09月30日(土)に行われたWEリーグCUP第5節@ゼットエーオリプリスタジアム。

WEリーグ公式チャンネル(Youtube)
https://www.youtube.com/watch?v=piETgi0HscM

************

アジア大会で、千葉Lは9大澤選手11千葉選手、S広島Rは9上野選手11中嶋選手が抜けている。
双方とも攻撃力の低下は仕方が無い試合。


千葉Lは、このカップ戦でマイ仙台に勝利、浦和・N相模原に引き分け、C大阪に負け。
4得点/5失点で、勝敗表上の数字は、取り立てて悪くはない。
だが、実はシュート数/被弾数、コーナー本数/被本数など、細かなSTATSを見ると、ラスやブービーで、かなり心配な状態である。
市瀬選手が移籍・14大熊環選手が離脱した守備陣、13曽根選手18安齋選手が帰ってこない攻撃陣、それを繋いでいた中盤も今井選手の退団で、どこを見てもうまく行っていないように見える。

このCUPは4-2-3-1で戦っていて、この試合も同じ。
アジア大会の2人の代わりに、16今田選手17山口選手を使った布陣。


S広島Rは、このカップ戦、マイ仙台・C大阪・N相模原・浦和に4連勝し、9得点/3失点。
決勝進出を既に決めている。
だが、シュート数/被弾数、コーナー本数/被本数など、細かなSTATSを見ると、ほぼ五分五分で、圧倒出来ているわけでは無い。
退団者を多く出したし、33瀧澤選手が離脱したが、獲得した5市瀬選手13高橋選手14松本選手が機能し、決めるべき時にちゃんとゴールが取れている印象の試合が続いている。

システムは球団創設来基本の4-3-3。
アジア大会の2人の代わりに、18渡邊選手26立花選手が入った布陣。
ベンチには6左山選手、初登録の4中村選手が居る。
18人を試合登録すると、もうFPに残りは居ない。過去2年間とは違って、今シーズンは余裕のない選手層である。



 

試合開始早々に、千葉Lが先制するが、その後はほとんど膠着する。
後半、S広島Rが押し込んで同点にする。その後も優勢に進めたが、決め手を欠いて引き分け。

シュート状況は下図の通り。



 

双方アタッカー2人がアジア大会で不在なので、ゴールが見えだしてくると、停滞しがちな試合だった。
どちらかというと、千葉Lの方に影響が強く出ていたと思う。


千葉Lなんとか引き分けた。
攻撃は、セットプレー以外は可能性を感じられない戦いぶりだった。
両SHが中に入って来ないし、ボランチの攻撃参加も少ないので、10鴨川選手にボールが入っても、次は16今田選手だけしか出しどころが無く、チャンスが広がらない。
らしくない戦いぶりだったこのCUP戦だが、この試合で改善が見られたとしたら、バックラインの連携くらいかな?



一方のS広島Rは、最後の一押しが出来なかった。
8小川選手23柳瀬選手は運動量豊富だったし、18渡邊選手も前節に比べると、落ち着いてプレー出来ていた。
問題を感じるのは、左FW(14松本選手26立花選手)かな?

さて、このCUP戦決勝の相手は、新潟L。
アジア大会の9上野選手を見ていると調子が上がってきたようだし、良い戦いになると思う。



では、いつものようにコーナーキックを見ていく。



(1)両チームのディフェンスシステムと攻撃態勢。

千葉Lは、マンツーマンディフェンス中心に、3人のゾーン固定配置。

S広島Rは、マンツーマンディフェンス中心に、2人のゾーン固定配置。



先発を背の順に並べると以下の様になる。



 

少し千葉Lが優勢なマッチアップ関係。



(2)統計 

例によって、私が採っているSTATSを紹介します。



 

2nd回収A:守備ラインが上がり切る前に2次攻撃(シュート・クロスなど)
2nd回収B:守備ラインが上がりきってから2次攻撃(同上)
2ndロスト:守備側がボールを拾って確保
2nd逆襲:守備側がボールを拾って逆襲
トータルシュート数:{プレーの中断、守備側の確保、攻撃側バックス陣帰陣}までに打ったシュート数。



