Scottland生まれのTrumpet奏者Ian Carrは大学卒業後に兄のMike Carrが結成したThe EmCee Fiveに加入しキャリアをスタートすると、Tenor Sax奏者Don Rendellとの双頭Comboとなる英国Jazz史上に輝くThe Don Rendell / Ian Carr Quintetを結成して一躍欧州Jazzを牽引する存在となった。それはMode導入後のMiles Davisの活動に呼応しながらも英国独自の抒情とClassicalな要素やTraditional Musicなどを取り込んだ多様性に富み、本場米国のJazzとはまた違った味わい深いJazzであった。次々と傑作を生みだしたこのQuintetの次にCarrがリーダーとなって結成したのがNucleusである。Graham Collier SextetのBaritone/Soprano Sax奏者でOboeも吹き鍵盤も演奏するKarl JenkinsとドラマーのJohn Marshallを迎え、他にもベースにはTubby Hayes QuartetやThe Stan Tracey Quartetで活躍しGordon BeckやTony Oxleyともやっていた名手Jeff Clyne、New Zealand生まれでThe Mike Westbrook Concert BandのSax奏者Brian SmithにギターはThe Battered Ornamentsの色男Chris Speddingといった新進気鋭のMusicianが集まったデビュー・アルバム『Elastic Rock』は70年のMontreaux Jazz Festivalで同年のTop Group の賞を獲得した勢いを感じさせる傑作であった。Miles Davisの研究家としても知られたCarrらしくNucleusはElectric Milesの影響下にあるものの、英国人らしい独自性も発揮されたCoolで知的な部分とRockのDynamismが同居したJazz Rockは非常に魅力的である。
『We'll Talk About It Later』はNucleusが70年にリリースした2ndアルバム。1stアルバムと同じメンツによるもので、よりRock的なDynamismが増している。
アルバム1曲目は“Song For The Bearded Lady”はTrumpetとSaxのスリリングなUnisonの後に飛び出すHeavyなギターのRiffは、後にSoft Machineの“Hazard Profile Part One”に引用されることになる。Funkyで重たいRhythm SectionにのってCarrのTrumpetソロ、Chris Speddingのあえて弾きすぎないギター・ソロがStylishでカッコイイ。Wah-Wahをかけたエレピもイイ感じ。
“Sun Child”はJeff Clyneの重心の低いFunkyなベースに導かれてタメのきいたJohn Marshallが絶妙のCombinationを演じるとKarl JenkinsのFeakyなOboeが炸裂。何気にSpeddingのWah-Wah Guitarがイイ味を出している。
CarrのTrumpetがLondonの灰色の空の下で霧の中を彷徨う“Lullaby For A Lonely Child”。SpeddingもBouzoukiをTremolで鳴らし、正に英国としか言いようがない陰影のあるImaginativeな音像は最高だ。Jenkins珠玉の名曲。
タイトル曲“We'll Talk About It Later”はAbstractなギターとエレピ、管楽器の戯れがPsychedelicで奔放な音の洪水となって聴き手を流れに巻き込んでいく。Riffが登場する後半部分はSoft Machineの『7』を思い起こさせる。
“Oasis”はMysteriousなイントロから浮遊するエレピと2管によるThemeが心地良すぎるナンバー。CarrのCoolなTrumpetソロやJenkinsのOboeソロが欧州特有のPastoralなLyricismを感じさせる。
“Ballad Of Joe Pimp”はVocalが入ったナンバー。BluesyでTradionalな雰囲気を醸し出すフレーズが面白い。
アルバム最後を飾るのは“Easter 1916”。これまた後期Soft MachineなRiffに語りが入る。最後の最後に爆発するBrian Smithの怒涛のSaxソロが素晴らしい。Marshallのドラム・ソロでアルバムは幕を閉じる。
(Hit-C Fiore)