけでも様々な複合的要素を組み合わせ、そこにEdge VoiceVibratoFalsettoWhisperBreathなど多彩かつ繊細で変幻自在のVocal Ensembleが絡んで生み出されるMagicalで多層的な音楽は、彼女たち独自のもので、たとえある時代に流行したBeatを表面上取り入れたからといってNostalgicなだけで終わるものではなく、過去から現在、未来へと時空を越えた世界を生みだしているのである。

 

 Al B. Sure!は所謂New Jack Swingが一世を風靡した時代に登場してTeddy RileyKeith Sweatらと共に一躍時代の寵児となった。 Sure!がリリースした、このDebut Album88年5月にリリースされているが、この年は春にKeith Sweatの“I Want Her”が大ヒットし、6月にはTeddy Riley率いるGuyのDebut Album『Guy』とBabyfaceL.A. Reidの名コンビによる“Every Little Step”を含むBobby Brownの2作目のSolo Album『Don't Be Cruel』がリリースされ、前者は全米4位となる“Groove Me”をヒットさせ、後者はその後、全米1位を獲得し全世界で1200万枚売り上げることになる。さらにBobby Brownの後任にJohnny Gillを迎えたNew EditionJimmy Jam & Terry LewisのProduceで『Heart Break』をこの月にリリースしDouble Patinum認定の売り上げを達成している。この年から90年代の初頭まで、正にNew Jack SwingがSceneを席巻し、Streetから生まれたHip Hopとも共鳴していくことになる。New Jack Swingといえば、Teddy Rileyが結成したGuyのAaron Hallに代表されるように男性的で骨太なMacho的なVocalが連想されるけれど、Al B. Sure!はその対極にあるような独特のFalsettoを生かした繊細中性的な歌声個性的である。元々はQuincy Jonesに見いだされ、RapperとしてDebutしたかったというが、従兄弟でもあるKyle Westと楽曲を書き、Teddy Rileyを共同Producerに迎えて(結局1曲のみとなったが)本作を完成させている。D’Angeloもお気に入りのアルバムだそうで、多重録音された線が細く甘美なVocalに時折絡むLes Davis歪んだギターが官能的で心地良い。こち亀の両さん風に眉毛が繋がったお顔をアップに持ってきたジャケットがアレだけど、この辺の80年代っぽさが今は実に面白い。

 

 『In Effect Mode』はAl B. Sure!88年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目はDebut Single“Nite and Day”。A♭Maj9からD♭m9、そしてE♭7Sus4に進むChord Progressionが切なく美しい。Newjeansの“Attention”の爽快感を感じさせる進行同様に同主短調の転調へのMelodyののせ方が素晴らしい。Les Davisの歪んだギターがイイ感じ。

Oooh, This Love is So”は哀感漂うRomanticなSlow Jam。Al B. Sure!の甘く切ない歌声がバッチリハマっている。

Roberta FlackによってヒットしFugeesのCovaerでも知られる名曲でNorman GimbelとCharles Fox作の“Killing Me Softly”。

Naturally Mine”はアルバムで一番お気に入りの甘美なSlow Ballad。Al B. Sure!の線の細いVocalの多重録音が生み出すMagicalな世界に酔いしれる。

Rescue Me”はMinor Ninth Chordにのせて典型的なNew Jack Swingでネチッこく歌うSure!のVocalが雰囲気を出している。思わず口ずさんでしまうサビも良き。

Off On Your Own (Girl)”も大好きな曲。心地良く跳ねるBeatにのってCatchyなMelodyを歌い上げるSure!のVocalが良い。ここでもLes Davisの歪んだギターやRapが効果的だ。

Teddy Riley唯一のProduce曲“If I'm Not Your Lover”。GuyのTimmy Gatlingが書いたこの曲はチョイと肩透かしというか、 Sure!のVocalは面白いが曲としては凡庸。

アルバム最後をシメるのは80年代らしいDigitalでお茶目なイントロで始まる“Just A Taste Of Lovin'”。ここでも多重録音されたVocalとDigitalな取り合わせがFreakyな感じが時代を感じさせる。

 

◎Off On Your Own (Girl)/Al B. Sure!

(Hit-C Fiore)