(3)コーナーキックの内容と特記すべきプレー

両チームなかなかレベルの高いプレーを見せていて、見所のあるコーナーキックが多かった。


A.千葉Lのコーナーキック


a)体制


キッカーは10鴨川選手(右利き)。

受け手の体制は、以下のようにして始まっている。

・ニアへ: 4林選手24城和選手
・正面からファーへ: 6蓮輪選手5田中選手8岸川選手
・GK脇: 16今田選手
・ショートコーナー: 7小川選手
・コボレ狙い: 17山口選手
・セーフティー: 19上野選手

b)結果概要

ポインタはYoutubeの時間。

1本目 (29:30 ポインタ39:9) 左CK 10鴨川選手8岸川選手シュート→ポスト→3呉屋選手クリア。スローイン。
2本目 (42:47 ポインタ52:25) 左CK 10鴨川選手5市瀬選手ヘディングクリア。再CK。
3本目 (43:41 ポインタ53:19) 右CK 10鴨川選手4林選手シュート。右へ外れてGキック。
4本目 (79:20 ポインタ1:46:41) 右CK 10鴨川選手8岸川選手(ヘディング空振り)・2近賀選手4林選手ドリブル・クロス→(6蓮輪選手越えて)
6左山選手6蓮輪選手カット→8岸川選手23小林選手クロス。(10鴨川選手を越えて)Gキック。



c)全般的な印象と特記すべきプレー

昨年まで在籍していた5市瀬選手は、千葉Lの戦略を当然理解している。
戦略の中心である8岸川選手を密着マークして、狙いを潰そうと奮闘する。
だが、千葉Lも上を行く。5市瀬選手をピックプレ-に掛けて、8岸川選手をフリーにし、そこにキッカー10鴨川選手が合わせている。
それだけ見てもらっても、楽しめると思います。


ア)1本目 (29:30 ポインタ39:9)

G前密集陣形を敷いて、8岸川選手がGKの横から、密集の外側を回ってニアポスト前で、胸トラップ・シュートしたが、ファーポストを叩いたプレー。


動画:キック5秒前から始まります。
https://www.youtube.com/watch?v=piETgi0HscMfeature=youtu.be&t=2344

5市瀬選手8岸川選手を追いかけようとするが、
5田中選手に行く手を阻まれ、方向転換、密集を突っ切ろうとする。
③ だが、5市瀬選手の進路に居た24城和選手がブロック、
④ その分、10鴨川選手の蹴ったボールをカット出来ずに、
8岸川選手にシュートを打たれてしまっている。

なお、このプレーで、4林選手13高橋選手をスクリーンアウトして、ボールへ向かわせないようにしているのも、見逃してはいけない。




イ)2本目 (42:47 ポインタ52:25)

大外へ回った8岸川選手がヘディングの体制になるが、なんとか間に合った5市瀬選手がヘディングクリアしている。



動画:キック5秒前から始まります。
https://www.youtube.com/watch?v=piETgi0HscMfeature=youtu.be&t=3140

8岸川選手がファーサイドへスタート。
② マークの5市瀬選手5田中選手がブロック。5市瀬選手は遅れる。
③ それを見た3呉屋選手5田中選手を捨てて、8岸川選手をマーク。
④ ボールはファーサイドへ蹴られて、8岸川選手3呉屋選手より先にジャンプし、空間を支配、ヘディングシュートの体勢になる。3呉屋選手はジャンプできない。
⑤ 遅れてきた5市瀬選手がなんとか8岸川選手の前に入ってヘディングクリアした。

よく5市瀬選手は諦めずに追いました。

なお、このプレーで、5市瀬選手はすぐ8岸川選手を追い直していて、5田中選手のブロックが淡泊過ぎると思います。
バスケットならこんなもんですが、サッカーですから、もうちょっとしつこくやっても、十分許容範囲だったはずです。
また、ブロックの後、何らかのアクションをすべきです。
3呉屋選手8岸川選手に食い付いてくれて、フリーになったわけですから。
ブロックが終わったら、プレーも終了じゃない。

