なでしこJAPANが準々決勝で負けた後、
女子バスケット日本代表の活躍に気を取られておりました。
そのため間隔が空きましたが、女子サッカーに戻ります。
WEリーグが始まるまでの間、この東京五輪の試合を振り返りつつ、
コーナーキックの全体の傾向を把握していこうと思います。
まず、8月2日の試合で、@カシマスタジアム
NHK動画
https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/content/fa28c7e2-5552-4401-8ae9-6d7c26136424/
決勝戦のTV放送が試合時間変更で無くなったので、この試合が最高位の放送になった。
チャンピオンチーム・アメリカ代表はGroup Gの初戦にスウェーデン代表に負けたが、
ニュージーランド代表に大勝、オーストラリア代表とは引き分けで、2位通過。
準々決勝では、2019フランスW杯決勝の相手:オランダ代表をPK戦で下しての準決勝。
ちょっと、44戦負け無しだったチームらしくない戦いをしている。
一方カナダ代表は、Group E 初戦になでしこJAPANと引き分け、
チリ代表戦に辛勝、イギリス代表と引き分けで、同じく2位通過。
準々決勝はスコアレスのままPK戦でブラジル代表を下している。
こちらも楽では無い4試合だった。
配置は以下のようで、先発3試合目以上の選手が大多数で、ベストメンバーと言える。
この2チームは隣国で対戦も多く、2016リオ五輪以降6回対戦していて、
アメリカ代表の5勝1分け(総得点:10-2)。
試合は、大方の予想どおり、アメリカ代表が攻め、カナダ代表が耐える展開。
前半はカナダ代表が押し込まれながらも、決定機を与え無かったが、
後半になって、寄せが甘くなる。
相当危なかったが、キーパーのファインセーブやバーにも助けられ、
6ローズ選手が諦めること無く追っかけたことで、PKを得て勝利。
シュートの状況は下図を参照ください。
負けたアメリカ代表ではあったが、実力的にはだいぶ格上。
だが、上手いんだけれど、高年齢化でアタッカー陣の破壊力は、確実に落ちている。
先発の13モーガン選手(1989.07.02生)・7ヒース選手(1988.05.29生)が、ドリブルで突破して、シュートするシーンはこの試合では無かった。
交代で入ったアタッカー陣も、10ロイド選手(1982.07.16生)、11プレス選手(1988.12.29生)、15ラピノー選手(1985.07.05生)。
同じ選手で長くやれていることは、素晴らしいのだが、これだけ世代交代が遅れていると、2023年のW杯や、2024年の五輪どうするの?と疑問に思う。
また、PKを与えてしまった12デイビッドソン選手が、先発で最も若い選手だったのも皮肉にも思える
勝ったカナダ代表ではあるが、PK以外ではゴールに迫れず苦しい戦いだった。
だが、PKを獲った6ローズ選手や15プリンス選手のように、スピード豊かな選手がいると、一つ間違いがあれば・・・と言う期待感はあった。
そこが、なでしこJAPANとはちょっと違う点。
守備では、怠ること無くしっかりマークをしていたことが、勝因だろう。
8アーツ選手や10ロイド選手に際どいヘディングシュートをもらったが、ちゃんと競れていた。
もっとも、アメリカ代表のアタッカー陣の突破がなく、マークをずらして対応する必要が無かったのが幸いしている。
この試合結果を受けて、11:00~だった決勝戦の試合時間が変更。
アメリカのTV放送的に、ライブでの視聴者を稼ぐための時間設定だった。
今回、陸上競技にスター不在で、多くの種目の決勝が日没後だった。
五輪の花:100mだって米国時間の早朝(プロジェクトマッピングが綺麗でした)。
それを考えるとサッカー女子代表への期待度は、相当高かったのだろう。
今回はアメリカでは、低視聴率だったとの報道だが、女子サッカー敗退も一役買ってしまった。
では、いつものようにコーナーキックを見ていく。
(1)両チームのディフェンスシステム
アメリカ代表はゾーンディフェンス。
いつものパターンで第3列が、相手の背の高い選手を捕まえて、走り込んでのヘディングを抑えている。
カナダ代表はマンツーマン中心のゾーン固定配置3人。
ちなみに、先発選手を身長順に並べると以下のよう。
アメリカ代表 カナダ代表
12 デイビッドソン 177 5 クイン 177
9 ホラン 175 12 シンクレア 176
21 ウィリアムズ 173 16 ベッキー 173
8 アーツ 170 3 ブキャナン 170
13 モーガン 170 14 ギレス 170
4 サワーブラン 170 10 ローレンス 164
5 オハラ 165 17 フレミング 164
7 ヒース 162 15 プリンス 163
16 ラベル 162 2 チャップマン 160
19 ダン 157 11 スコット 156
