英国らしさを感じさせる名演奏家として鍵盤奏者のTommy Eyreとベース奏者のRoger Suttonは個人的にもかなりのお気に入りだ。この2人が演奏にかかわった数々の名盤を聴くたびに、その名人芸に惚れ惚れとしてしまう。John MayallがDrumlessのAcousticな編成でやっていた頃のJohn Mayall BandのギタリストJon MarkとSax奏者Johnny Almondと2人が組んだMark-Almondで残した『Mark-Almond』と『Mark-Almond II』は時代の先を行き過ぎた名作である。そんな2人がメインとなって結成されたRiff Raffは2枚のアルバムしか残していないが、いずれも傑作である。Riff RaffはEyreとSuttonがMark-Almond在籍中にJuicy LucyのDrummerであったRod Coombesと結成したバンドが母体となっている。この時の音源はお蔵入りになるが後にRiff Raffの未発表音源集『Outside Looking In』として90年代末にリリースされたアルバムに収録されている。Mark-Almond脱退後に数々のメンバーの出入りを経て、バンド名をRiff Raffとした頃には、命名者であるギタリストPeter KirtleyとドラムスのAureo de Souzaを加えた4人によるラインアップが固まっていた。本作はゲストにSax奏者のBud Beadleを迎え、RCAからリリースされたRiff Raffのデビュー・アルバムであるが、70年代前半の英国らしさに満ちた傑作に仕上がっている。FluteやSaxを取り入れながらEyreの洗練されたエレピやHammond、SuttonのJazzyなベース、後にPentangleに加入するKirtleyの流麗なAcoustic Guitar、Souzaの躍動感に満ちたドラムスが生み出す世界はImaginativeでジャンル越境の魅力に満ちたものだ。Mark-AlmondがそうであったようにJazzやBluesをベースにしながら都会的な洗練に土くさいSwampな部分も同居されたサウンドはSteely Danあたりと共通する部分もあるのだが、さらに英国的な抒情や陰影が反映されたところにRiff Raffの個性が感じられる。バンド解散後EyreはZzebraに加入、SuttonとSouzaは後にNucleusに参加し、それぞれ名作を残している。
『Riff Raff』はRiff Raffが73年にRCAからリリースした1stアルバム。ジャケットが醸し出すアングラな雰囲気に戸惑いを覚えつつ、中身は最高。それにしてもこのジャケットはどうにかならなかったものか。
アルバム1曲目は幻想的なFluteとAocustic Guitarが印象的な“Your World”。エレピやギター・ソロやChorusもイイ感じ。Roger SuttonのVocalはやや力が入っていて泥くさいが、それもまたイナタい魅力となっている。
“For Every Dog”は名手Peter Kirtleyの流麗なAcoustic Guitarの弾き語り風で始まるお気に入りのナンバー。
“Little Miss Drag”もアコギがジャンジャカかき鳴らされるBritish Folk調。
“Dreaming”がイントロのエレピから悶絶。気怠げなVocalも素晴らしい。灰色の英国の空を思わせる前半部から、徐々に光が射しこんでくるかのような展開が最高。JazzyなSaxやピアノ・ソロも素晴らしいが、それらに絡むChorusがたまらなく英国的。
これまたBritish Folk然としたアコギのArpeggioで始まる“Times Lost”。
英国の抒情的と翳りがたまらないFolk Rockに仕上がったTommy Eyre作。繊細なAcoustic GuitarにSuttnのArco、そして線の細いVocalまでが魅力的に響く。後半のFluteが入ってくるところなど鳥肌モノ。
“You Must Be Joking”はBud BeadleのSaxをFeatureしたPsychedelicでJazzyなナンバー。深く沈み込むようなJazz Waltzのリズムにのった調子はずれのギター・ソロがイイ感じ。後半のきらめくエレピ・ソロが絶品。
アルバム最後を飾るのは“La Même Chose”。Avant-Garde風に始まりながらも抒情的で静かなる躍動感を感じさせるJazz Rockに展開する。低音でうねり蠢くSuttonのベース、EyreのFunkyなエレピ、Kirtleyのカッティングが激カッコイイ。
(Hit-C Fiore)