2/Daniel Goyone | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Daniel GoyoneFrance南部Grasse出身の鍵盤奏者で、コレといった決定的な名作こそリリースしていないが、端々から才気を感じさせる作品をリリースしている。Goyoreといえば個人的にはFranceの大好きなベース奏者であるBunny Brunelとの『Touch』にトドメを刺すのだが、自身のあまりにも品が良すぎるというか、強烈な個性を押し出さないゆえの過小評価が残念だ。大好きなAndré Ceccarelliの結成したGroup CCPPの唯一のアルバムでの鍵盤さばきはかなりカッコイイ。おそらく幼少時からClassicalなトレーニングを積んだであろうピアノの腕は素晴らしいし、フランスらしいEspritの効いた色彩感を感じさせるComposer/Arrangerのしての才能やセンスも感じられる。だが、少々食い足りないというか、アッサリし過ぎというか、もっとゴリ押ししても良いのではないかと思われるほど、一聴すると聞き流してしまうEasy Listening的なJazzと紙一重の部分が感じされてしまうのだ。Classicalな佇まいの中に南仏出身らしいLatin的な心地良さEthnic風味の芳醇な音楽性が入り混じった作風は個人的にはかなり気に入っているし、時折顔を出すEdgeの立った毒性を持った音使いは、Goyoneの持つ魅力の一つであると思うのだが。83年にリリースされた『Daniel Goyone』での女性VocalMarta Contrerasの起用や、前述の『Touch』でのNicol Villaが歌うVocal入りナンバー、David LinxのVocalをFeatureした99年作『Haute Mer』を聴くとピアニスト/鍵盤奏者としての個性を前面に押し出すより、こういった歌モノでDaniel Goyoneの持つ独特の音空間を生み出すTotalでのSound Creatorとしての才能が発揮されているようだ。つまりセンスのある裏方的仕事が向いているとも言えるが、Label Bleuからリリースされた本作では盟友André CeccarelliやEmbryoOregonへの参加で知られるPercussion奏者Trilok Gurtuも参加して個人的にお気に入りの作品に仕上がっている。

 

 『2』はDaniel Goyone86年Label Bleuからリリースしたタイトル通り実質リーダー・アルバムとしては2作目となる。GurtuとGoyoneは本作以降もGurtuの88年の『Usfet』以降のソロ作へのGoyoneの参加やTrilok Gurtu's Crazy Saintsの結成など密接に結び付くようになっていく。

アルバム1発目“Trilogue”はタイトル通りPercussion奏者Trilok GurtuをFeatureしたナンバー。GurtuのVoice Percussionで始まり躍動感に満ちたAndré CeccarelliのドラミングとGurtuのPercussionが素晴らしい。南欧らしいLatinの香りが漂う生命感に満ちたナンバー。

抒情的で少々Exoticな旋律がイイ感じの“Mer”。透明感のあるGilbert Dall'aneseのSoprano SaxとMarc Bertauxのベースの対比が良い。

Jyogam À "M.H.S."”もGilbert Dall'aneseSoprano SaxがGoyoneのSynthesizerとGurtuのPercussionのみで描き出す南欧的な風景に様々な色合いを加えている。

現代音楽風のイントロから始まる“Miniature 1”はGoyoneのピアノのみの演奏。

Chant D'Oiseau”もGoyoneのピアノで始まりMysteriousなSynthesizerが加わり独特の音空間を創り出している。

Berimbau”はAndré Ceccarelliが叩くElectronic Drumsが如何にも当時のサウンドを象徴していて、今聴くと逆に面白い。GoyoneのSynthesizerや打ち込みの感覚はEthnicでWeather Reportの影響が感じられる中々心地良いもので、時代を感じさせるところはあるが嫌いではない。

Octembre 2 (Parts 1 & 2) "À Boris Vian"”はMarc Bertauxのベース・ソロGilbert Dall'aneseSoprano Sax、そしてRichard GallianoEspritを感じさせるBandneonが印象的だ。

Danse Des Lamantins”はGoyoneらしい繊細で捻りのある旋律が絶品。適度な郷愁と泣き、幻想的な雰囲気をまじえた大好きなナンバー。

アルバム最後を飾る“Danse 7”。2分少々であっけなく終わってしまうのがGoyoneらしいというか、食い足りないというか。

(Hit-C Fiore)