GK
1 ネイハー 175 1 ラベー 178
対等の高さ関係。
(2)統計
例によって、私が採っているSTATSを紹介します。
アメリカ代表 カナダ代表
コーナー本数 12 5
得点(1次攻撃) 0 0
センタリング→シュート 0/3 1/0
センタリング→パス 0/1 0/1
ルーズボール 0 1
クリアー 4/3 1/0
キーパーパンチ 1/0 0
キーパーキャッチ 0 0
* フリー/競り合い
オフェンスファール 0 0
ディフェンスファール 0 0
キックミス 0 1
ショートコーナー不発 0 0
時間つぶし 0 0
直接ゴール 0 0
オウンゴール 0 0
フリーになった選手 1/0 1/0
(ボール受け/ボール来ず)
ピックプレー:推定含む 3/0 0
(成功/失敗)
(3)コーナーキックの内容と特記すべきプレー
A.アメリカ代表のコーナーキック
a)体制
キッカーは12デイビッドソン選手(左利き)、15ラピノー選手(右利き)。
受け手は以下の体制で始まっている。
過去見てきたアメリカ代表と比較すると、走り込む選手たちの位置関係を、色々変えてきている。
・ニアへ:9ホラン選手・16ラベル選手
・正面からファー:7ヒース選手・8アーツ選手
・GK脇: 13モーガン選手
・ニアポルト前:21ウイリアムズ選手
・ショートコーナー: 5オハラ選手
・コボレ狙い:2ダン選手
・セーフティー:4サワーブラン選手
b)結果概要
1本目 (05:16 ポインタ 06:16) 右CK12デイビッドソン選手→14ギレス選手ヘディング→11スコット選手
⇒4サワーブラン選手回収・モドシ→GKネイハー選手。再組み立て。
2本目 (8:10 ポインタ18:25) 左CK 12デイビッドソン選手→14ギレス選手ヘディング
⇒16ラベル選手ボレーシュート・2チャップマン選手ブロック・10ローレンス選手→16ラベル選手→14ギレス選手ヘディング
⇒5オハラ選手回収・クロス→8アーツ選手ヘディングシュート。右へ外れてGキック。
3本目 (39:14 ポインタ49:29) 左CK 12デイビッドソン選手→14ギレス選手ヘディングクリア
⇒4サワーブラン選手回収→5オハラ選手クロズ→13モーガン選手ヘディングシュート。左へ外してGキック。
4本目 (49:52 ポインタ1:00:07) 右CK 12デイビッドソン選手→8アーツ選手シュート・12シンクレア選手ブロック→5クイン選手ヘディング→17フレミング選手クリア
⇒GKフランチ選手回収・再組み立て。
5本目 (55:54 ポインタ1:27:51) 左CK 12デイビッドソン選手→GKラベー選手キャッチ。
6本目 (56:59 ポインタ1:28:56) 左CK 12デイビッドソン選手→14ギレス選手ヘディングクリア
⇒12デイビッドソン選手回収→2ダン選手クロス・5クイン選手カット。再CK。
7本目 (57:36 ポインタ1:29:33) 左CK 12デイビッドソン選手→9ホラン選手ヘディングシュート。右へ逸れてGキック。
8本目 (65:5 ポインタ1:37:2) 左CK 15ラピノー選手→17フレミング選手ヘディングクリア
⇒4サワーブラン選手回収→15ラピノー選手→16ラベル選手→12デイビッドソン選手→4サワーブラン選手。再組み立て。
9本目 (67:48 ポインタ1:39:45) 右CK 15ラピノー選手→8アーツ選手ヘディングシュート→GKラベー選手パンチング。再CK。
10本目 (68:13 ポインタ1:40:10) 右CK 15ラピノー選手→8アーツ選手ヘディング→12デイビッドソン選手ヘディング→9ホラン選手ヘディングシュート→GKラベー選手キャッチ。
11本目 (81:7 ポインタ1:53:4) 左CK 15ラピノー選手→12シンクレア選手ヘディングクリア→
⇒12デイビッドソン選手・10ローレンス選手カット・ドリブル・クリア・12デイビッドソン選手ブロック。スローイン。
12本目 (92:58+ ポインタ2:4:55) 右CK 15ラピノー選手→14ギレス選手ヘディングクリア
⇒4サワーブラン選手回収→2ダン選手→4サワーブラン選手クロス→16ラベル選手→GKラベー選手キャッチ。
c)全般的な印象と特記すべきプレー
ア)狙い所:ニア
以前からの傾向のまま変わらない。
メインターゲットは、8アーツ選手で、ニアでのヘディングを狙っている。
下図は、その代表的なプレーと言えるだろう。
イ)アメリカ代表のピックプレーが減った。
私が確認できたピックプレーは、12プレーで3回。
先発に7ヒース選手・8アーツ選手・13モーガン選手が揃っているので、
マンツーマンディフェンス相手に、毎プレーでもピックプレーを仕掛けて来るモノと予想していたが、外れた。
13モーガン選手が産休・育休だったので、その間に別の考え方になったのだろうか?