なお、このプレーでは、4林選手6蓮輪選手を壁に使って8小川選手を剥がして、ニアヘ向かっています。



ウ)3本目 (43:41 ポインタ53:19)

1本目と左右対称で、4林選手8岸川選手の役割を入れ替えたプレー。


動画:キック5秒前から始まります。
https://www.youtube.com/watch?v=piETgi0HscMfeature=youtu.be&t=3194

4林選手マークの8小川選手5田中選手24城和選手の2段でブロック。4林選手は完全にフリーになってニアヘ。
ただ、8岸川選手がスクリーアウトに遅れて、13高橋選手を漏らしてしまったため、4林選手は先着したものの競り掛けられて、強く打てなかった。



エ)4本目 (79:20 ポインタ1:46:41)

8岸川選手がフリーになってヘディングシュートしようとしたが、ボールが低く溢れている。

動画:キック5秒前から始まります。
https://www.youtube.com/watch?v=piETgi0HscMfeature=youtu.be&t=6396

4林選手8岸川選手マークの6左山選手をブロック。
8岸川選手がフリーになったが、ボールが低く、溢れただけになっている。
脚で行けば、普通のボレーシュートだっただろうが、どうしても「利きアシ」(頭)が出るんでしょうね。

綺麗なピックプレ-で、効果は十分だったが、他のプレート比べるとシンプルだったので、図にはしない。

なお、その後のクロス2本は惜しかった。もう少し低いボールだったら・・・。



B.S広島Rのコーナーキック


a)体制

キッカーは8小川選手(右利き)。

受け手の体制は、以下のようにして始まっている。


・ニアへ: 5市瀬選手14松本選手13高橋選手
・正面からファーへ: 2近賀選手3呉屋選手
・GK脇: 23柳瀬選手
・ショートコーナー: 18渡邊選手
・コボレ狙い: 20島袋選手
・セーフティー: 26立花選手


b)結果概要

ポインタはYoutubeの時間。

1本目 (8:41 ポインタ18:20) 右CK クイックスタート ショートコーナー 8小川選手23柳瀬選手8小川選手クロス→4林選手ヘディング→16今田選手ヘディング→10鴨川選手ヘディングクリア。再CK。
2本目 (9:13 ポインタ18:51) 右CK 8小川選手19上野選手クリア。再CK。
3本目 (9:42 ポインタ19:20) 右CK 8小川選手24城和選手クリア→17山口選手逆襲→6蓮輪選手17山口選手16今田選手3呉屋選手16今田選手ドリブル・18渡邊選手ファール。FK。
4本目 (17:31 ポインタ27:9) 左CK G前密集陣形 ショートコーナー 8小川選手18渡邊選手26立花選手クロス→5田中選手クリア
23柳瀬選手回収・ドリブル・クロス・7小川選手ブロック。再CK。
5本目 (18:12 ポインタ27:51) 右CK 8小川選手→GK米澤選手パンチング
20島袋選手回収・クロス→16今田選手ヘディング→3呉屋選手ヘディング→19上野選手クリア
26立花選手回収。再組み立て。
6本目 (34:22 ポインタ44:0) 左CK 8小川選手→8岸川選手クリア。スローイン。

 


