69年にFrance東部Bourgogne-Franche-Comtéの都市Belfortを拠点に活動を開始したといわれるAnge。鍵盤奏者のFrancisとVocal、Accordion、アコギ、鍵盤を担当するChristianのDécamps兄弟が中心となって活動を続け、一時の活動停止を経ながらも現在も活動を続けているようだ。残念ながら95年に個性的な鍵盤を聴かせてくれたFrancis Decampsは脱退してしまったが幾多のメンバー・チェンジを経ながらも兄のChristianはバンドを引っ張り、“Rock Theatre”の伝統を現在も守り続けている。Angeといえばフランス語の持つ独特な響きとIntonationがVocalのChristianの描き出すTheatricalな表現と相まって、ChristianとFrancis Decampsが操る独自の響きを持ったOrganやSynthesizerと共に摩訶不思議な時空を超えた世界で魅了する70年代の作品がまず思い浮かぶ。しかし70年代末にDécamps兄弟以外のメンバーが変わったこともあってか、彼らの音楽性は大きく変化していくのだった。一般的にはPopになったとか低迷していたといわれる80年代のAngeではあるが、音楽性は変化したといっても彼ら独特のTheatricalでチョイ不思議入った世界は健在である。機知とHumorに満ちた言葉遊びや風刺のきいた彼らお得意の歌詞は、それこそフランス人らしいEspritが発揮されたもので、フランス語がわかれば、もっと楽しめるものになるだろう。Décamps兄弟が中心となって逞しくも80年代を生き抜いた彼らが90年代に再び70年代の黄金期を彷彿とさせる作品をリリースしたことは決して懐古主義なんかではない。80年代の試行錯誤が実は実りあるものであり、それが結実されたと考えたい。また、70年代末にそれぞれリリースされたChristianとFrancisのソロ・アルバムは、兄弟それぞれの個性が全開となったものでこれまた興味深い。
『Vu D'un Chien』はAngeが80年にPhillipsからリリースしたアルバム。
アルバム1発目“Les Temps Modernes”。のっけからドラムスのサウンドとHardなギターにコレジャナイ感があるものの、Christian DecampsのVocalが登場すると、お待ちかね不思議なAngeの世界が始まる。唸りを上げるRobert Deferのギターとバックで幻想的に流れるFrancis DecampsのSynthesizerもイイ感じ。
イントロのFrancisらしいOrganに心惹かれる“Les Lorgnons”はChristianのTheatricalなVocalが入りフランス演歌ともいえる抒情が炸裂。
FunkyなギターのRiffで始まる“Foutez Moi La Paix”。ここでもDeferのギターが大活躍だがFrancisのSynthesizerも頑張っている。
“Je Travaille Sans Filet”はClassicalで陰鬱な70年代的な雰囲気を持つがSimpleなリズム隊とPopな曲調が80年代的。
“La Suisse”もDeferのFunkyなギターがイントロから引っ張るが、ChristianのVocalも案外Discotiqueなリズムにのって新境地を開いている。FrancisのSynthesizerがらしくないが、歌いまくっているのも面白い。新加入のDidier ViseuxのDiscoなベースやゲストのMarc FontanaのSaxソロもイイ感じ。
能天気に突っ走る“Personne Au Bout Du Fil”。ここでもHardなギターが唸りSlapが飛び出す。
幻想的なギターのArpeggioに導かれ始まるBallad“Pour Un Rien”。これこそAngeの摩訶不思議な世界。
アルバム最後をシメるのは、これまたFunkyな“Vu D'un Chien”。地味ながらJean-Pierre Guichardのドラムスがドッシリ支えている。
◎Vu D'un Chien/Ange
(Hit-C Fiore)