東京五輪が終わり、約1ヶ月経過しましたが、総括します。
ここまでコーナーキックについて、女子の10試合をブログ化してきましたが、
その他の試合も、全コーナーキックを見て、データーを採り、まとめました。
また、この大会でコーナーから生まれた11得点を独断と偏見で評価、ランキングを付けしています。
(1)今大会のトピックス
コーナーキックの守備にゾーンディフェンスを採用するチームが増えた。
ランキング上位国の6チームが採用。
相手関係によること無く、全試合でゾーンディフェンスを敷いたのが興味深い大会だった。
過去、欧米豪など身長のあるチームが、なでしこJAPANなど小柄なチームに対して使う守備システムというイメージだったが、状況が変わった。
今後女子サッカーの世界のトレンドになるのかも知れない。
(2)今大会のデータ
過去のW杯や2020なでしこリーグに比べて、沢山決まっています。
また、準々決勝で4本・3位決定戦で1本決まっていて、大事な試合で貴重な得点が生まれているのが特徴的な大会でした。
A.全般
まずは、全数から。
試合数 コーナーキック
ゴール/本数
2020+1東京五輪 26 11/262(4.2%)
2019フランスW杯 52 15/478(3.1%)
2015カナダW杯 52 19/503(3.8%)
2020なでしこリーグ 90 22/721(3.1%)
B.ゾーンディフェンスの使用状況
見ての通りです。ランキング上位国が軒並みゾーンディフェンスを採用しています。
*平均身長:フィールドプレーヤー10人の平均。
C.各国代表チームのコーナーキックの攻守成績
下に4枚のデータを示します。
あくまで、五輪の短期間のデータなので、傾向くらいを理解するためのものです。
なお、ゾーンディフェンスでは、コボレ対応する選手として、PKアーク付近に配置されているのは、0または1人だったので、2次・3次・・・攻撃を受けているかと思って、
シュート数を2通りでカウントしてみました。
①1次攻撃
相手に触られたり、ゴール枠に当たるまでのシュート本数。
②トータル
コーナーキックからの攻撃に、一区切り付くまでに打ったシュート本数。
「一区切り」とは、以下のようなこと。
・プレイが止まる(キーパーキャッチ、アウトオブバウンズetc)、
・クリアーなどによってボールが戻って、攻撃側のバックス陣が帰陣する。
・守備側がボールを保持、ビルドアップ、逆速攻などをする。
最大の特徴は、「得点を取ったのは、ゾーンディフェンスを敷いたランキング上位国のみ」という偏った結果となっていることだと思います。
*G前密集陣形
ゴールエリア内に4人以上の攻撃選手を配置する戦法、と定義しています。
D.データや映像を見て言えること、感じたこと。
a)ゾーンディフェンスの守備
ア)各国代表の守備システム
今大会ゾーンディフェンスを使った6チームの、システムの例を並べる。
ニアを警戒している度合いが違うのは、上図の配置を見ての通りですが、
3列目(ゴールエリアの少し外側)の選手の動きは各チームそれぞれであった。
3列目に配置する選手の身長や、相手との高さ関係にもよるが、だいたい以下のパターンの動きであった。
①ほぼマンマークをする。拾う選手・捨てる選手を決めて対応している。
オーストラリア代表
②担当エリア内に入ってきた選手の走路に入って、タイミングをずらしたら、2列目の選手に引き継ぐ。
オランダ代表、イギリス代表
③極めて注意すべき選手のみマンマーク。①と②の折衷タイプ。
スウェーデン代表・アメリカ代表
④3列目の選手も、ボール中心に守備する。
ブラジル代表
イ)守備システムとコボレへの対応
システム的には、オランダ代表やイギリス代表が、最もこぼれてきたボールを拾ったり、プレッシャーを掛けられたりして、2次・3次攻撃を受る数が少ない。
・・・・ハズだったのですが、データには、さしたる差は出ていない。
データの母数が足りないだけなのか、評価の方法として適当で無かったのか、今のところ不明です。
世界の動きがゾーンディフェンスへと流れるようだったら、放置しておく訳にはいかないので、今後も試行錯誤しながらデータを取って行こうと思います。
b)対ゾーンディフェンス戦略
ア)ゾーンディフェンスを採用したチームには準備があった。
今大会で、ゾーンディフェンスを採用した6チームは、つい最近までマンツーマンも使っていたので、比較検討を色々やったはず。
当然、ゾーンディフェンスを敷いた際に、やられたら困る戦法を意識していたはず。
それが、すなわち、各国のゾーンディフェンス攻略戦術になる場合もあるわけで、それぞれ作戦を用意していた。