7本目 (57:5 ポインタ1:24:25) 右CK ショートコーナー 8小川選手18渡邊選手8小川選手15藤生選手クロス→GK米澤選手パンチング→17山口選手6蓮輪選手逆襲・ドリブル→7小川選手15加藤選手7小川選手8小川選手。スローイン。
8本目 (68:59 ポインタ1:36:20) 左CK G前密集陣形 8小川選手4林選手ヘディング→5田中選手ヘディング→7小川選手クリア。スローイン。
9本目 (92:16+ ポインタ1:59:37) 右CK 8小川選手GK米澤選手キャッチ。
10本目 (94:0+ ポインタ2:1:21) 左CK G前密集陣形 8小川選手14松本選手。Gキック。



c)全般的な印象と特記すべきプレー

S広島Rも工夫が見られて、WEリーグのレベル的には面白い方になるのだが、
この試合の千葉Lと比べると見劣りする。

やっていることは3つで、①普通に走り込む基本形、②G前密集陣形、③ショートコーナー。

②は、主にゴール前の密集かニアポスト辺りを狙っているようで、普通の高さ勝負。
③ショートコーナーにはあまり見る所がなく、普通に蹴った方が良いと思う。


この日のプレーで目を引かれたのは、

①の普通に走り込む基本形で、実は見所は千葉Lの守備だった。

S広島Rの体制は、先発で言うと、5市瀬選手13高橋選手14松本選手と、2近賀選手3呉屋選手の2組に分かれて走り出している。

3人の方は、特にはピックプレ-は行っていない。
密集することで守備側の混乱を期待している。

オリジナルのなでしこトレインに近い狙い。

一方、2人の方は、ピックプレ-を使っているようだが、マークの6蓮輪選手19上野選手が徹底してマークチェンジで対抗し、対応出来ていた。
マークチェンジすると、3呉屋選手19上野選手が付くことになって、ミスマッチとなるのだが、そこからの19上野選手の地上戦が非常に厳しい。

2本目 (9:13 ポインタ18:51)がその例。19上野選手がクリアしたプレー。



動画:キック5秒前から始まります。
https://www.youtube.com/watch?v=piETgi0HscMfeature=youtu.be&t=1126

このプレーではピックプレ-はやっていない。
キック前に動いている間に、19上野選手のニア側に3呉屋選手が来る形になった。
すると6蓮輪選手19上野選手がマーク交換、原則「チェンジ」で守っていたことが推測できる。

でも、3呉屋選手に対し、19上野選手では身長10cmのミスマッチ。
だが、19上野選手が地上戦で対抗できると言う自信と、信頼感で可能にしている。
実際3呉屋選手にピタリと付いて、ボールに先着している。
重心低く密着しているのが素晴らしい。

特に安直に背負わなず、半身で付いているのは、上級テクニックだと思う。

なお、この後5本目 (18:12 ポインタ27:51)では、2近賀選手6蓮輪選手をブロックしているが、同じようにスムーズなマークチェンジが行われている。




以上です。



*********


ブログ内関連記事

 

目次 1.概要(アメブロ版)

 

2-3 局面的な技術:パターン① ラッシュ&ピックB 2015/11/29

2-6 局面的な技術:パターン④ ループ 2015/12/18

 

4-280 WEリーグ S広島R 2-0 千葉L 2021/05/27
4-317 WEリーグ S広島R 0-0 千葉L 2021/11/23
4-375 WEリーグカップ S広島R 1-1 千葉L 2022/10/02
4-381 WEリーグ 千葉L37分(vsS広島R) 2022/10/27

 



*********


関連記事など、外部リンク

WEリーグ_Youtube
ジェフユナイテッド市原・千葉レディース vs サンフレッチェ広島レジーナ【2023-24 WEリーグカップ グループステージ 第5節 グループA】
https://www.youtube.com/watch?v=piETgi0HscM

【公式】ハイライト:ジェフユナイテッド市原・千葉レディース vs サンフレッチェ広島レジーナ【WEリーグカップ GS 第5節 2023.9.30】
https://youtu.be/IUPMM5P2Gk0


千葉L_HP
2023-24 WEリーグカップ 第5節  9.30 SAT 13:00 KICKOFF HOME ゼットエーオリプリスタジアム
https://jefunited.co.jp/matches/stats/589

S広島R_HP
9.30 土 13:00 WEリーグカップ グループステージ 第5節 vs. ジェフユナイテッド市原・千葉レディース AWAYゼットエーオリプリスタジアム
https://www.sanfrecce.co.jp/regina/matches/20230930/report