黙阿彌の「花街模樣薊色縫」
「花街模樣薊色縫(さともようあざみのいろぬい)」河竹黙阿彌 著歌舞伎座で1月に上演された、同作品。その原典を読みました。今回歌舞伎座で上演された場面は、以下のとおり。通し狂言として上演するときは、大体このようになるようです。* * * * * * * * * *「稲瀬川百本杭の場」~遊女十六夜と慣れ親しんだため、寺を追われる清心。清心に会うために、廓を抜け出した十六夜。十六夜は清心の子を宿している。逃げることも戻ることもできない二人は、目の前の稲瀬川に身を投げる。「稲瀬川川中白魚船の場」~十六夜は俳諧師白蓮の乗った小舟に救われる。「百本杭川下の場」~海辺の育ちで泳ぎができるゆえ、死に切れない清心。偶然出会った若者、庵崎求女(実は十六夜の弟)。大金を持っていることを知り、それを奪い誤って殺してしまう。一転、悪の道へ⋯「初瀬小路白蓮妾宅の場」~白蓮の妾として暮らす十六夜。死んだ(と思い込んでいる)清心のことが忘れられず、頭を丸め出家、旅に出る。「雪の下白蓮本宅の場」~旅の空で再開を果たした十六夜と清心が、白蓮の家にゆすりに来る。白蓮は実は大泥棒、清心の実の兄であることが知れる。* * * * * * * * * *原作(本書)では、「稲瀬川百本杭の場」の前に、「由比ヶ浜の場」があります。所払いとなった清心の元に十六夜の父がやって来て、十六夜から預かった小袖の着物を渡します。このときに立ち会った役人寺沢塔十郎は、後に下男杢助として、白蓮宅に潜入、事件を探ります。「雪の下白蓮本宅の場」の後も原作では物語が続きます。いろいろな因果関係を知り、悪事を悔いた清心と十六夜は自害します。十六夜がお腹に宿していた 清心の子どもはどうなったかと気になっていましたが、旅の途中で無事産み落とされ、十六夜の父に託されていました。十六夜。清心、白蓮といった主人公のみならず、十六夜の父、白蓮の妻や手下、白蓮宅の下男下女といった人々まで、生き生きと描かれていると感じました。(下男下女とは、現代では引っ掛かる表現ですが、歌舞伎ではこう言います。)