一方、マンツーマンディフェンスを採用した6チームは、これと言った戦術を用意していなくて、
なでしこJAPANのように、ショートコーナーで、「相手の混乱を待つ」くらいしか手立てを持っていなかった。
だが、そのショートコーナーも、ゾーンディフェンスを敷いているのは、実力上位国。
簡単に乱れてくれるはずも無く、可能性を感じられないものだった。
イ)各国の対ゾーンディフェンス戦略
ゾーンディフェンスを採用した6ヶ国の攻撃策を、ざっくり分けると、以下のようになると思う。
①高さで勝負するA :オランダ代表
主に正面~ファーで、攻撃側:ランニングジャンプ、守備側:スタンディングジャンプの構図にする。
②高さで勝負するB :スウェーデン代表
守備側選手のニア側を取って、ボールコースに対して優位な位置取りをする。
G前密集陣形からスタンディングジャンプ合戦を挑む。
③数的有利を作るA :ブラジル代表・オーストラリア代表
狙いのエリアに、より多数の選手を集める。
補助として守備選手をブロックして、そのエリアに近づけさせない。
(バスケで言うところのスクリーンプレー。)
④数的有利を作るB :アメリカ代表
時々だが、大外(ファーポストのさらに外側)からのシュート・折り返しをねらう。
⑤数的優位を作るC。:イギリス代表
ゴールライン付近に攻撃選手を集め、キックと同時にゾーンディフェンスの外側へ出て、ヘディングシュートを狙う。
少しでもゴールに近いところから狙うための、工夫が感じられる。
ウ)G前密集陣形の評価と使い方
対ゾーンディフェンス戦略として、各国評価しているようで、イギリス代表・スウェーデン代表・中国代表は、特に多く使っている。
なお、スウェーデン代表、中国代表は、マンツーマンディフェンスに対しても使っていて、この戦略自体を評価しているようだった。
(3)勝手にゴールランキング
企画性の高さ・技術などを、私の独断と偏見で評価、ランキングを付けました。
NHKの動画は、再生開始時間を指定できないため、お手数ですが、動画画面下のポインタを使ってジャンプ下さい。
1位
オーストラリア代表(07月21日 Group G 対ニュージーランド代表 32分50秒 ポインタ:43:17)
NHK_HP https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/content/b95bfc6a-852d-47bc-8ce5-2da57e859f28/
得点者:2カー選手 キッカー:7キャトリー選手
効きは甘かったがピックプレーからニアヘ走った2カー選手がヘディング1発。
メインターゲットに、ドンピシャで合わせたキックも素晴らしい。
2位
スウェーデン代表(07月21日 Group G 対アメリカ代表 53分46秒 ポインタ:1:22:22)
NHK_HP https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/content/99b3ead1-016f-4331-9290-bee8224a55b3/
得点者:11ブラクステニウス選手 キッカー:2アンデション選手
ニアポスト前で8アーツ選手を17セーゲル選手をブロックしていて、
その前で13イレステト選手がヘディングシュート。
ポストに当たって、11ブラクステニウス選手が押し込む。
1発目で決まっていれば、これが1位。
3位
アメリカ代表(07月24日 Group G 対ニュージーランド代表 43分58秒 ポインタ54:34)
NHK_HP https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/content/fa2d7ee1-f680-4b37-970e-bea990542b32/
得点者:9ホラン選手 キッカー:15ラピノー選手
ファーサイドで8アーツ選手が折り返し、9ホラン選手がヘディングで決める。メインターゲットのアーツ選手は主にニアへ走るが、このプレーではファーへ。
(おそらく)サイン通りにきっちり合わせた15ラピノー選手も素晴らしい。
以下はランキング外
①スウェーデン代表(07月24日 Group G 対オーストラリア代表 80分51秒 ポインタ:1:48:49)
NHK_HP https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/content/72ae3222-7d16-4c8b-954b-cb9d619cde19/
得点者:11ブラクステニウス選手 キッカー:9アスラニ選手
2次攻撃で再び9アスラニ選手がクロス。11ブラクステニウス選手がヘディングで合わせてゴール!
