Belladonna/Ian Carr | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Ian CarrThe Don Rendell / Ian Carr QuintetEMI5枚の素晴らしいアルバムを残し、Neil ArdleyNew Jazz OrchestraやAlto Sax奏者Joe HarriottらともBritish Jazz史に残る作品を世に出した後に向かった先は、ご存知の通りジャンルを越境Electric楽器を用いたNucleusの結成であった。Miles Davisの『Bitches Brew』がリリースされたのは70年の3月であるが同年の5月にはNucleusのDebut AlbumElastic Rock』がリリースされている。アルバムが録音されていた時期にはまだ『Bitches Brew』は世に出ていなかった。Ian CarrはMiles Davisの音楽に影響を受けていたが、決して単純な後追いをしていたわけではないことがこの事からもわかる。事実、『Elastic Rock』は『Bitches Brew』とは異なる方向性を持ち、『In A Silent Way』、『Filles de Kilimanjaro』、『Miles in the Sky』からの影響こそ感じることは出来るが、極めて英国的硬質で凛としたLyricismに満ち、大胆不敵で自由度の高い即興演奏と共存し、優美であったり牧歌的ですらある英国らしさが強く印象に残るものであった。それはThe Don Rendell / Ian Carr Quintet後期のPost-Bopへ向かう時期にあたる作品でPianist/ComposerのMichael Garrickの音楽性と演奏によって、米国のJazzとは一味違う英国らしいCoolで理知的なJazz新たな一歩を踏みだそうとしていたのを継承していた。NucleusではGraham Collier Sextet出身の2人の存在が大きかった。Karl Jenkinsエレピに加えOboeやBaritone Saxophoneを吹き、John MarshallDynamismと繊細さを持ち合わせJazzRockFunkのBeatを変幻自在に叩き出していた。しかし2人が参加したNucleusの初期のアルバム3作でバンドは一時解体し、CarrはJohn HisemanProduceによる本作をリリースするのである。そして、そこには Gordon BeckDave MacRaeという2人のエレピ奏者と共にAllan Holdsworthという英国が生んだ不出世ギタリストが参加していたのであった。

 

  『Belladonna』はIan Carr72年にリリースしたアルバム。71年にリリースされた『Solar Plexus』はIan Carr With Nucleus名義となり作曲は全てCarrによるものだった。ここでNucleusは一旦、解体となりソロ名義となった本作はNucleusからはSax奏者のBrian Smithのみ参加し、ドラムスに Brian Auger & The TrinityのClive Thacker、ベースにRoy Babbington、エレピに Gordon BeckDave MacRae、ギターのHoldsworth、そしてPercussionでDon Rendell / Ian Carr QuintetTrevor Tomkinsが3曲に参加している。

アルバム1曲目はタイトル曲“Belladonna”。AbstractなPercussionの響きが神秘的で思わず惹きこまれてしまう。そしてIan CarrのTrumpetがBassとUnison英国的な陰影を感じさせつつ捻りのきいたMelodyを奏でていく。すると、如何にもNucleusらしい14拍子の変拍子によるBassのRiffが始まり、バンドの演奏はFunkyなJazz Rockへと展開していく。Allan Holdsworthのギターはカッティングに徹している

Summer Rain”はありがちなタイトルながら抒情的で哀感漂うThemeのMelody70年代の日本の歌謡ロックな雰囲気を醸し出していて面白い。Bluesyなエレピ・ソロが絶品で、これに絡むHoldsworthも派手さはないがイイ味出してる。

SaxのBrian Smith作“Remadione”。エレピとAlto Flute、Trumpetによる夢見心地のイントロから、いよいよHoldsworthの怒涛の弾き倒し炸裂

Mayday”は『In A Silent Way』の“Shhh / Peaceful”ばりにHi Hatのみで16ビートを叩き続けるドラミングにのって幻惑するエレピWahをきかせたギターのカッティングTenor Saxソロがカッコイイ。途中からPercussionが加わりFunkyなJazz Rockに展開する。

Bamboo Fluteとエレピが神秘的な世界へ導く“Suspension”。エレピのMinimalでMeditativeなRiffにのってTrumpetソロが虚空に木霊する

最後をシメるのはBrian Smith作の“Hector's House”。2管楽に続くHoldsworthのRockなギターのRiffがカッコイイ。これ、あたFunkyに展開してSaxソロ、そしてHoldsworthが圧巻の弾き倒し

(Hit-C Fiore)