「本格力」 喜国雅彦 講談社 ★★★★ | 水底の本棚

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本格ミステリ誕生175年目の衝撃!

日本推理作家協会賞受賞作家が放つ今まで見たことのないブックガイド!

 

本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド

 

 

「キクニさんの本は面白いねえ」

 

「双葉社の本棚探偵シリーズはミステリ好きには最高だからな」

 

「古書蒐集の趣味は無いけれどそれでも十分面白かった。本に対して愛情を持っているのが本当によくわかるよね」

 

「古書蒐集はハマると大変なことになる気がするからなあ(笑)」

 

「今回は、翻訳ミステリの古典と呼ばれるものに特化したミステリガイドということだけど」

 

「すごく良い試みだと思う。自分でも理解できているのかと問い正しくなるような小難しい評論なんかとは全然違う。平易な言葉で、作品の魅力を伝えてくれる、とても良いブックガイドだと思う」

 

「本当に頭の良い人は難しい言葉を使わないものねえ」

 

「まったくだ」

 

「紹介されてる作品も古典と言いながら結構バラエティに富んでいたね」

 

「読んでいるものもあるし、未読のものもあった。タイトルすら知らないものもあったなあ」

 

「こういうガイドを読むと勉強不足を痛感するね」

 

「読書だからなあ。別に勉強不足ってことはないと思うけど、でも読んでいないものが多くて驚いたのは事実だな」

 

「読みたいものがずいぶん増えた」

 

「面白いのはさ、読みたいなと感じたのは評価が高い作品ではなくて、評価が低かった方の作品。そんなにつまらないなら、ちょっと読んでみたいかなと思ってしまった(笑)」

 

「キクニさんもこの本の中で書いているよね、『名作より迷作の方が印象に残る』っていうようなことを」

 

「そうだな。いわゆる壁本(壁に投げつけたくなるような本)は読みたくないけれど、『迷作』と呼ばれる作品は味があるからなあ」

 

「奥様の国樹さんのエッセイや漫画も載っているね」

 

「個人的には、犬にまったく興味がないのであまり面白いとは思えなかった。まあ、オマケだからな、別にわざわざケチをつけるほどのこともないだろう」

 

「全体的に満足な一冊だったってことでいいね?」

 

「もちろん。ミステリファンにはもちろんのこと、ミステリの入り口に立っている人にもオススメできる。もしもまだミステリをほとんど何も読んでない人がいたら、ここに勧められているものから読んでみるのも一興かもな」

 

「それはさすがにハードルが高くない?」

 

「そこで挫折する可能性ももちろんあるけど……小説に限らず、スポーツや学問などにも言えることだけど、最高のものっていうのは常に現代に存在するのが一般的なんだ。技術は蓄積されて進化していくのが当たり前なんだからな」

 

「古典本格が現代の新本格より勝っているわけがないってこと?」

 

「小説に勝ち負けはないけどさ、新本格の叙述ミステリを山ほど読んだ後に、クリスティのあの作品を読んでも驚きは少ないだろ? あの作品のエポックメイキング的な価値がなくなることはないけれど、どうせ読むなら最初に読んだ方がいい」

 

「確かにねえ、『モルグ街』だって今あれを書かれたら、ただのバカミスだもんね」

 

「古典はできるだけ早いうちに読んだ方がいいのは間違いないと思う」

 

「そのためにこの本が役に立つかもね」

 

「そうだな」