①13モーガン選手がGK脇の場所取り役になっていて、走り込んでいない。
②7ヒース選手がブロッカーとして暗躍しないのは、見ていて寂しい。
積極的では無いとは言え、中堅の9ホラン選手がピックプレーを使っていて、ピックプレーの文化自体は途絶える心配が無さそうであるのだが、
この試合のピックプレー自体は効果的でも、その後の動きに効率性を欠いて、ディフェンスに追い付かれるなどしている。
また、途中出場の10ロイド選手もGK脇での場所取り役で、ヘディングで競ってはいない。
10ロイド選手って、私が最もランニングジャンプで「点」で捉える能力が高いと思っている選手なので、この配置も疑問を感じている。
B.カナダ代表のコーナーキック
a)体制
キッカーは、16ベッキー選手(右利き)。
受け手は以下の体制で始まっている。
最初2本はゴール前に4人をボックス型に配置したが、その後はゴールエリア内に立たせる人数を変えている。
・ニアへ: -
・正面からファー: 14ギレス選手
・ニアポスト前:5クイン選手・12シンクレア選手
・GK脇:-
・ファーポスト前:15プリンス選手・3ブキャナン選手
・ショートコーナー: 17フレミング選手
・コボレ狙い: 10ローレンス選手・11スコット選手
・セーフティー: 2チャップマン選手
b)結果概要
1本目 (16:27 ポインタ26:42) 右CK 16ベッキー選手→13モーガン選手ヘディングクリア
⇒10ローレンス選手回収・シュート・21ウイリアムズ選手ブロック。再CK。
2本目 (17:1 ポインタ27:16) 右CK 16ベッキー選手→抜けて、スローイン。
3本目 (18:54 ポインタ29:9) 右CK 16ベッキー選手→3ブキャナン選手ヘディング折り返し→21ウイリアムズ選手クリア
⇒11スコット選手回収ヘディング→12デイビッドソン選手ヘディング→2ダン選手ヘディングクリア
⇒2チャップマン選手回収・組み立て直し。
4本目 (32:31 ポインタ42:46) 右CK 16ベッキー選手→15プリンス選手ヘディングシュート。左へ外れ、Gキック。
5本目 (37:14 ポインタ47:29) 右 CK 16ベッキー選手ミスキック。Gラインを割ってGキック。
c)全般的な印象と特記すべきプレー
カナダ代表の受け手の選手は、走り込まずに、ほぼスタンディングジャンプで攻めていた。
基本は正面~ファーサイド狙いで、ゴールから比較的遠い位置を狙っている。
ゾーンディフェンスの外周を狙っているので、人数を掛ければヘディング出来る可能性は高いだろうと思う。
が、その折り返しや、ゴール前で零れたボールに詰める人数がそもそも1or2人になっているし、その選手たちの動きが連動しているとは言い難かった。
なでしこJAPANだけではなく、カナダ代表もゾーンを上手く攻めてはいないと思う。
以上です。
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目次 1.概要(アメブロ版)
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東京五輪_HP
結果 - 女子準決勝
https://olympics.com/tokyo-2020/olympic-games/ja/results/football/results-women-sfnl-000200-.htm
NHK動画
https://sports.nhk.or.jp/olympic/highlights/content/fa28c7e2-5552-4401-8ae9-6d7c26136424/
アメリカ代表_HP(英語)
U.S. WOMEN’S NATIONAL TEAM FALLS 1-0 TO CANADA IN OLYMPIC SEMIFINALS
https://www.ussoccer.com/stories/2021/07/2020-tokyo-olympics-semifinal-uswnt-0-vs-canada-1-match-report-stats-and-bracket
カナダ代表_HP(英語)
MATCH REPORT
https://www.canadasoccer.com/national-teams/matches/national-team-match-past/?matchId=3176