Au-delà Du Délire/Ange | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Angeというのは本当に面白いRock Groupである。まず出会ったのは10代の頃に、友達のお姉さんの部屋で見た『Emile Jacotey』であった。Atollの『L'Araignée-Mal』やOsannaの『L'Uomo』なんかと一緒に、おもわずそのおどろおどろしい強烈なジャケットに惹かれて、音楽もよくわからないのに聴かせてもらって空想の世界に遊んでいたのであった。そして本作、これは一体何なんだというジャケットSF小説をむさぼり読んでいた小学生の頃から、こういうのには目がないのであった。とにかくお姉さんの部屋にあった欧州のRock Bandのレコードには自分にとってSF的な興味を惹かれる幻想的で魅力的なジャケットが多かった。69年にFrance東部Bourgogne-Franche-Comtéの都市Belfortを拠点に活動を開始したといわれるAnge。鍵盤奏者のFrancisとVocal、Accordion、アコギ、鍵盤を担当するChristianのDécamps兄弟が中心となって活動を続け、一時の活動停止を経ながらも現在も活動を続けているようだ。しかも、なんとChristianとTristanDecamps親子が中心となって所謂France伝統の"Rock Theatre"を今現在も伝えているらしい。Angeといえば、芝居がかった大仰なVocalToneを変調させた独特の揺れのあるOrgan。当時はサッパリ訳がわからず、その雰囲気を楽しんでいるだけが、本作はジャケットに描かれている中世の農夫Godevinの時空をめぐる物語を描いたCocept Albumだという。Christian DécampsがRoger LombardotとAngeのManagerのJean Claude Pognantと共に書いた脚本が元になっているそうだ。Décamps兄弟とギターのJean-Michel Brezo'var、ベースとClassical GuitarのDaniel Haas、ドラムスのGérard Jelschというメンツで、この『錯乱の向こう側』ともいうべきタイトルの摩訶不思議なお伽噺を楽しませてくれる。

 

 『Au-delà Du Délire』はAnge74年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目は“Godevin Le Vilain”。哀愁漂うViolinの旋律から始まり、MellotronのようなOrganがいきなり炸裂する大仰な幕開けであるが、語り部Christian DécampsのTheatricalなVocalが存在感タップリに幻想の世界へ誘う。

Les Longues Nuits D'Isaac”はギターのRiffが唸りを上げ、Acoustic GuitarやOrganをバックにChristianの迫力あるVocalが暴れまくるのが痛快。

Monologueで始まる“Si J'étais Le Messie”はFluteやOrgan、電子音をバックにChristianの芝居気タップリのVocalが本領発揮。

Ballade Pour Une Orgie”は優美なClassical Guitarで始まり、Christianも優しく語りかけるように歌い上げていく。この辺のメリハリの付け方が実に上手い。バックの鍵盤の寄り添うようなバッキングも素晴らしい。

Exode”はSymphonicな鍵盤タメを聴かせた3拍子のドラミング中世の世界の混沌へ誘い、Acoustic GuitarをバックにChristianが雰囲気タップリに歌い出す。すると燃えたぎるRock魂に満ちたギターが唸りを上げていきなり盛り上がる。この辺の静と動のContrastの付け方も面白い。

La Bataille Du Sucre (Inclus: "La Colère Des Dieux")”も古ぼけたようなOrganをバックにChristianが一人芝居のごとく表情豊かに歌い上げ女性のMonologueを挟み淡々としながらも謎めいた演奏が不思議な感覚を呼び覚ます。そして幻想の世界へ深く入り込んでいってしまうかのよう。

Fils De Lumière”は大仰なOrganが徐々に高みに登りつめる感じで、演奏もVocalも一気にClimaxに向かって突き進んでいく感じ。

アルバム最後をシメるのは前曲から切れ目なく続く“Au-delà Du Délire”。Acoustic Guitarや鍵盤の穏やかな調べにのって語り部Christianが最後まで迫真のVocalで迫る。

(Hit-C Fiore)