Brother John/Elvin Jones | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Elvin Jonesは大好きなJazz Drummerの一人で、そのドラミングを生で観てみたいとずっと思っていたが願いはかなわなかった。親日家で知られるElvinはPartnerが日本人であることもあってか幾度も来日公演を行い、晩年には毎年年始に新宿Pit Innで公演を行うのが恒例となっていたのだという。これは是非観たかったなあ、目の前で。あの完全に独立した両手両足から叩き出される豪快で複雑摩訶不思議なPolyrhythmicなドラミングをかぶりつきで体験してみたかった。Frank FosterPat Labarberaという大好きなSax奏者をFrontに配しRoland Prnceがギターを弾くThe Elvin Jones Jazz Machineの来日公演の模様はTrio Recordsから出ている『Live In Japan 1978』や『Live In Japan Vol. 2』で楽しんできたけれど、85年のPit Innでの演奏を収録した『Live At Pit Inn』ではギターのPrinceこそいないものの、SaxにLabarbera、そしてSonny Fortuneときたもんだ。やっぱりLabarberaのTenor Saxは最高だ。思わず『Pass It On』、『The Wizard』といったLeader Albumも手に入れてしまったのだった。さて、80年代に入ってからのElvinはThe Elvin Jones Jazz Machineでたびたびメンツを変えながらも活動していくわけだけれど、80年代前半までSax奏者Pat Labarberaは殆ど不動なのであった。John Coltraneと演奏していた時代のElvinは勿論最高だけど、独立後のElvinだって自分は大好きだ。実はElvinを知ったのは大好きなOregonと共演したアルバムであったわけだけど、そこからElvinの参加作をずっと辿っていって数々の名作に出会うことになるわけである。70年代後半から80年代にかけて軟弱でEasy Listning的なFusionが幅を利かすようになっても、LabarberaのTenor Saxを配したElvinはStraight Aheadに我が道を行く作品を残しているのであった。Coltraneの志をずっと胸に抱き、80年代に入って何をいまさらと言われようが、ここまで潔い姿勢には脱帽である。あの黄金のQartetを連想させる本作も然り。

 

 『Brother John』はElvin Jones82年にリリースしたアルバム。アルバム全8曲中5曲Pat Labarberaの手によるもの。Pat LabarberaのTenor SaxにKenny Kirklandのピアノ、 Reggie Workmanのベースを迎えてElvinが叩くQuartet編成の隠れた名作である。Elvinは勿論、LabarberaもKirklandのピアノもReggie Workmanのベースもご機嫌な演奏で楽しませてくれる。

アルバム1曲目は“Necessary Evil”。軽快にSwingするHard-BoiledにキメたMode Jazzで幕を開ける。Kirklandのピアノ・ソロ、Workmanのベース・ソロ、LabarberaのTenor Saxも心地良い。何よりElvinのドラム・ソロが激カッコイイ。

理知的な美しさを湛えたOctober's Child”。ここでもWorkmanのベース・ソロがイイ感じだ。Kirklandのピアノ・ソロも硬質の美ともいえる素晴らしさである。

John Coltrane作の“Harmonique”。『Giant Step』の次作に当たる61年リリースの『Coltrane Jazz』に収録されている。脱力しながらも高度な技巧を配したSaxに耳が行く。Jimmy Cobbが叩いてるColtraneの元曲よりもElvinはSyncopateした心地良いノリでSwingさせていて興味深い。

Tad Dameronの必殺のBallad“Whatever Possessed Me”は雰囲気タップリのLabarberaのTenorに酔いしれる。Kirklandの優美なピアノ・ソロも良し。

The Elvin Jones Jazz Machine78年作『Remembrance』に収録されていた“Familiar Ground”。疾走感と躍動感に満ちたModal Jazz。

才人ピアニストCy Coleman作の“Why Try To Change Me Now?”。これまた官能的な大人の夜のJazz Ballad

Elvinのドラム・ソロから始まるModalなBluesMinor Blues”。

アルバム最後をシメるのはタイトル曲“Brother John”。SaxとベースのスリリングなUnisonがカッコイイ。LabarberaのSaxも歌いまくり。小気味よいKirklandのピアノ・ソロや歌いまくるWorkmanのベース・ソロもご機嫌だ。 

(Hit-C Fiore)