②スウェーデン代表(07月27日 Group G 対ニュージーランド代表 16分0秒 ポインタ:26:42)
NHK_HP https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/content/cd0f34c5-065f-4a83-9d77-69db5fdcc6c9/
得点者:19アンベゴールト選手 キッカー:15スクーグ選手
3人ストーンで、GK脇の19アンベゴールト選手にマークを付けない守備方針だったが、そこでヘディングシュートを浴びてゴール。
③オランダ代表(07月27日 Group F 対中国代表 75分51秒 ポインタ:1:44:15)
NHK_HP https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/content/683365ac-9e9e-4f71-9ab1-a06bd5d50cb6/
得点者:9ミーデマ選手 キッカー:19ヤンセン選手
9ミーデマ選手が10王姸雯のマークを躱して正面でボレーシュート。
④オーストラリア代表(07月30日 準々決勝 対イギリス代表 34分27秒 ポインタ:44:47)
NHK_HP https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/content/88ddb988-7c01-4fba-9aa9-fb83fa7b7caa/
得点者:14ケネディー選手 キッカー:7キャトリー選手
14ケネディー選手がヘディング1発。2ブロンズ選手を一旦押し込んでからバックステップし、セパレートしたのが上手かった。
⑤イギリス代表(07月30日 準々決勝 対オーストラリア代表 114分19秒 ポインタ:2:34:23)
NHK_HP https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/content/88ddb988-7c01-4fba-9aa9-fb83fa7b7caa/
得点者:9ホワイト選手 キッカー:11ウィア選手
2次攻撃で、10カービー選手の上げたクロスを9ホワイト選手がニアから流し込んでゴール。
⑥スウェーデン代表(07月30日 準々決勝 対なでしこJAPAN 6分16秒 ポインタ:16:42)
NHK_HP https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/content/2b4e3bc5-b0dc-4a82-8b76-93e9458d4d19/
得点者:6エリクソン選手 キッカー:9アスラニ選手
2次攻撃で、18ロルフォ選手が上げたクロスを、6エリクソン選手が正面で合わせてゴール
⑦アメリカ代表(07月30日 準々決勝 対オランダ代表 30分15秒 ポインタ:40:18)
NHK_HP https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/content/5c0fcd26-5fcd-449d-abac-48b692068b6d/
得点者:21ウイリアムズ選手 キッカー:7ヒース選手
ヘディングで3回浮いたボールが21ウイリアムズ選手の横に溢れて、シュート、ゴール。
⑧アメリカ代表(08月05日 3位決定戦 対オーストラリア代表 7分33秒 ポインタ:17:46)
NHK_HP https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/content/12a70984-85cb-4dde-a9b2-1e9f013b3807/
得点者:15ラピノー選手 キッカー:15ラピノー選手
15ラピノー選手のCKが、巻いて直接ゴール!
以上です。
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関連記事など、外部リンク
東京五輪_HP
https://olympics.com/tokyo-2020/olympic-games/ja/results/football/olympic-schedule-and-results.htm
NHK動画
https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/list/sport/football/